2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

長崎橘湾岸スーパーマラニック273 2017〈W部門〉〜レースレポート③〜

長崎橘湾岸スーパーマラニック273 2017〈W部門〉〜レースレポート③〜


〜結果報告〜
〜大会概要〜
〜まえがき〜
〜レースレポート①〜
〜レースレポート②〜
からの続きです

レースレポート③では樺島(83.6k)〜日見公園(130k)までの様子をお届けします。



7:50 (07:50経過)
avg.5'36/km
83.8km地点
樺島公民館エイドを通過

名物!樺島カレー!

あれだけ楽しみにしていながら実際にカレーを目の当たりにすると食指は動かなかった。決して美味しそうに見えなかった訳ではない。気持ちとは裏腹に疲労は着実に蓄積されていた。でも長いレースだ。絶対にここで食べておく必要がある。おばちゃんに量を減らしてもらって口に入れる。美味い!コッテリとしていて甘みが強めだ。刺身があったので醤油を垂らして頂く。何の魚か聞き忘れたがこちらも非常に美味だ。


お礼を言ってエイドを出る。今日は祝日のためか港は閑散としている。肌寒さは感じない。穏やかな海に向かって列をなしている釣り人たちを横目に樺島大橋を渡っていく。

脇岬町の丁字路までは折り返し区間になっている。ちょうど丁字路手前で1人のランナーが前から走ってきた。O田さんだ!無駄な上下運動がなく路面に吸いつくような走りだ。お疲れ様です!すれ違いざまに声をかけ合う。まだまだ元気そうだ。ざっと計算するとおそらく10kmくらいの差があるものの潰れればあっという間に追いつかれてしまうだろう。N村さんの位置も気になったが今はマイペースを維持することが重要だ。邪念を振り払うかのように頭を左右に振った。


折り返し区間を過ぎると橘湾沿いの34号線をひたすら走る。ここのアップダウンは高低差図では分からないキツさがある。登っては下り、また登っては下る。まさに龍がうねるようだ。

いくら調子が良いとは言えここの登りはさすがに堪える。無理する場所ではないがなぜかペースを落としてはいけないような気がした。超ウルトラではリズムが大切なような気がする。もちろん飛ばし過ぎるのはダメだが、調子が良い時にペースを落としすぎるのもリズムが崩れて良くないように思う。次のエイドを目指してリズム良く進んでいく。目の前の登り坂から意識を遠ざけるため何かを考えながら走ったが今となっては何を考えていたのか全く思い出せない。


9:21 (09:21経過)
avg.5'42/km
98.4km地点
川原老人の家エイドを通過


シューズを脱いで部屋に入るとお姉さま方に水餃子を出してもらう。ポン酢をかけて食べる。冷えたチャーハンもあるよ!と勧められるも遠慮する。通過タイム表を見ると20時スタートのランナーとは1時間30分くらいに差が縮まっているようだ。さぁ次は茂木ぶらエイドだ。約17kmほど。もちろん細かなアップダウンを乗り越えていかねばならない。気合いを入れ直して出発した。


暑い。ぐんぐん気温が上がっている。直射日光をもろに浴びると体感的に30度近くあるんじゃないかと思えるほどだ。ただ不思議なもので暑くなればなるほど楽しくなる。個人的には寒いより暑い方が圧倒的に好きだ。寒さに身を震わせるより汗を拭う方が良い。

エイドまであと5kmくらいというところで前を行くランナーに追いついた。足を痛めているのか身体を傾けるように歩いている。大丈夫ですか?と顔を覗き込むように声をかける。

年齢的に最後のチャンスだったけどやっぱり無理だったかな。
茂木で辞めるつもりだよ。

Yさん。失礼ながらご年齢をお聞きすると77歳。思わず一緒に並んで歩く。聞くと昔はウルトラの速いランナーだったらしい。後日個人的に調べてみると有名な方のようだ。57歳でフルを2時間45分で走り、75歳でも灼熱の北海道マラソンでサブ3.5を達成しているとんでもないランナーだった。77歳にして276kmという距離に挑戦する姿に深く感銘を受けた。

オレもあぁなりたい

Yさんと別れると時間感覚がおかしくなった。今の時刻がという意味ではない。説明するのが難しいが、Yさんが走ってきた数十年と、Yさんから比べれば人生経験もラン暦も圧倒的に浅い自分とが、時間という概念を超越してクロスしたような気がした。こんな風に考えるのは大げさかもしれない。でもあの時思わず足を止めて会話したのには何かしら宿命的な理由があったと勝手に思っている。


11:03 (11:03経過)
avg.5'44/km
115.6km地点
茂木ぶらぶらエイドCPを通過

3名のランナーを追い抜いてエイドに到着。ここはドロップ地点でデポしていた荷物を受け取ることができる。ジェル等を預けていたのですぐにザックに補充する。エイドの方に角煮麺を作ってもらったが脂っこさがどうしても受けつけず少ししか食べられなかった。身体や足は元気なのに胃腸には着実に疲労が蓄積されていたのだろう。

16時スタートのランナーと話していると次の関門が間に合わないからここで辞めるとのこと。それぞれに葛藤があり戦っている姿を見ると彼の分まで頑張らなくては!という気持ちが湧き起こってきた。預けていた缶コーヒーを飲み干すとお礼を言って出発した。


次のエイドまで約15km。相変わらずアップダウンのあるコースだ。茂木の市街地は何やら人で溢れている。何かのイベントなのだろうか。いつも閑散としている光景しか見たことがなかったので不思議な感じだ。接触しないように一時的にペースを落とす。

市街地を抜けると登り坂が待ち受けている。さすがに歩きたい衝動に駆られたがサポートカーから追い抜きざまに「ファイトォ!」と声をかけられる。歩くわけにはいかない。不思議なもので登り坂でも淡々と走っていると突然苦じゃなくなる瞬間がある。

暑さはランナー全員に容赦なく襲い始めていた。数人のランナーを追い抜いたが皆かなり辛そうな様子。声をかけても声にならない返事しか返ってこない。長い登りが連続する。登りきれば下りがあると分かっていてもここの連続する登りは120km近く走ってきた足ではどうしようもない。

「頑張ってくださぁい!!」

登り坂の途中で女性の方が声援を送ってくれたのを覚えている。スタート後初めての声援だ。超ウルトラではたったひとりの声援が何十人の声援よりも力になるから不思議なもんだ。

下りになると自然とペースアップ。もちろん足を使わないように気をつける。海の向こうにはこれから走ることになる橘湾がカーブを描くように綺麗に見える。ポツポツと現れるランナーの背中を目標にして走っているとランナーで賑わう日見公園エイドが現れた。

12:32 (12:32経過)
avg.5'47/km
130km地点
日見公園エイドを通過



残り146km


レースレポート④へつづく




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