2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

STU120マイル ④レポ前編

STU120マイル ④レポ前編



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<<③結果概要


無駄に長〜いのでお時間ある方、興味ある方はお付き合い下さいませ〜



▶︎▶︎須磨浦公園→宝塚 43.0km 7時間43分
《六甲全山縦走路》


3/22(Fri)
22:02(00:00経過)
0km地点
須磨浦公園駅をスタート


アラタクさん!

駅に降りるとスーツを着たイケメンさんに出迎えられた。なんと仕事帰りにわざわざ応援に駆けつけてくれるという男前っぷり。急いで準備をしながら山の話に華が咲く。差し入れで頂いた大きな串団子をもぐもぐ食べながら。


アラタクさんに見送ってもらうと、ゆっくりと標高を上げていく。シューズの靴紐を締め忘れたことに気づいて、旗振山の山頂で締め直した。神戸の夜景を眺めながら踊る心を鎮めるかのように声に出してみた。

「ぼちぼちいこう」

これまで個人企画における野営なしのロングトレイルでの最長距離はおよそ140キロ。2年前(2017-18年末年始)、初めてSTMに挑戦して失敗した翌々日くらいに走ったのがその時だ。※参考記事→ 【utgk】STM大失敗の続き

よくよく考えてみると100キロ以上のロングトレイルを個人企画で挑戦した経験があまりなかった。これは自分でも意外だった。もちろんレースでは100マイルを走っているのだが、個人でそれをやり切るにはそれなりの勇気とアフォさと暇さが多分に求められる。ではなぜ挑戦しなかったのか。おそらくビビっていたのだろう。これまで100マイル走るキツさは何度もレースで経験している。完走経験もあるがDNF(途中棄権)した経験も何度かある。個人でやるとなると、レースとは違い何のサポートもないためその難易度は増すばかりだ。


普通に無理やろ...


これまで頭のどこかで躊躇していたように思う。

だが、昨年のSTM(2018-19年末年始)を踏破してから自分の中で何かがはっきりと変わった。それは肉体を限界まで追い込んだ時の感覚や手応えみたいなもの。それらはレースで得るものとは大きく異なったものだ。用意されたものではそういった感覚は得られないと思う。


須磨アルプス


ある人はそんなものただの自己満足とおっしゃるかもしれない。もちろんそれは間違っていないと思う。ご存知の通り、自分みたいな者が何かを得たところで社会に与える影響は皆無だ。ただ、やはり自己「満足」ではない。全く満足なんかしていないし満足できなかったとも言える。

強いて言うなら「満足できない」という満足感を得たとでも言ったらよいのだろうか。STMを完走して得たものは大きな不満足感だった。不満足と言っても、もっとタイムを縮めれたとかあの時もっと走れた云々...全然そう言う話じゃない。



真っ黒に果てしなく広がる海を目の前にした時のようなどうしようもない感覚。

今まで当たり前のように自分の身体は自分のものだと思っていたがそれがバラバラと崩れていく感覚。



幼稚な表現しかできないがまさにそんな感覚を経験した。読者の方にとっては、こんな書き方をされても何のことやらさっぱり分からないかもしれないし、あまりの幼稚さに不快に感じられた方もおられるかもしれない。それらは至極真っ当な意見だと思われる。


今自分ができる方法であの感覚をもう一度感じたい


それがこのSTUをやる発端となった。フィニッシュ地点の温泉だけを確定し、あとは地図とにらめっこ。すると距離は190km以上。およそ120マイル。野営なしのロングトレイルとしては最長距離だ。これを最後までしっかり走りきれれば、もしかしたらもう一度あの感覚を得られるかもしれない。そして何か新しいものも...


3/23(Sat)
2:23(04:21経過)
20.8km地点
摩耶山(掬星台)を通過


アフォみたいなことを考えながら進んでいると予定よりも30分ほど早くついてしまった。広場では若者が夜景を眺めながらキャッキャ騒いでいる。形は異なるが俺だってそれ以上にキャッキャしている自信はある。まぁ独りだが。。


ペットボトルの残量を見るとまだ半分以上残っていた。今回は甘い飲み物はできるだけ摂らないよう心がけてみる。基本は水のみ。甘いものは固形物で摂取する。


3:58(05:56経過)
31.9km地点
六甲最高峰を通過


よく分からないポーズ

最高峰にはもちろん誰もいない。だがこれがいい。深夜4時。普通に考えたら、こんな時間にこんな場所に独りでいる必要はない。だがこれがいい。いや、俺はこれでいいのだ。

さぁここをクリアしたら阪急宝塚駅まで10キロ強。ゆるやかに下っていく東六甲縦走路。何度走っても気持ち良い区間。まぁ足が死んでいれば地獄と化すのだが(過去に経験あり)。

歩きと走りを織り交ぜながら一定ペースを維持してぐんぐん進んでいく。確か途中でヘッドライトの電池を交換したっけ。もうすぐ塩尾寺というところで前から3つの灯りが来るのが見えた。

あっ

横田兄貴ですやん!!
クイーンヒロシさんも!!!!

ヒロシさん撮影


なんと六甲全縦2往復にチャレンジ中とのこと。やっぱりやる事のスケールが違うのがこの3人組。ちなみに今週末には六甲キャノンボールという草レースが開催される。そこには1.5往復なる部門もあるのだが、それをも凌ぐ2往復(笑) GWにUTMF→長崎橘湾80K→彩の国100マイルを平気でエントリーしているのも頷ける。まぁ人のことを言えないが...



▶︎▶︎宝塚→箕面起点 18.9km 2時間21分
《R171〜府道9号線》



5:45(07:43経過)
43km地点
阪急宝塚駅を通過

夜が明け始める


ここまで予定では8時間半くらいを見込んでいたので、少し貯金を作る形での到着となった。まぁ無理した感覚はないので大丈夫だろう。ザックの中には補給食がまだたっぷりと詰まっているので、コンビニには寄らず、清荒神方面へと続くロードをペタペタと走る。


いつもは宝塚〜箕面間はトレイルで繋いでいる(中山連山、石切山、五月山を経由する)のだが、今回は初めて完全ロードで箕面起点へと向かう。その距離は19キロ弱。大福をむしゃむしゃと頬張りながら踏切を渡り、少しずつ明るくなり始めたJR沿線沿いをペタペタと進んでいく。


キロ6を切るつもりで走ってみるもどうも足が前に出ない。疲労というよりも集中力が切れたような感じだ。五月山周辺のコンビニでモーニングすることを餌にして無理矢理前へ進ませる。

この組み合わせサイコゥにうまかった♪(´ε` )
歩きながら食べる



おはようございまーす!

箕面駅からは滝道を上がっていく。ここを走るのはかなり久しぶり。ゆるい登り坂が続くのだが、さっきまでの単調なロードと違って急に元気が湧いてくるから不思議だ。おそらく気持ちのよい挨拶と心安らぐ景色がそうさせてくれるのだろう。

箕面の滝
パラパラと小雨が降っていた



▶︎▶︎箕面起点→嵐山 46.5km 7時間25分
《東海自然歩道(松尾山はカット)》



8:06(10:04経過)
61.9km地点
箕面起点を通過


堂々と歩道に居座る猿を刺激しないように走っていると箕面起点(政の茶屋園地)に到着した。このロード区間はほぼ予定通りのタイムだったため、現在の貯金は1時間50分ほどといったところか。

高尾山まで続く東海自然歩道の起点

トイレで用を足し、丁寧に顔を洗い(塩味がした)、シューズの中に入った砂を取り出し、靴紐を結び直す。念のためワセリンを恥部に塗りたくる。そして足を上に上げて横になり、霞んだ空を見ながらこう呟いた。

ぼちぼちいこう。

ここまで62キロ。まだ130キロ近く残っている。まだ何も始まってないに等しい。それに後半になるに連れ、そのコース難易度は上がるばかりだ。焦っても仕方ない。山であろうがロードであろうが、超ウルトラの世界では心のゆとりが結果を左右する(最後はそうも言ってられない状況になるのだが)。

よし!と言って気持ちを切り替えると、東海自然歩道の山道に足を踏み入れた。

何度も走っているコースなので淡々と消化していく。北摂霊園、泉原、上音羽、竜王山荘。アップダウンはあるものの比較的走れるコースだ。流石にロードの急坂は歩いたが、ジョグのペースはそれほど落ちている実感はない。ただ唯一気がかりなのは左膝の痛み。竜王山荘手前の下り坂で、遂には途中で立ち止まって屈伸しないと走れないような痛みにまでなってきた。

膝壊してまですることか?
大会でもないんやで。無理する必要なんてないんちゃうか?


ちょっとした心の隙間にスッと入ってくる迷い。冷静に考えれば痛みを我慢してまでする事じゃないんだろうな。そんなこと頭では十分過ぎるほど分かっている。でも自分にとってこれは練習でもイベントでもない。ただの日常であり挑戦だ。いや、正確に言うなら"これを日常にするという挑戦"だ。だからその痛みを受け入れながら進み続ける必要がある。途中でやめるなんていう選択肢をとってしまえば、それは日常ではなくなってしまう。



山頂手前の宝池寺に咲く桜を見つけると、なぜか急に激しい便意が襲ってきた。ちょうど横にあった公衆便所で用を足す。うひょひょひょ。快便。


10:18(12:16経過)
74.9km地点
竜王山を通過


竜王山
展望台はスルー


その後も竜泉の滝、萩原公園、摂津峡へと良いペースで進めていく。もちろん所々で疲労の影が忍び寄ってくる感覚はあるが致命的なほどではない。それに不思議なほどジョグのペースが落ちてこない。

摂津峡
思いの外観光客が少なかった


摂津峡を抜けるとポンポン山方面のロードに出る。日差しが強く暖かい。春はもうそこまでやって来ている。しかし風はまだ冬の気配が残っていて冷んやりする。上の口バス停の自販機でカフェオレを買い、走りながら飲んでいる時だった。



ん?

あれは?!


シュピ殿キターーーーーーーー!!


熱心な読者の方ならご存知だと思われるが、自分が変な企画をする時はたいてい応援に駆けつけてくれる(応援というよりも自身のトレーニングのため?という噂も笑)。もちろん連絡を取り合っている訳でもない。ツイッターでの更新を頼りに時間とコースを読みながら来てくれるという男前っぷり。

年末年始のSTM以来の再会だ。四ツ石山の怪事件やその他ラントークに華を咲かせながらポンポン山へと続く長い登り坂を攻める。

ポンポンポーズ@ポンポン山
そろそろ流行ると思うのだが...


レスト20分@桂坂公園ファミマ

嵐山(渡月橋)


15:31(17:29経過)
108.4km地点
嵐山を通過

シュピ殿とのランデブーはここまで!その距離は20k超。苦しい時間帯だったのでとても助けられた。本当にありがとうございます。ちなみにシュポ殿はその後も自宅まで走り、行きの分も合わせると計80キロも走られたそうな。。。やはり、これは応援でなく個人的練習に間違いない(笑)



さぁここからが正念場。京都一周トレイルが待ち受けている。しかも2晩目に突入し、疲労は確実にピークのさらに上を超えることは間違いない。怖さもあるが、それ以上に自分の身体がどうなるのか考えると何だか笑みがこぼれた。

観光客でごった返す嵐山へ、独り、あきらかに場違いな出で立ちをした野郎が
人の流れとは逆らうように姿を消していった。


残り83km

つづく




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