2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第4回 彩の国100マイル 2019 ④レースレポ〜South1編〜

photo by Tomomiさん

第4回 彩の国100マイル 2019 ④レースレポ〜South1編〜



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【レースレポート〜South1編〜】


予定より大幅に早くノース区間を走り終えてしまった。カンカン照りの太陽が容赦無くランナーの士気を奪い始める。




▶︎▶︎South1 Stage 55.7km↑3100m
《A5ニューサンピア〜A6桂木観音〜A7吾那神社〜A8竹寺〜A9高山不動尊〜A10桂木観音〜A11ニューサンピア》





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A5ニューサンピア
in51.06:24:551:19:16
out6:30:550:06:00

うひょひょひょひょ

ロードを走りながら、思ったより脚が動くことに独り舞い上がった。しかし不安もある(急に真顔)。片手に持った"あんぱん"が喉を通らない。これはおそらく暑さによるものだろう。気持ち悪さはないが確実に悪い兆候だ。でも食べなければ。小分けにちぎりながら水で無理矢理胃に流し込んだ。

山道へ入る手前のトイレで水を浴びる。昨年はジュースを飲み過ぎて失敗した経験があったので、絶対に甘いジュースを買ってはならないというルールを設けていたが、自販機が目に入ると何の躊躇もせず"レモンスカッシュ"をポチっていた。うまぁ〜

ドォ〜〜〜ン
ドォ〜〜〜〜〜〜ン

なんやなんや?!((((;゚Д゚)))))))

すぐ近くで猟銃でもぶっ放してるのかと思うほどの大音量が山に響き渡る。思わず姿勢を低くして流れ弾に当たらないようにしたほどだ。その後も何度か聞こえた。ありゃなんやったんや。

登りはさすがにノースほど機敏に動けなくなっている。歩きを頻繁に入れ、一定のリズムで軽やかにそして着実に歩を進めていく。「頑張ってください!」前から来る応援の方が声をかけて下さった。驚くほどパワーをもらえたのを覚えている。

photo by FB
それがこの時の写真か?!


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A6桂木観音57.97:31:301:00:35

桂木観音エイドまでの区間タイムは1時間。予定では50分で行けたらとテキトーに計算していたがちょっと無理。サンドイッチやったかな?頑張ってしっかり食べたように思う。
桂木観音からは昨年までのコースを逆走していく。次の吾那神社までのトレイル率はほぼ100パーセント。厳しい区間であることは間違いないが、高低差図を見る限りでは一本杉峠さえクリアできれば大丈夫だろうと高を括っていた。

ガサガサと突然横で音がしたと思うと大きめの獣がそばにいる気配を感じた。

ガルゥゥゥァアああ

く、熊?!((((;゚Д゚)))))))

あんな吠える声を聞いたのは初めてだ。運よく襲いかかられることはなかったので一安心。本当に熊だったのだろうか。イノシシだったのか。それとも...



鼻曲山の急登を乗り越えて一本杉峠を目指す。標高差は大したことないのに微妙なアップダウンによって、体力が確実に削り取られていくのが手に取るように分かった。やばいな。失速するあの嫌なイメージが頭を覆う。でもなんとか1時間40分くらいでまとめたい。時計をチラチラ見ながら、燃料が切れ始めた身体に鞭を入れる。

そういえば一本杉峠を越えたくらいで3人くらいのラングループに出会ったような。自分のゼッケンを見て大きな声援を送ってくれた。孤独な区間が続いていたのでもの凄く救われた。



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A7吾那神社68.79:18:001:46:30

クリームシチューを頂いた記憶がある。うん、そうだ。間違いない。元気なお兄さんからたくさん声をかけてもらった。この時、シチューの具だけがどうしても胃に入らなかったので、申し訳ないっすと言って返却すると、そのお兄さんは「あいよ!」と言って食べさしの具を躊躇なくペロリ。

なんて男前なんや\(//∇//)\
※おっさんずラブではない

ありがとうございました!
絶対にもう一度来ますから!!
次会った時はケツをシバいてやってください!!
※あ、変な意味ではないっす(^^;;

吾那神社の階段を駆け下り、ロードに出たところで自分がかなりグロッキーな状態になっていることが分かった。これは間違いなく熱中症に違いない。そう思うと冷たい飲み物が欲しくて欲しくてたまらなくなってきた。ぬるい飲み物じゃいくら飲んでも焼け石に水なのを経験上知っていた。必死で自販機を探すも、コースが東吾那駅を迂回する形になっていたので一旦コースに従って進み、途中踏切を渡ってわざわざ駅の自販機へと足を運んだ。

スポドリ500mlを一気飲み
ごくごくプハァァァア

水分の採り過ぎは危険かもしれないが、結果的にこれは正解だったと思う。キンキンに冷えた飲み物が身体を内部から冷却してくれた。

とはいえすぐに回復した訳ではない。天覚山の登りはグロッキーな状態でほぼ歩いて登った。山頂に近づくと何やら音楽が聞こえてくる。一瞬幻聴か?!と思ったが、山頂でスピーカーから音楽を流して応援をしてくれる方がいたので安心した。

...

竹寺までの道のりは本当に厳しいと思う。その厳しさはなかなか言葉では言い表せない。その証拠と言えるか分からないが、South1の竹寺でリタイアした方はかなりいらっしゃるのではないだろうか。

これ、もう一回走らなアカンのか...
絶対無理やろ...

激しいアップダウンを目の当たりにしながら、そんな絶望感に心が蝕まれ始めていた。

吾那神社〜竹寺
11.1km 累積標高1135m
恐ろしい区間




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A8竹寺79.411:29:032:11:03

トップの方が来ましたよ!!

ここも急ピッチでエイド設営中の様子。それでも大勢の方が大歓声で迎え入れてくれた。よかった!忘れられてなかった!!純粋に嬉しさが込み上げた。

photo by Tomomiさん

twitterで繋がっていたTomomiさんエイドの美しい女性の方に声をかけてもらうと、さっきまでグロッキーだったのが嘘みたいに元気になった(←単純)。うどんを2杯頂き、何が何でも絶対に食べなアカン!という意識だけで食べ物を手当たり次第口に放り込んだ。

エイドの方には「すごい!独走状態やね!」なんて言ってもらったが、自分の中ではすでに失速し始めた感覚があったので、後続のランナーに確実に詰められているとネガティブな思考が頭の中を支配し始めていた。およそ80km。まだ全コースの半分にも達していない。焦る必要は全くないのは分かっているのだが、South1をすでに5時間(予定では4時間半)かかっているという事実が心の重石になっていたと思う。

大歓声の中エイドを送り出してもらうと、子の権現を目指した。確か茶屋があったはず。そこでキンキンに冷えたジュースを飲もう。何を飲むか。それだけが原動力になっていた。

ヘッドライトを点灯させたのはこの頃から。夜パートに突入したことで、自分の中ではレースが第二段階へと入ったと考えた。しかし、嫌でも昨年の大失速の経験が頭をよぎる。夜パートに入った途端、エンストした車のように全く走れなくなった。今年はどうか?耳をすますと身体の内部にあるエンジンはまだ滑らかに回り続けている。

だが一寸先は闇...


おい!ヒャッホイ!
テメェは身体にエネルギー溜め込んできたやろ!!
前日にお代わりしまくったやよい軒のご飯を思い出せ!!!!

前日昼に食べた
やよい軒のしょうが焼き定食
今後の定番になりそうだ


背後から見る仁王像に違和感を感じつつ、子の権現の境内を走り抜けると、明かりの灯る一軒の茶屋が目に入った。「あら、随分と早いわね」茶屋のお姉様方に声をかけてもらう。ほんとは何か食べたかったがどうしても食指が動かない。お姉様方と会話していると急に温かいお茶が欲しくなったので聞くとタダでいいよとのこと。でもなんか申し訳ないのでバナナ(50円)を買ってモグモグ。お茶が美味すぎる。レースを忘れて至福のひと時。思い出したように自販機でコーラを買ってそれも胃の中にぶち込んだ。「必ずまた来ます!!」そうお姉様方と約束して茶屋を出た。


ちゃぽんちゃぽん
ちゃぽんちゃぽん

流石に竹寺エイド・茶屋と連続で補給し過ぎたのか胃の中で音を立てていた。子の権現から西吾野駅までは一気に下る区間。せっかくの下りやのにこれじゃあ走れんな。仕方がないのでトボトボと下山開始。まぁ大丈夫やろ。なぜか気持ちにゆとりができていた。

あれだけちゃぽんちゃぽんになっていたはずなのに、市街地に降りてきても冷たい飲み物への欲求は止まらなかった。自販機で冷たいお茶500mlを買い一気に飲み干した。それだけ日中に受けた身体へのダメージは酷いものだったのだろう。

西吾野駅の薄暗いトンネルから高山不動尊までは激しい急登が続く。まさしく壁のような登り。なんちゅうコースや。いつ終わるのか。先にヘッドライトの明かりを向けても相変わらず壁が立ちはだかっている。疲労で何も考えられなくなり、ただただ目の前の壁と格闘し続けた。



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A9高山不動尊89.413:37:392:08:36

最後の最後にえげつない階段を登らされると高山不動尊エイドに到着する。ここでもたくさん話しかけて頂けた。うどんを食べながら、ここで初めて後続との差を聞いてみた。エイドの方曰く"竹寺の時点で40分くらいの差"とのこと。さらに後ろは25分くらい離れていることも教えてもらった。South1は吾那神社〜竹寺〜高山不動尊までかなり時間をかけてしまった実感があったのでもっと差が縮まっていると思っていたので驚いた。皆キツいんやな。しかし油断はならない。彩の国には恐ろしいほど屈強なランナーがエントリーしている。前回覇者の方のように後半恐ろしい追い上げを見せる方だって少なくないはずだ。タイムや順位を気にしていないとは思いつつもやはり気になっている自分がいた。水を頭から浴びてしっかり身体に溜まった熱を追い出すと、気持ちを切り替えるかのように勢いよくエイドを飛び出した。

次の桂木観音まではエイドの方に"ボーナスステージだよ!"と言われた通り、そのほとんどが下りとなる。しかも下まで降りてしまえばロードもある(多少だが)ので、今までの鬼コースと比べれば圧倒的に楽な区間と言えよう。もちろん足が残っていればの話である。

イテテテテテ。゚(゚´ω`゚)゚。

足裏の痛みが無視できなくなり始めたのはこの頃から。普段この距離で痛みが出ることはまず無いからやはりUTMFの疲労が残っているのだろうか。足指の皮がベロンと剥がれているような鋭い痛みが追い討ちをかけていた。



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A10桂木観音98.215:04:231:26:44


桂木観音エイドまで戻ってくるとランナーの姿がチラホラと見えた。ゼッケンの色が赤い。彼らは100Kランナーだ。ノースを終え今からサウス1のキツい区間へ入っていく100Kランナーの最後尾と一緒になったのかな?

補給をしているとどこかで聞いたことのある声が耳元でする。

ひゃっほい?

画像は過去のオリジナル企画で応援に来てくれた時のもの
うさかめくん!!

うさかめくんは神様仏様サイラー様のうちのひとり。しかもすでにサイラー化を2回もしている奥武蔵のボス(ボス感は皆無)。しかし今年は故障明け(仕事の都合?)とのことで出場を断念。代わりに応援&ボラとして大会を支えてくれているという男前っぷりだ。

キツすぎるわ
だいぶ落ちてもた
後ろからだいぶ詰められてるやろなぁ〜

なんて弱音を吐く自分に一言。

まだまだ後ろなんか気にしても仕方ないで(^з^)-☆

さすがはサイラー様。めちゃくちゃ落ち着いてる。この一言によって現実世界に引き戻ししてもらったような気分になった。今までのことがまるで束の間の夢だったかのように。思わぬところで知り合いにあったこと、そしてちょっとした会話だけで急に(それも恐ろしいほど)元気になった。

さぁ、South1も残すは大高取山のみ。ゼッケンに書かれている高低差図を見ると300弱登る程度。一気に気が楽になった。淡々と進み続け、難なく山頂を踏む。ここから一気に下るのだが、前から道を間違えたという100Kランナーが登ってきた。この辺りはコースが交差するところでややこしいのかもしれない。

ロードに出ても足は滑らかに回転していた。それに何かこう憑き物が取れたように身体が軽くなっている感覚がある。ロールパンを食べながら走っていると気温がだいぶ下がっていることに気づいた。

日中に溜めに溜め込んだ熱がこの時にはだいぶ抜けていたのかもしれない。復活。間違いなく復活や。この感覚を決して忘れないでおこう。そう思いながらニューサンピアを目指した。



▶︎▶︎トランジット(South1→South2) @A11ニューサンピア 14分



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A11ニューサンピア
in106.716:26:101:21:47
out16:40:200:14:10

ここまで16時間30弱。結果的にサウス1を10時間かけて走ってきたことになる。当初計画していた8〜9時間なんてのはとてもじゃないが今の自分では不可能だ...

深夜にも関わらず大勢の方に出迎えてもらえた。これだけ盛り上げてもらえば否が応でもテンションは上がる。

今年の最大の目標は、

South2へ向けて出発すること

過去2回とも3周目に進めずDNFとなっている。完走、順位、タイムよりも何よりも(それこそ途中でくたばろうが)3周目へ突入すること。これが自分に課していた最大かつ絶対目標だった。

だから長居はできない。体育館へ向かいザックに補給食を詰め、分厚目の靴下に履き替える。ふと顔をあげると馴染みのある方がいた。

ナガさん!!

photo by ナガさん

どうやらナガさんは日中の暑さにやられSouth1の途中でDNFとなったらしい。吐くものがなくなるほどの壮絶な経験をされたそうだ。色々と話しかけてもらうことでかなり救われた。恐れ多くもナガさんの分まで頑張ろう。そう思った。


カレー残ってるよ〜

1周目の時は調理中だったのでこれが初カレー(笑)胃腸の調子を考えると少し迷ったが、あかん!食べんと!このコースを1周するには物凄いエネルギーが必要やで!!そう実際に口に出してカレーを頂く。意外にもスルスルと喉を通った。中に入っていたウインナーが美味すぎたので2杯目も頂く。ずっと食事制限していてウインナーを食べていなかったから尚更だった。他にも何か食べたと思う。

photo by S石さん



調子どう?

運営のS石さんと話す中でこんな風に言った記憶がある。


もう走るのを引退する覚悟で出しきってきます!!


そしてまだ見ぬ世界へ入っていくように夜の闇へと足を進めた。




つづく








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