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STM2018-19 ⑦エピソード集B
<<①予告
<<②twitter速報
<<③お礼と結果報告
<<④結果概要
<<⑤装備・食糧編
⑧エピソード集C>>
いきなりこの記事と出会ってしまった方は、『なんじゃぁあコリャァァ』となる記事ですので、前記事(エピソード集A)の【まえがき】から読んで頂けると幸いです(笑)
【それが真実かどうかなんて誰にも分からない】
奇抜な事を書こうとは思っていない。もちろん嘘を書くつもりもない。でもそれは真実か?って尋ねられたら自信を持って答えられない。でも体験したことには違いない。そんな出来事を自分の書ける範囲で書いてみようと思う。それは紀泉アルプスでのことだ。STMでは最後の最後。山中渓からみさき公園までの約20キロの完全トレイル。道は整備されていて、調子が良ければ3時間ほどで駆け抜けれるほど走りやすい。
率直に言うと、たくさんの精霊がそこら中にいた。精霊と言っても絵本に出てくるようなファンタジックなものではない。ん?ちょっと待てよ。精霊じゃないな。人かも。正直、なにが精霊でなにが人かなんてよく分からない。ただ、間違いなく人だと確信があるのは3組。雲山峰で出会ったトレイルランナー、大福山にいた2人組のハイカー、そして飯盛山で会ったハイカー(彼については写真が残っているので間違いないだろう)。
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380km地点 山中渓にて ここに辿り着くまでにも色々と話がある |
どうして登山道ではなく、
道から外れたところに人がいるんだろう
最初は不思議で仕方なかった。ピクニックをしているカップルや、楽しそうに話をしているグループ。大きなラジカセを囲むようにしてワイワイ騒いでいるグループもいた。皆がメインの道から外れたところにいる。きのこか何か山菜でもとっていたんだろうか。突然脇から人が出てきて驚いた。でも、彼らのそばを通り過ぎると気配が消え、後ろを振り返ると誰もいない。
こんなこともあった。彼らがたくさんいる中で派手に転んでしまった。「笑えよ」…反応がない。「笑ってくれよ」「頼むから笑ってくれよ!!」転んだ状態のまま数分が過ぎた。多分そのまま居眠りをしていたと思う。立ち上がって辺りを見回しても誰もいない。そしてどっちに進むべきか方角が分からなくなった。
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雲山峰にて |
痛ぇぇ〜
雲山峰からの下りのことだ。右太ももに激痛が走って全く走れなくなった。この頃には睡魔も完全に吹き飛び、雲山峰で出会ったトレイルランナー(先述した通り彼は実在してる...はず?!)に追いつかんばかりの勢いで走り出そうとした矢先の出来事だった。
どうにかして痛みが出ないよう試行錯誤してみるが、どんな走り方をしても痛みが出る。ここから歩き倒したら途方もなく時間がかかるなぁなんて思っている時だった。ふとこんな記憶が蘇ってきた。
ハイカーに声をかけられ足の調子を心配される記憶
でも、何かが変だ。この記憶に確信がない。すると突然、恐怖にも似た不安感が襲ってきた。今思うと、過去の記憶に確信が持てないほど怖いものはないかもしれない。そんなことがほんとに数分前にあったのか?確信がない。びっこを引きながら後ろを振り返る。誰も来ない。もしそのハイカーに追いつかれたらこの記憶は真実だと証明できる。何度も後ろを振り返った。その時の自分の気持ちをうまく表現できない。何かから逃げるように必死で下っていった。
次は、大福山への登りでのこと。
「もう最後や!どうにでもなりやがれ!!」最後の灯火とも言えるほどのエネルギーが奥底から湧き上がり、先ほどの足の痛みを必死で堪えながら、自分で言うのもなんだが物凄いスピードで山を走っていた(このトランス状態は飯盛山手前まで続いた)。
あれ?あっちに人がたくさんいる??
登山道から外れた木の生い茂る場所に、卒業旅行なのか中高生のグループ何組かが入っていく。あ、間違えた!あっちか!!自分も登山道から離れ、彼らに続くように木々を掻き分けて中に入っていくも一向に道が現れない。やられた!幻覚か!!睡魔もなく、身体はしっかりと動き、こんなにも意識がハッキリしている状況下でさえも、彼らに惑わされたことがにわかに信じられなかった。
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飯盛山にて 彼は確実に存在している でもそれは重要なことじゃない |
最後は、飯森山からの下りでのこと。
ほんとに最後の最後の区間。トランス状態も終わり、足の痛みを抱えながらゴールを目指し懸命に下っていた時だ。横を見るとたくさんの人がそこら中で山歩きをしている。遠くの方でも近くでも。ものすごく軽装な家族連れもいる。下にコテージでもあって散歩しているのだろうか。木の幹に顔が何個も浮かび上がっている。よく見ると太陽の光がその顔のような部分にだけ当たっている。あ!おばあさん!こんなとこで寝転んでたら危ないですよ!声をかけたら大きな木の根っこだった。飯盛山がもうすぐというところでは大勢の方が声援を送ってくれる声だけが聞こえてきた。もうすぐ!もうすぐ!
何が人で何が幻覚なのか。それは実在しているのか実在していないのか。いやいや、もう考えるのはやめよう。もうそれが真実かどうかなんてどうでもいい。睡眠不足による極度の疲労が産み出した単なる幻覚なのか。いやいや、もしかしたら普段は見えないものが見えたのか。そんなことはもうどっちでもいい。
それが真実かどうかなんて誰にも分からないのだ。
【新発見】
幻聴について。これまでにも幻聴の経験はある。山の上から人のような声がしたり、人がいるはずのない深夜の山道で、あたかもそこにいるかのような声が聞こえてきたり。今回も幾度となくこういった幻聴は経験することになった。しかし、今回新たにちょっと風変わりな幻聴を経験したのでそれについて紹介してみたい。それが顕著に現れたのは和泉葛城山からハイランドパーク、犬鳴山温泉へと向かう道中だ。この時、詳細は省くが、鍋谷峠から和泉葛城山へのトレイルで幻覚に惑わされたり、方向感覚がおかしくなったりと、疲労がかなり蓄積された状態であったことを明記しておく。
ゆっくりとジョグしていると雪が激しく降ってきたのでレインウエアのフードをかぶった。しばらくするとそのフードがシャカシャカと擦れる音に合わせてこんな声が響いてきた。
カキピー カキピー
カキピー カキピー
女性のような声だが、誰か心当たりがあるわけでもなく少し機械音のようにも聞こえる。
カキピー カキピー
カキピー カキピー
最初は気にもしなかったがその音量はどんどん大きくなり、無視できないほどまでの大合唱(複数人に増えた)になり始めた。よく聞いてみると、それは声だけでなくオーケストラのようなバックミュージック(それが何の楽器なのか検討もつかない)も流れている。
カキピー カキピー
カキピー カキピー
なんとかせねば。このままでは本当に頭がおかしくなりそうだ。
柿ピー?!
それにしてもなんだ。柿ピーって。食べたいとも思ってないし、自前のトレイルミックスにも柿ピーはいれていない。もう一度よく聞いてみる。
カキピー カキピー
カキピー カキピー
確かにハッキリと柿ピーと言っている。周囲の音をかき消すほどの音量だ。これはヤバい。フードをとってみると不思議と音は消えた。しかし雪はやみそうにないし、ここで濡れては今後に関わってくる。フードをかぶるとシャカシャカという音に合わせてまた大合唱が鳴り響き始めた。
試しに幻聴に負けじと「おもちー!おもちー!おもちー!おもちー!」と声に出してみた。すると...
おもちー おもちー
おもちー おもちー
と幻聴もセリフを変えた。なに?!セリフは変わったが音量は一向に変わらない。ではこれはどうだ。次は声に出さずに、頭の中で(ちんちんちん ちんちんちん ちんちんちんッタラ ちんちんちん)と言ってみる。すると...
おもちんちんちん ちんちんちん
ちんちんちんッタラ ちんちんちん
変わった!その後も色んな言葉やリズムで遊んでみたが、それらは全てコントロールすることができた。しかし、音量の調節や音そのものを停止させる方法は見つけられなかった。雪が止んだのでフードをとると奇妙な大合唱は消え、いつの間にかそんな出来事も頭の中から消えていった。
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345km地点 ハイランドパーク粉河 |
【犬の怪】
お次は初日のツェルト泊での出来事だ。寝床に選んだのは萩谷公園。ここまで須磨浦公園からおよそ90キロ。21時間近くかけて無理のないペースで来たせいか極度の疲労は感じていない。標高がある程度あるため、寒さはなかなかのものだった。落ち着いてツェルトを張り、お湯を沸かして温かいご飯をゆっくりと食べる。ムシャムシャ![]() |
ツェルト内で自撮り |
この先の旅をうまく進めるためには初日からしっかり眠れるかが重要になってくる。そういう意味では少し緊張していたのかもしれない。ありったけの服を着込んで寝袋にくるまる。疲れているはずなのになかなか眠れない。寒さよりも緊張感が脳を休ませてくれない。
1時間くらいした頃だろうか。ようやく微睡みの中に落ちそうな時にそれは起こった。
......
......
ガバッ!!!!!!!!!
つづく
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コメント
幻聴は僕もあって、屯鶴峯から槙尾山のダイトレ
フルアタックしてる時、最後槙尾山で日が暮れて施福寺
まであと数キロあたりから定期的に女性の声でおーい
って聞こえる。怖すぎて、振り向けず体力的に限界だったけどお地蔵さんに手を合わせつつ何とか走りきったという。