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photo by 石山さん |
第4回 彩の国100マイル 2019 ⑤レースレポ〜South2編〜(完結)
<<①結果報告
<<②レース結果概要
<<③レースレポ〜North編〜
<<④レースレポ〜South1編〜
夜に入り気温が下がると謎の回復力で身体が軽くなり始める。さぁいよいよ初めての3周目。まだ見ぬ新しい世界へ飛び込んだ。どうなる?!
【レースレポート〜South2編〜】
▶︎▶︎South2 Stage 56.1km↑3280m
《A11ニューサンピア〜A12桂木観音〜A13吾那神社〜A14竹寺〜A15高山不動尊〜A16桂木観音》
km | sprit | lap | ||
A11ニューサンピア
| in | 106.7 | 16:26:10 | 1:21:47 |
out | 16:40:20 | 0:14:10 |
また同じとこ走るんかいな
つい数時間前までは絶対に考えられなかったはずなのに今まさにそれを実行している。あまりのアフォさ加減に思わず笑みがこぼれた。
山道に入る手前のトイレで用を足し気合を入れ直す。1周目の桂木観音までの区間タイムは1時間くらい。それと同じか、あわよくばそれよりも早く行ってやる!そんな気持ちでガシガシ山を登り始めた。
夜になると雰囲気がガラッと変わり、あれ?こんな道やったかいな?とロストを疑うも、GPSで確認すると赤い線上にちゃんと自分がいる。よかった。時計に表示される高度計だけを頼りに上へ上へと足を進めた。
結果的に1:10くらいで到着。最終周に入ってもこれほど足が軽やかに動いている(もちろんフレッシュな状態と比べれば50パーくらいまでパフォーマンスは落ちている)のが自分でも信じられなかった。が、最後まで続くことはないということは頭のどこかで分かっていた。
km | sprit | lap | ||
A12桂木観音 | 113.6 | 17:50:27 | 1:10:07 |
この時間になると桂木観音のエイドにはたくさんのランナーで入り乱れていた。うさかめ君の姿を探すもいないようだ。コンソメスープがあったので、その中にコロッケパンをつっ込んで何個か食べた記憶がある。おばちゃん!もう一杯下さい!!めちゃめちゃうまかったナァ〜
次はあのお兄さん(④参照)のいる吾那神社を目指す。およそ11キロの100%トレイル区間だ。漠然とこの区間がSouth2の勝負所と勝手に決めていた。
なんとか2時間で行ければ...
この区間で大きく失速すればモチベーションの低下に拍車がかかるような気がした。少し無理してでもうまく走れればメンタル的には上向きにできる。もちろんこの無理が祟って、後半に恐ろしいほどの失速(最悪の場合リタイア)に繋がるリスクも十分に抱えているのだが...
鼻曲山(それにしてもなんちゅう名前や!)への激しい急登付近で初めて100Kランナーの背中を捉え始めた。皆かなりキツそうに見える。トレイル脇でしゃがみ込んでいるランナーの姿もちらほら。「大丈夫ですか?水とか補給食はありますか?」と声をかけながら進んで行く。これまで自分も山の中でしゃがみ込んでしまった経験は数知れず。今はこうやって動けているが、あと数時間、いや数分後には彼らと同じように山中で途方にくれる可能性があることは痛いほど知っている。自分に檄を飛ばすようにランナーに声をかけながら進み続けた。
すごい!マイルランナーですか!!
え?え?!
周回遅れにされたってこと??
なかには自分のゼッケンを見てナイスリアクションを取ってくれる方もいた。ずっと孤独な戦いが続くと思っていたので、100Kランナーと一緒に走れたことは、最後まで走り続けられた大きな動機になったことは間違いない。
一本杉峠を越え、一時的にロードへ出た時だった。たぶん北向地蔵付近だったと思う。暗闇の中にぼんやりと明かりが灯っているのが見えたので、近づいていくと何やら賑やかな様子。すると...
ばしこさん!!
そしてうさかめくん!!
なんと!ばしこさんが私設エイドを開いてくれていた。思わず椅子に座り込み、温かいおかゆを頂きながら話に華が咲く。エイド間をマーシャルとして移動していたうさかめくんからは「あれ?ここで会う予定はなかったで!」と驚かれた。思わぬサプライズに元気100倍。威勢よく再出発した。
しかしそうは言っても、距離を踏むにつれ着実に疲労の影が忍び寄っていた。エイドまでが果てしなく遠く感じる。こんな登りあったっけ?下ったと思ったらまた登らされる。
気づいた時には呼吸がひどく浅くなっていた。エンジンをかけ直すように何度も深く深く空気を体内に送り込んでみるが、まるで肺がなくなってしまったかのように空気を吸っている実感がない。
結果的に2時間10分。ギリギリ持ちこたえた感じでの到着となった。
km | sprit | lap | ||
A13吾那神社 | 124.4 | 20:01:24 | 2:10:57 |
吾那神社のエイドに到着したのは午前3時頃。1回目に来た時とは完全に様相が違っていた。まさに野戦病院と化している。想像して頂きたい。気温は一桁。ブルーシートの上に幾人ものランナーがサバイバルシートに包まれて転がっている状況を。エイドのテントの周りでは温かい食べ物をすすりながら膝を抱えているランナーもいる。そうかと思えば力強くエイドを後にするランナーの姿もいる。そんな中、エイドの方は元気な声で食糧を配りランナーを勇気づけている。カオスだ!!
深夜でも元気なあのお兄さんからスパゲティ入りのシチューを頂く。もうこの美味さたるや。五臓六腑に染み渡るとはまさにこのこと。たくさんお話をしてもらい、元気にエイドを送り出してもらった。
神社からの急階段を下りながら足の調子を確認する。大丈夫。まだ死んでいない。一番辛い状況こそ楽しまんとわざわざこんなことしてる意味ないやないか。まるで何事もなかったかのようにロードを走り天覚山の急登へ突入した。
上を見上げると大勢の100Kランナーが列をつくっている。道を譲ってもらい少しずつ前へ出て行く。ここでも色々な方に声援を送ってもらえた。と、同時にサボることができなくなった(笑)
天覚山山頂付近でSouth1と2でコースが分岐する。だから100Kランナーとも別れまた完全な独り旅となった。
はて、どんなコースだろう
好奇心と恐怖心が混在しながら黄色いテープを追いかけていた矢先だった。
なんじゃぁぁぁ
こりゃぁぁぁあああああああ
※一字一句違わずこう叫んだ
ザレた急斜面の下り。しかも人が通ってないのか蜘蛛の巣が顔や腕に巻きつく。とてもじゃないが走れたもんじゃない。せっかく下りを走ってタイムを稼ごうと思ってたのに。ヘッドライトの明かりを頼りに、細くなんとも頼りない木々を掴みながら慎重に下っていく。
ズズっ
うわ!なんやこれ!!
悪態をつきながらもなんとか下りきり、ロードへ出たと思ったらまたすぐに山道へ連れ戻された。
ここから竹寺への登りといったら...
それはもう想像を絶した。20時間以上もの間およそ130キロの山道を走った状態でのこの登りは酷過ぎる。100マイル走る中で一番苦しめられたのは間違いなくこの区間だ。まさにトラウマレベル(笑)申し訳ないが自分の文章力ではそのキツさを伝えることができない。とにかくエネルギーが切れてはダメだと言い聞かせ、羊羹やロールパンなどを無理矢理胃に流し込みながら進んだ。
アカン...
無理や...
どうしても進めなくなり思わず座り込んだ。パンか何かを食べながら少しずつ明るくなり始めた空をボォっと眺める。耳をすませば、鳥のさえずりが確かに朝がやって来ていることを知らせていた。自分の存在に気づいた鹿がガサガサっと音を立てると一目散に逃げていくのが見える。10秒くらいだろうか。目を瞑ると何もなくなった。今までのこと。これからのこと。そして今。全部なくなった。
よし!
そう言って立ち上がるともう抵抗することはやめて、果てしなく続く登りに身を委ねた。
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吾那神社〜竹寺 11.1km↑1135m |
km | sprit | lap | ||
A14竹寺 | 135.5 | 22:45:12 | 2:43:48 |
竹寺エイドに辿り着いた頃にはすっかり朝になっていた。マジで死ぬかと思いましたわ!とかあんなコース考えた人頭おかしいっすよ!!とかエイドの方に言っていた記憶がある(笑)100Kランナーの方々の視線を感じつつ、うどんやらお稲荷さんをパクパク補給する。エイドへ辿り着いた安心感からか急激に腹が減ってスルスルと喉を通った。
ここからはまたSouth1と同じコースを辿る。次の高山不動尊エイドまではキツい登りがあるが、そこまで頑張ればコース難易度は下がる(はず)。とにかく高山不動尊まで行ってしまえばあとは気合いや!!そんな気分でエイドを出発した。
子の権現で"お姉さま方"に無事戻って来たことを告げ、おにぎり(100円!やす!)と温かいお茶を頂いて束の間の休息タイム。
やはり一度走っているコースは頭でイメージできるので走りやすい。明るくなって視界もよくなったせいもあるが、西吾野駅までの下りを結構なペースで走れた。未明のキツい時間帯にしっかり食べていたことが実を結んだように思う。
トンネル前の自販機でCCレモンを買って最後の難所に備えた。
壁のような登りは相変わらず酷いものがあったが、これが最後の登りや!と言い聞かせてただひたすらに耐えた。傾斜が緩くなったところを走っていると、「ひゃっほいさん!!」前から来るスタッフの方々から声をかけてもらった。
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photo by Tomomiさん |
結果的に1周目(South1)と比べて4分早く到着した。
km | sprit | lap | ||
A15高山不動尊 | 145.5 | 24:49:28 | 2:04:16 |
カレーうどん下さい!!
ズルズルズル!あぁ!めちゃめちゃうまい。この頃にはすっかり胃腸の調子はよくなり、胃に食べ物を入れることで、身体の中にある燃料がドロドロと血流を伝うのを感じたほどだ。大勢の100Kランナーから何か異様なものを見る目で見られたことを覚えている。
後続との差を聞いてみる。すると「竹寺の時点で2位とは35分差くらいかな」とのこと。1周目に聞いた時と差はほとんど変わっていない。名前を聞くと澤さん。これまでに他のレースでも何度か名前を見たことのある方だ。35分差と言えど彼も絶対にまだ諦めていないはず。
高山不動尊まで来れば難易度が下がることはSouth1で経験済みだったのでここから遅れた分をしっかり取り戻すことを決意。とにかく全力を出し切れ!身体の中にあるエネルギーを全て使い切れ!!そう気持ちを奮い立たせると大きな歓声をもらいながらエイドを出発した。
関八州見晴台にあるツツジのトンネルを潜り抜けると下りが始まる。最後の最後で怪我しないよう細心の注意を払いつつもできる限りペースを上げて駆け下りる。足裏の痛みは相変わらずだったが、思いっきり突っ込めば一時的に無敵モードになるのをUTMFで経験していたので、気長に待ってみるもなかなかその時は訪れてくれない。
600m以上の標高差を一気に駆け下り、ロードに出たところで100Kランナーの方が「ひゃっほいさん頑張って下さい!」とわざわざダッシュで追いかけてきて応援してくれた。
そしてまたトレイルに入ると、桂木観音まで緩やかに登っていく。とにかく歩かず走り続けた。この時には27時間台で絶対にフィニッシュすると頭の中ではタイムがモチベーションになっていた。前から走ってきた2名のスタッフの方に応援してもらえたこともよく覚えいてる。
結果的にこの区間はSouth1より7分短縮。
km | sprit | lap | ||
A16桂木観音 | 154.3 | 26:08:57 | 1:19:29 |
ついにここまでキタァァ!!
夢にまで見た最後のエイドに到着。最後やのに何を食べたか覚えてないが結構食べたんじゃないかと思う。すると女性の方に声をかけてもらう。名札を見ると...あっ!!
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女将さん!! 名物ピコピコハンマーでケツをしばかれるの図 |
さぁ、ここまで来れば残すところは8.5キロ。大高取山さえクリアすればフィニッシュはもう間近。登りはどうしても歩いてしまうので平坦、下りはしっかり飛ばす作戦で駆け下りる。
大高取山の登りに変わると100Kランナーの背中を追いかけながらひらすら我慢。そんな時に黒ゼッケン(100マイルの部)のランナーを見つけた。
ん?どういうこと?!
一瞬プチパニック。
そうか!
彼はまだSouth1を走っているのだ。もう関門時間はとっくに過ぎているのだが辞めることなくニューサンピアを目指している。
思わず声をかけた。
スピードは違えど同じ100マイルを目指す者として何ら変わりはない。彼の最後まで諦めないその姿に感動し勇気をもらった。
太陽はすっかり高く昇り、また気温が上がり始めたのを肌で感じながら標高を少しずつ上げていく。どこかに腰掛けたい衝動にも駆られたが我慢我慢!歯を食いしばってとにかく前へ進み続けた。
山頂を踏むと下りが始まる。スッと足を下りに踏み入れた瞬間にその時はやって来た。無敵モード。もう足裏の痛みも感じない。入り組んだ木の根やガレた石でつまづくこともない。身を任せるように無心で山を駆け下りた。
— トレニックワールド (@TrainicW) May 12, 2019
ロードに出ると自転車で前を行くS石さんを追いかけるように全力で走った。これが正真正銘のラスト!全力や!全力を尽くさんかい!!※結果的に最終区間はSouth1と比べて9分短縮。
ニューサンピアの敷地内に入ると...
え?
マジ?!
たくさんの方が拍手で出迎えてくれた。誰もいないんじゃないかと思っていたのでそれはもう心底嬉しかった。おめでとう!おかえり!!色々な言葉をかけてくれた。その時の皆さんの笑顔は今でもハッキリと思い出せる。自分がゴールすることでこんなにも喜んでくれる人がいることに驚いた。
どの100マイルレースより辛かった。過去2回のDNF。ここまで来るのに3年もかかった。走るのをやめ一人一人とハイタッチしながらその歓びを噛みしめた。皆さんの方を振り返ったとき、新しい世界が見えたような気もする。自分の中の何かを変えてくれたレースだったことは間違いない。
ありがとうございました!
そう言って長い長い旅路は終わった。
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photo by Mカメラマン |
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photo by チェル氏 チェル氏、素晴らしい写真をありがとうございました! |
FINISH!!
彩の国100マイル
161.1km
↑11297m
27時間21分51秒
総合優勝
1位/223人
North 6:24:55
South1 10:01:15
South2 10:55:41
完走者36名/223名
完走率16.1%
以上です!
なっが〜いレポ読んで頂きありがとうございました。言いたいことはレポの中にねじ込んだつもりです。ご存知の方も多いと思いますが、後日大会主催者からインタビューを受けました。その時の記事を下に貼っておきますので宜しかったらご覧下さいませ。
https://trainic-world.org/sainokuni/archives/846
第4回 彩の国100マイル 2019
全5編
完
コメント
次は海外? その前に橘だねー 僕も100kに行く予定やよー
そして三回目で優勝しての制覇かっこいいわ!おめでとう~
来年はヒャッホイ見習って3回目で完走したいわ!
そしてもう卒業したい(笑)来年もヒャッホイはチャンピョンとして来るやろ(笑)
7月終りくらいに飲もうぜ(笑)
次はタカ財団がバックについてくれれば海外でも南極でもどこでも行くんですがww
橘楽しみです!
2回までは全然オッケーす!ただ3回目は絶対やらなダメっす(笑)
チャンピョンとして参加して恥ずかしくないように来年までにさらにアフォ度を上げときますね!兄貴も連戦頑張って下さいね!応援してますよ〜
7月飲みいいですね〜楽しみしときます(*´꒳`*)