熊野古道150K(九度山〜本宮〜紀伊田辺) ⑤レポ〜中辺路編(完結)〜

熊野古道150K(九度山〜本宮〜紀伊田辺) ⑤レポ〜中辺路編(完結)〜


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町石道、小辺路を辿り、初めてのルートとなる中辺路へ!
深夜から明け方にかけての真っ暗な山道に翻弄され、滝尻王子から待ち受けていたのは地獄のロード26km区間。果たして...







【レポ〜中辺路編〜】

▶︎▶︎中辺路 65.4km↑3229m
〈熊野本宮大社〜湯ノ峰温泉〜三越峠〜道の駅中辺路〜滝尻王子〜稲葉根王子〜紀伊田辺駅〉




地点距離時刻経過時間区間タイム
熊野本宮大社 87.112/07 23:5015:34:0012:14:00
レスト0:25:00
熊野本宮大社87.112/08 00:1515:59:000:00:00

いざそれを目の当たりにすると冷え切った身体であることなどすっかり忘れて呆然と立ち尽くしてしまった。大斎原には高さ34mにも及ぶ日本一の鳥居がある。ここはかつて熊野本宮大社があった場所だ。明治22年の大水害により現在の場所へ移されたらしい。つまりこっちが本物だ。またその規模は現在の数倍の大きさを誇ったというから驚きだ。厳かな雰囲気の中ヘッドライトの灯りを頼りに進んで行く。

大斎原
あまりの暗さに何も写らなかった



大日越・赤木越というルートで中辺路へ入っていく。大日越の登り口を探すのに少し手間取ってしまう。登り口からは想像以上に激しい急登が続く。明らかにペースダウンしているがとにかく前へ進むしかない。耐え忍ぶように登り切ると鼻欠地蔵あたりから下りに変わる。下界に近づくと温泉地特有の硫黄の匂いが鼻につき始める。

意外とハードな大日越



地点距離時刻経過時間区間タイム
湯の峰温泉90.012/08 01:0416:48:000:49:00

湯の峰温泉
赤城越の入り口

湯の峰温泉は開湯なんと1800年、日本最古の湯として有名らしい。今すぐ湯に飛び込みたい願望を抑えつつ、橋を渡って少し右に曲がる。すると小さな路地が赤城越の入り口になっていることが分かる。この赤城越も一山越えなければならない厳しいコースだ。ここも我慢!と言い聞かせて黙々と進むしかなかった。

赤城越の標識にある数字が少しずつ減っていくことだけに喜びを見出していると、迂回路の標識があるのが目に入った。ふむふむ。どうやら船玉神社手前が災害復旧工事中のため迂回路が設けられているようだ。ちなみに、これによって猪鼻王子へは2019年12月現在通行止になっているので注意が必要だ。

熊野古道の通行規制情報は →→ コチラ


三越峠へは音無川沿いの道を進む(おそらく昼間は美しい道なんだと思う)。この辺りは野生動物がいそうな雰囲気がプンプンするので何か大声を出しながら進んでいた記憶がある。しかし、野生動物に遭遇する怖さよりも体力的なしんどさが打ち勝ち始め、徐々にそんな事は気にならなく始めていった。川沿いの道から離れるとまた急登が始まる。



地点距離時刻経過時間区間タイム
三越峠99.512/08 03:1619:00:003:01:00

三越(みこし)峠





三越峠を過ぎたあたりで、あまりのキツさに思わずベンチに横になる。電池消耗を避けるためライトを消してみると驚くほどの闇の中にいることに気づく。時計をみると深夜3時過ぎ。夜明け前の一番きつい時間帯だ。相変わらずの失速。何も成長していないなと思いつつ、朝食に備えてアルファ米に水を注いでおく。

60分ほどで出来上がる
(熱湯なら15分)

迂回路を示す標識


湯川王子〜熊瀬川王子区間も災害により迂回路(約4km)が設置されている。が、岩上峠を越えなければならないため正規コースよりも厳しくなっているのではないだろうか(どうなんだろう?)。仲人茶屋からは女坂を登り草鞋峠へ。

熊瀬川王子


小広王子付近からは舗装路区間に変わる。道標を目で追いながらロストしないようにゆっくりと走っていく。この先、日置川を渡るまで舗装路はおよそ8kmくらい続くだろうか。ここで少しでも時間を稼いでおこうと思うもやはりペースは上がらない。

近露
ようやく長い夜が明けてきた


最後のパンを頬張る筆者(30代アローン)


日置川を渡る


この先、日置川から滝尻王子まで想像以上にきついコースが待ち受けていた。朝の美しい山道とは裏腹に激しいアップダウンが続く。最後まで足が持つのか不安になる。心配事は他にもある。手元にある食糧がなくなってきていることだ。ここまでだいぶ補給をセーブして(ハンガーノックにならないよう気をつけながら)進んできたが、残された食糧はカロリーメイト2つとスニッカーズ1つ、そして深夜に作っておいたアルファ米だけ。これで残り38km近くを乗り切れるのだろうか。



地点距離時刻経過時間区間タイム
道の駅中辺路114.212/08 07:0022:44:006:45:00


美しいトレイルが続く


道路を渡れば道の駅中辺路がある。温かい朝食(味噌汁と焼き鮭にご飯なんて最高じゃないか)を食べたい欲求に駆られるが、自分が設けてしまったルール(無補給)※②を参照のため泣く泣く素通りする。上多和茶屋跡への登りでアルファ米を食べる。少しずつ食べる予定だったが、チャーハンの素を入れていたせいか旨味が脳天を刺激して思わず一気に貪ってしまった。口の周りは米粒だらけだったかもしれない。それにしてもコメの力は偉大だ。アルファ米を食べてから馬力が戻ってきた。相変わらずペースは遅いものの力強い足取りに変わっていたと思う。悪四郎山という興味深い名前の山を越えると下りに変わる。

高原霧の里休憩所からの展望

この辺りからハイカーが一気に増え始める。さすがは世界遺産とだけあって外国人の方々が多い。こんちわ!と挨拶するとコンニチハと返してくれる。ずっと独りだったこともあり、こうして異国の人と挨拶を交わすだけでも元気になるから不思議なものだ。高原熊野神社の脇を通り、最後の山である飯盛山を目指す。カメラを片手にもった普段着の観光客が多くなる。

飯盛山(剣山)


ここまでくれば滝尻王子までもうすぐだ。さぁ下りをぶっ飛ばすでぇ!と威勢良く下り坂に突入するも足場の悪い急坂で全然スピードが出せない。仕方がないので怪我しないよう丁寧に下っていく。すると下から登ってきたおっちゃん2人組に話しかけられる。

お、もう上から戻ってきたんか?

いえ、熊野古道を夜通し走ってきました!

どっからきたんや?

丁寧に説明する

おっちゃん「お、おぅ.......」

おっちゃん「元気もらったわ!ありがとうな!!」





地点距離時刻経過時間区間タイム
滝尻王子126.012/08 09:2625:10:009:11:00


滝尻王子
富田川と石船川の合流地点にある

熊野三山への入り口である滝尻王子に到着する。紀伊田辺〜滝尻王子間はバスで移動するのが一般的だがここはやはり走っておきたい。変な拘りがまた自分を苦しめる。残り26km。目標としていた30時間以内はクリアできそうだが歩けば途方もなく時間がかかってしまうだろう。あまり深く考えずとにかく出発する。

白浜へと続くR311

できるだけ古道を通る


意外にも古道を指し示す標識がたくさんあったので道がわからなくなる心配はなかった。しかし明らかに遠回りしなければならない場所があったり、途中で標識を見失いカットしてしまった場所があったりとなかなかスムーズに走らせてはもらえない。

稲葉根王子


滝尻王子から紀伊田辺駅までの区間は地獄だった。足が終わってる状況下での長い長いロード。歩いてしまったところも何箇所かあるがそれでも立ち止まることはなかった。諦めずにちょこちょこと足を動かし続ければ着実にゴールに近づく。それにしても九度山を出発したのが遠い昔のように感じる。町石道で高野山へ登り、そこから小辺路を一気に突っ走って本宮へ。そして深夜の中辺路を彷徨い続けて今に至る。やる前はそんな事ほんまに実現できんのかいなと疑心暗鬼だったが、実際にやってみれば何とかなるもんだ。もちろんそこには走力含め最後までやりきる強い気持ちが必要なんだろう。でもそれだけじゃない"何か"が自分をここまで押し進めてくれたと思う。


昔の人が歩んだであろう道を辿る


熊野古道を走っていて如何なる時でも頭の隅にあったのは、何百年前も誰かが同じようにこの道(あるいは空間)を歩んでいたという事。もちろん昔とは大きく変わってしまった場所もあるはずだ。でもそれぞれ理由が異なるにせよ目指した目的地(例えば本宮や高野山のように)があるということは皆同じだったはず。大げさかもしれないが、時間を超越して彼らと多くのものを共有できたことが最後までやり遂げられた大きな要因となっていることは間違いないと思う。





地点距離時刻経過時間区間タイム
紀伊田辺駅152.412/08 13:0528:49:0012:50:00



FINISH!!
熊野古道150K
152.4km
↑9643m
28時間48分29秒


最後まで読んで頂きありがとうございます!ここまで読まれた方は相当なブログマニアか古道、街道ファンとお見受けしますw

それから!

毎年恒例化しつつある年末年始企画ですが、明日か明後日にはお知らせできるかと思います!皆さんの期待をいい意味で裏切れる企画内容となりそうなのでお楽しみに♪( ´∀`)



特急くろしお



熊野古道150K(九度山〜本宮〜紀伊田辺)
全5編






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