長崎橘湾岸スーパーマラニック秋H部門〈320K〉2019 ③レースレポその1

長崎橘湾岸スーパーマラニック秋H部門〈320K〉2019 ③レースレポ1


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【まえがき】

本題に入る前に少しばかりお付き合い下さいませ。

ご存知の通りDNF(途中リタイア)となってしまった今年の橘湾。320Kもの距離(ロード)を一気に駆け抜けるというのは自身初のことです。しかも何度もアップダウンを繰り返す橘湾岸のコースでその途方も無い距離を走れるなんて夢のよう。

完走はもちろん、狙えるならば試走会でKIZENさんが出した記録(40時間30分くらい)を更新するつもりで挑みました。と言っても数字や記録は一つの指標にしか過ぎません。日常生活ではまずあり得ない距離を全力で走った時に自分の身体は一体どうなるのか、そして次の世界を見てみたい、そうすれば自然と結果はついてくると思っていたのが正直な所です。

しかし終わってみれば

DNF...

自分でも何が起こったのか理解せぬまま途中で終わってしまったように思います。しかしいくらDNFと言っても、その一言で終わらせてしまうにはあまりにも長い旅であり、その旅路で得た"何か”が今後の自分が目指すものの糧になったことは間違いありません。

レースレポを通してその"何か"を見つけられれば幸いです。この経験を無駄にしないためにも。






【レースレポ】

▶︎▶︎スタート0km → 女神大橋エイド65.0km 



え?独りっすか??

時刻はまもなく夜9時になろうとしている。長崎出島の通りにひっそりと立てられたスタートゲートは特にライトアップもされていない。むしろ通行人の邪魔にならないよう道路の端の方に置かれているくらいだ。天候は良く、若干湿度を感じるものの気温は15℃前後と走るには絶好のコンディション。ひとりのスタートは寂しくなると思っていたが、主催者の銀さんをはじめ、ボラの方々や応援の方がスタートの瞬間を華やかなものにしてくれた。10分前から写真撮影会、5分前には銀さんの名物?MCが場を盛り上げてくれた。

そしてスタート!


距離時刻経過時間
出島0.011/01 21:000:00:00

ゆっくりと出島和蘭商館跡を一周し、街明かりの美しい長崎の街中を駆け抜けていく。まず目指すのは標高333mの稲佐山だ。さすがに何度も走っているので道は頭の中に入っている。徐々に勾配がきつくなり心拍数が上がり始めた頃だった。

ガサガサガサ...
ドドドドド

ぅわお!!

でかい。こんなデカい猪をこんな至近距離で見たのは初めてだ。というか、

俺は猪と並走している?!

山から飛び出して来た猪からしても同じ心境だっただろう。歩道から飛び出して車道を走る俺、歩道のガードレールに塞がれ逃げ場がなくなり歩道を走ることになった猪。二匹のアローン(独りもん)が一緒に稲佐山を登っていくという何とも不思議な体験をさせてもらった。※猪は家族持ちかもしれない。




距離時刻経過時間
稲佐山CP7.011/01 21:470:47:00

案の定、展望台にはたくさんの若者が寒空の下肩を寄せ合ってキラキラと光る夜景を眺めていた。そんな中ノースリーブ短パンヘッドライト野郎が独りで息を切らせながら駆け込んでくるもんだから意味が分からなかっただろう。もちろんそんなことは気にもかけず、キョロキョロと辺りを見回したかと思うと一目散にその場に駆け寄りパンチをあける。そして写真を数枚パチパチっと撮ったかと思うとすぐに来た道を駆け下りて行った。

稲佐山展望台


稲佐山を降りてからは住宅街(ここは間違えないよう頻繁にGPSで確認した)、電車通り(一直線でとても走りやすい)と黙々と走っていく。特筆すべきことはない単調な道だ。あぁそうそう。住宅街でも巨体の猪に出会ったなぁ。長崎に何度も来ているがこんなに遭遇したのは初めてだ。もしかしたら応援に来てくれていたのかもしれない(んなこたぁない)。


L部門とのコース分岐を過ぎると歩道も広くなり自然とペースが上がる。キロ5を切るくらいだろうか。鼻から息を吸い鼻から息を出す。足は一定のペースで回転し続ける。そこには意志も何もない。完全にオートパイロットモードだ。

おーい!!
さすが、いいペースで来てるなぁ!!

日並エイド(24.6k地点)があったであろう場所で坂本さんが待っていてくれた。当マラニックは走力に応じたレベル別スタートシステムになっている。H(ハイパー)部門は朝5:00から順々にスタートしていて一番遅い組でも13:00スタートだ。自分は21:00なので前半のエイドはほぼ撤収されている。そのため大会側にサポートを一人つけて頂いた(もちろん不公平にならないよう基本的にエイドのある地点でしかサポートを受けないことはお伝えした)。それが坂本さん。まさか小浜温泉(217k地点)までお世話になることになろうとは...

せっかく待って頂けたがまだ序盤で水分も全然あるので声援に応えただけで素通り(笑)何だか申し訳ない気持ちになった。子子川交差点を左折すると細かなアップダウンが始まる。しばらく行くと勾配がきつくなるが暗闇のせいか全く苦にならない。

この登りでも全く疲れ知らずや!
いくら調子が良くても何なんやこれは...

今年になってからレース前にきちんと取り組むようになったカーボローディング。自分は旧式のやり方を採用している。詳細は省くが、レース1週間ほど前から糖質を減らし、直前(2,3日前)から一気に糖質量を増やし身体の中にエネルギーを蓄える。これによってレース当日に爆発的なパフォーマンスを出すことができる。当初はレース直前期しかやっていなかったが、思わぬ結果に結びついたことを良いことに、徐々に日常的にカーボローディング紛いなことをするようになった。その心身への負担は想像以上に大きく、過度なカーボローディングが今回のレース結果にも現れてしまったのかもしれない。

真っ暗な峠道を一人駆け上がって行く


しかしこの時は調子も(すこぶる)良く、そんなことなどつゆも思わない。登りをスイスイっと駆け上がると林道を気持ちよく駆け下りて行く。猪の突進にいつでも対応できるよう身構えていたがここでは出現しなかった。




距離時刻経過時間
鳴見ダムCP32.911/02 0:113:11:00

車が入れなくてさ〜

遠くから坂本さんが何か言っていたが聞き取れたのはこれだけ(←失礼)。飲み物が欲しかったなぁなんて思いながらパンチで穴をあけると先を急いだ。すると坂本さんの車が停めてあってルーフに水と食糧(バナナ)を置いておいてくれた。あぁさっきはこの事をおっしゃっていたんだなぁと坂本さんの優しさに包まれる。せっかくなのでバナナを頂き水を軽く口に含む。すると上から坂本さんが走って来たが、何分遠くの方から話されているので聞き取れない。助かりました!!とだけ言い残して走らせてもらった。

こんな感じで置いてあった


コンビニが現れる畝刈付近まで一気に高度を下げると、県道28号線の長い登りに入る。先回りした坂本さんが現れ、これから峠越えやから!とウイダーinゼリーを手渡してくれた。もちろん感謝の気持ちもあるが、さっき水分とったばかりやし重くなるなぁなんてちょっとでも考えてしまった自分はダメ人間だろう。しかし、良く考えるとすでに40k近くほとんど補給せずに来ている(前日に食べ過ぎたので若干胃腸の調子が良くなかったため)。ゼリーをチュウチュウ吸う事でエネルギー切れにならずにサクッと峠越えできたのは間違いない。サンキュっ!坂もっちゃん!!(この頃には勝手にこう呼んでいた)





距離時刻経過時間
あぐりの丘CP45.011/02 1:124:12:00

あぐりの丘ではテントがあってもしかしたら熱い豚汁でも飲めるんじゃないかと思った自分がバカだった。もちろんエイドはとっくの昔に撤収されている。ただ、あぐりの丘に着くと正規のコースに戻って来たような感覚になって嬉しくなった。やはりL部門(W部門の前半部分)のコースが馴染みがある。この感覚は橘湾常連の方には理解してもらえるのではないだろうか。

エイドを後にすると式見漁港まで降りるのだが、秋のH、W部門では特別に右に降りて行っても良いことになっている(春はL、E共に左に行かねばならない)。右のほうが距離は2kmほど短くなる。事実、右にガンガン降って式見漁港に到着するのと、坂本さんの車が左に入って式見漁港に到着するのがほぼ同時になったくらいだ。

真夜中の潮の香りを嗅ぎながらR202をひたすら走って行く。またオートパイロットモードが起動。トンネルを二つ越え、銅像の立つ福田霊園を登りきり、福田の町に向かってガンガン下って行く。漁港やこれから走ることになる伊王島が一望できる。昼間だとはっきり見えるが夜は夜でとても美しい。あぁ!自由だぁぁああ!!なんていい歳こいて叫んでみたり。

大浜町で右折し長い長い大浜トンネルで女神大橋を目指す。初めて来たら戸惑うダンジョンのような道も何度も走っているので間違えようがない。淡々と進み、すでにライトアップの時刻を過ぎた女神大橋に出ると深夜特有の冷気が身体を打ちつける。

うどん♪うどん♪うどん♪

スタート前に銀さんに要望したのはこれだけ。とにかく女神大橋で名物の五島うどんが食べたいです!と。さて、残っているか...




65.0km地点
女神大橋エイド
2:50頃(05:50経過)
avg.5'23/km

あったーーー!!
♪( ´θ`)ノヒャッホーイ

坂もっちゃん(ちなみに面と向かってはこう呼んだことはない)が準備してくれていた。ズルズルっ!と一気に吸い込む。

あ、冷たいんすね...( ˙-˙ )

ごめん、ガスが残ってなくて...

いやいやそれでもあご出汁のうまさは十分伝わってくる。贅沢は言えません。あまりのうまさに思わず2杯ペロリと頂く。伊王島にある次のエイドまでの距離を聞くと12kmくらい。あれ?そんなもんやったっけ?昨年春にEを走った時は長い印象だったのでちょっと拍子抜け。そう思えたのも調子がいい証拠か。なんて悠長に考えながら伊王島を目指した。


つづく




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