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STU120マイル ⑤レポ後編(完結)
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<<④レポ前編
▶︎▶︎嵐山→山科 58.5km 14時間07分
《京都一周トレイル》
15:31(17:29経過)
108.4km地点
嵐山(渡月橋)を通過
落合橋を渡ると、渡月橋周辺の喧騒とは打って変わり、数組のハイカー(おそらく帰りだろう)にしか出会わなくなった。冷んやりとした空気に包まれながら、清滝の美しい渓流沿いをひょこひょこと走っていく。
高雄でザックに入れていたどら焼きを口に入れると、異様な甘さが口に広がったことを覚えている。その糖分が脳を刺激したのか、心配していた高雄からの急登を難なく乗り越えることができた。沢の池ではテントを張って火を囲んでいるパーティがいた。それを横目に見ながら黙々と走り抜けていく。
氷見峠に差し掛かった頃には、すっかり陽も落ち、ヘッドライトを点灯しなければ見えないくらいになっていた。2回目の夜だ。眠気は無いが、陽が落ちるにつれ寒さが身にしみてくる。寒さで足が止まり始める。完全に想定外。季節外れの寒さになることは天気予報で知ってはいたが、まさかここまでとは。とりあえず防寒になりそうなものを着込む(といってもBUFFやレインジャケットくらい)。非常用の着替えは汚したく無いので、最終手段にとって置く。
予定では嵐山から大原まで7時間30分。この寒さではゆっくり行くよりも少しでも身体を温めるくらい追い込んでおいた方が良さそうだ。大原まで6時間半でいけるかも。山幸橋までのトレイルの下りを駆け下りる。そして向山の登り返し。
スゥスゥ
ハァハァ
スゥスゥ
ハァハァ
身体中に新鮮な酸素を送り込むように、めいいっぱい呼吸をしながら高度を上げて行く。あそこか。いや、まだだ。あそこか?
![]() |
向山山頂 |
二ノ瀬まで出ると鞍馬まで緩やかに登るロードが続く。膝に痛みはあるが時折立ち止まって屈伸すれば大丈夫。意外にもジョグのペースがあまり落ちていないことが嬉しくて夢中で走った。
20:35(22:33経過)
135.7km地点
鞍馬を通過
ここまで5時間ちょい。よし。ゆっくりでも大原には十分間に合いそうだ。この時間になると流石に鞍馬駅周辺には誰もいない。ましてや今から山へ入ろうなんて輩は。薬王坂を越え(こっち向きだと楽)、静原の集落へ出る。
江文峠への林道は何となく薄気味悪い。熊出没注意の看板もあるから尚更だ。念のため熊鈴を手に持ちリンリンと鳴らしながら登る。ガサゴソ。草むらにヘッドライトの明かりを向けると4つに光る目がこちらを見ている。お前さんたちは鹿なのか?
21:44(23:42経過)
141.8km地点
大原コンビニを通過
予定より1時間以上早いペースだ。嵐山から大きく失速すると思っていただけに意外だった。だが心配事がある。それは寒さ。体力的に致命的なダメージはないが、寒さで身体が動かなくなりつつある。少しでもこのコンビニで身体を暖めておきたい。イートインコーナーは20:00までだったが、店員さんに無理をお願いして使用させてもらった。
![]() |
シンプルかつグレートな組み合わせ |
少しでも防寒になりそうなものを物色する。...レインパンツ!値札を見ると500円。背に腹は変えられない。でも自分は今よりももっと寒い年末年始に比叡山を乗り越えられた経験があったので、なぜか短パンで乗り切れるという根拠のない自信があった。( ←何の自慢にもならないし危険なだけ)
ちょうど30分間のコンビニ休憩を終えると、何も考えないようにして道路に飛び出た。この状況下で冷静になってしまったら「山に入るのは無謀」「バスの時刻を調べよう」などと辞めてしまいかねない。頭のネジを締めるのではなくあえて緩ませる、いや、思い切って外さなければ次に進めないだろう。※推奨するものではありません
しかし、あまりの寒さで身震いが止まらない。
そうや!!
サバイバルシートを巻き付けたらええんや!!
以前、KOUMI100でトップ選手が同じことをされていた。この方法を試すしかない。腰からスカートのように巻きつけてみる。シャカシャカシャカ。
すると、あら不思議。身体からの放熱がアルミで跳ね返りポカポカとした温かみを感じるではあーりませんか。しかも風まで防いでくれる。難点と言えばシャカシャカとうるさいことと、見た目がかなり怪しいこと。まぁ夜の山の中では全く問題ないが。
しかし、そう易々とは進ませてもらえない。
一時的な寒さに関するトラブルは避けられたものの、もっともシンプルかつ厄介なトラブルに見舞われる。それは...
睡 魔
ボーイスカウト道の急登を登っていた頃だと思う。恐ろしいほどの睡魔に襲われ始めた。5分と意識が持たない。気づけばフッとどこかへ行ってしまうような状況になり始めた。大声を出したり、ウワァ〜っと駆け上がってみたりするが焼け石に水だ。でも、身体は腹をくくっていたのだろう。気力だけで登り続けている。これまで寝ながら走った経験はあるが、寝ながら登っていた経験は初めてかもしれない。
そんな状況下で水井山、横高山と急坂エリアを越えていく。寝ながら進んでいたので時間感覚は完全にバカになっている。どれくらい時間が経ったのだろう。確か水井山の山頂であまりの眠さにベンチに横たわった記憶がある。このまま寝たら凍死するなぁなんて思いながら。
どこやここ…
木に激突して我に帰った。一瞬自分が何をしていたのかさえも分からなくなった。目の前には奇妙な石碑が立ち並んでいる。冷凍庫のように冷たい空気が辺りを覆っている。
「君は死んだのだよ。この先に霊界が待っているのだよ。ほら、急いで。」
なんて言われたら信じたかもしれない。でもすぐにここが延暦寺の参拝道だと分かった。
3/24(日)
1:44(27:42経過)
152.0km地点
ケーブル比叡を通過
寒さと睡魔にやられ何とか辿り着いたという感じ。焼け石に水だと分かっているが自販機で"あったか〜い"お茶を買う。ザックからどら焼きを出して食べ復活を図ってみる。風を避けるように駅舎の柱にもたれるもブルブルと震えが止まらない。よく見るとサバイバルシートがボロボロに破れていた。
ここにおっても埒があかん
とにかく下らんと
意を決して下り始めるが、その後も睡魔に襲われ続ける。怪我しなかったのが不思議でならない。寝ながら下っているのだから、捻挫してたり、崖から落ちていてもおかしくない。確かに危ないシーンは何度かあったものの、無意識に足場を確認していたのだろう、無事に下山することができた。
おはようございます!
まだ4時頃だというのに大文字山へ登る人、上から降りてくる方と出会った。早朝登山を日課にされている方だろうか。ようやく睡魔から解放され始めたのは、大文字山の火床から見える美しい夜景を見た頃からだ。
4:24(30:22経過)
161.6km地点
大文字山を通過
およそ100マイルを進んだことになる。さぁここまで来たという事は、山科へ降りてしまえばあとはラスボスの醍醐山を残すのみ。しかも夜が明ければ暖かくなるし元気も出てくるはず!山科のコンビニでモーニング♪モーニング♪
そんな希望に胸を膨らませながら、京都一周トレイルから山科へ降りるルートへと慎重に進路を変え、山を駆け下りていく。その時だった。
な!!
なにぬねの!!!!!
倒木で前に進めねぇえええ
((((;゚Д゚)))))))
どこやここ…
木に激突して我に帰った。一瞬自分が何をしていたのかさえも分からなくなった。目の前には奇妙な石碑が立ち並んでいる。冷凍庫のように冷たい空気が辺りを覆っている。
「君は死んだのだよ。この先に霊界が待っているのだよ。ほら、急いで。」
なんて言われたら信じたかもしれない。でもすぐにここが延暦寺の参拝道だと分かった。
3/24(日)
1:44(27:42経過)
152.0km地点
ケーブル比叡を通過
寒さと睡魔にやられ何とか辿り着いたという感じ。焼け石に水だと分かっているが自販機で"あったか〜い"お茶を買う。ザックからどら焼きを出して食べ復活を図ってみる。風を避けるように駅舎の柱にもたれるもブルブルと震えが止まらない。よく見るとサバイバルシートがボロボロに破れていた。
ここにおっても埒があかん
とにかく下らんと
意を決して下り始めるが、その後も睡魔に襲われ続ける。怪我しなかったのが不思議でならない。寝ながら下っているのだから、捻挫してたり、崖から落ちていてもおかしくない。確かに危ないシーンは何度かあったものの、無意識に足場を確認していたのだろう、無事に下山することができた。
おはようございます!
まだ4時頃だというのに大文字山へ登る人、上から降りてくる方と出会った。早朝登山を日課にされている方だろうか。ようやく睡魔から解放され始めたのは、大文字山の火床から見える美しい夜景を見た頃からだ。
4:24(30:22経過)
161.6km地点
大文字山を通過
![]() |
大文字山山頂 |
およそ100マイルを進んだことになる。さぁここまで来たという事は、山科へ降りてしまえばあとはラスボスの醍醐山を残すのみ。しかも夜が明ければ暖かくなるし元気も出てくるはず!山科のコンビニでモーニング♪モーニング♪
そんな希望に胸を膨らませながら、京都一周トレイルから山科へ降りるルートへと慎重に進路を変え、山を駆け下りていく。その時だった。
な!!
なにぬねの!!!!!
倒木で前に進めねぇえええ
((((;゚Д゚)))))))
山科へ降りるルートは4つある。と調子に乗って言って見たものの、実はこれまでAルートでしか降りたことがない。というか、Aルートが大文字山と山科(毘沙門堂門跡)を結ぶ一般的ルートであり、沢沿いの気持ちの良く走れるコースだ。
牛尾道を登り、桜の馬場から登山道に入るとぐんぐん標高を上げていく。いつ来てもこの沢沿いの道は気持ちがいい。コース詳細は過去の記事をご覧ください。
![]() |
過去に撮影したもの (A , BCDの分岐点) |
もちろん今回もAルートを選択。しかしながら、倒木で道が塞がれ敢えなく引き返すことに...※Kさんによると頑張れば強行突破できるようですが、真っ暗だったこともあり全くコースどりできませんでした。
仕方なくBコースを選択。結果的には倒木の心配もなく通行できた(整備した痕跡が何箇所もあった)のだが、これが想像以上にキッツいコース!!地形図を見れば分かるが、Aルートと違って沢沿いではなく山中のアップダウンを繰り返しながら降りていく。大文字山からあっという間に降りれると思っていたのでこれはメンタル的にもフィジカル的にもだいぶダメージがあった。※これ、逆(山科→大文字山)からだとどこがBルートの入り口か分かんないと思われます。
▶︎▶︎山科→宇治 FINISH!! 24.5km 4時間30分
《醍醐山、東海自然歩道(仏徳山はカット)経由》
5:38(31:36経過)
166.9km地点
JR山科駅付近を通過
![]() |
JRの踏切を渡る |
早朝から出かける通行人に短パン姿を白い目で見られながら、目当てのコンビニを目指し黙々と走っていく。
ちなみにこれは完走後に分かったことですが、実はKATSUさん(フェニカツさん)が逆走して大文字山に向かっていました。自分がBルートで下山している時にすれ違い(KATSUさんはAルートで登られたらしい)、大文字山登頂後にまた追いかけてきて下さった。が、結局お会いできず。本当に残念だが、KATSUさんもS殿と同様、応援という名のトレーニングだと思われるので、まぁよしとしましょう(笑)この時の模様は→→KATSUさんのブログにまとめられています。
![]() |
醍醐山方面を望む |
色々と悩んだ挙句、コンビニでカレーパン、焼きそばパンを購入しラスボスの醍醐山を目指す。
おはようございます!
やっぱり挨拶は気持ちがいい。おそらく短パン姿を見てだと思われるが「元気やなぁ」と声をかけてもらう。「若いってええなぁ」と言われたので「お父さんには負けますわぁ」と返すと自然と笑いが起こる。
![]() |
濃縮された"旅"がそこにはある |
7:32(33:30経過)
175.5km地点
醍醐山を通過
![]() |
相変わらず誰もいない山頂 |
山頂からは荒れた道が続く。ここは初めて来たら絶対道が分からなくなる。自分はここを何度も走っているので大丈....あれ?ここどこや??笑
無事に下山すると東海自然歩道(ロード)で宇治を目指す。ゴールとなる温泉まではおよそ15kmほどか。年末年始のSTMではここから更に供水峠、天下峰、高峰山の山道を通ったが、今回は予定通りロードで宇治を目指す。それにしてもSTMオリジナルのコース設定は我ながら過酷極まりない。
日もすっかり昇り、昨晩の地獄のような冷え込みは何処へやら。暖かくなってきたので足が快調に動くかと思いきや...全く動かない!!完全に足が終わっているのか、トボトボと情けない走りしかできない。しまいには歩いてしまう。超ロングトレイルをする弱さが最後の最後で露呈してしまった。
![]() |
宇治橋からの景色 |
36時間が切れるかもしれん!!
ここから温泉までの距離は5キロもなかったはず(実際は4キロちょっと)。キロ6を切れれば36時間ギリできる!そう思うと急に元気が出てきた。身体にあるエネルギーを全て使い切るかのようにエンジンフル稼働。しかし、緩やかな登りに加え、信号多発区間。時計とにらめっこしながら黙々と足を動かす。残り15分。残り10分...
非情にもどんどん時間が過ぎていく。あぁダメか。いや、いけるぞ!
残り2分...
赤信号。
あぁ
アカ〜〜〜〜ン
。゚(゚´Д`゚)゚。
さっきまでのパワーは何処へやら。ワナワナと力が抜けていった。まぁいい。お前はよくやった。そう言い聞かせながらトボトボとゴールを目指した。
そして...
そして...
STU120マイルゴール!— ひゃっほい太郎 (@hyahhoirunning) 2019年3月24日
長時間に渡って応援ありがとうございました!もうヘロヘロのペロペロっすわ😱
充電ヤバイのでまた落ち着いたらコメントかえしたいと思います! pic.twitter.com/0RDfbHmX3d
FINISH!!
STU120マイル
<須磨浦公園 to 宇治>
距離 191.4km
累積上昇高度 9780m (累積標高)
累積下降高度 9767m
タイム 36時間06分12秒
【あとがき】
ここまで読んで頂きありがとうございます。当初は100マイル以上のトレイルなんてほんまに完走できんかいなとビビっておりましたが、やってしまえば何とかなるもんですね(笑)比叡山以降の落ち込みがなければもう少し早くたどり着けたようにも思いますが、疲労と寒さのピークを乗り越える力がまだまだ不足しているように思います。
また、何となくですがゴールした時に「もう限界!もう無理!」という感覚は不思議なことにありませんでした。まだまだいけるかも(笑)その証拠に幻覚や幻聴は起こりませんでしたから(笑)
寝ないで走れる距離をどこまで延ばせるか。
そして自分の身体がどうなって、そこにはどんな世界が待っているのか。これが当面の課題となりそうです。
STU120マイル
全5編
完
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