2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

長崎橘湾岸スーパーマラニック273 2017〈W部門〉〜レースレポート①〜

長崎橘湾岸スーパーマラニック273 2017〈W部門〉〜レースレポート①〜


〜結果報告〜
〜大会概要〜
〜まえがき〜
からの続きです


当大会はステージレースではないですが、中間地点にてリスタート時間が定められているため、便宜的に前半の173kmを1stステージ、後半の103kmを2ndステージとして表記しています。もちろん中間地点での模様もお届けするつもりです。


▶︎▶︎1stステージ 173.3km 17時間26分30秒 avg.6'02/km
《水辺の森公園〜稲佐山〜女神大橋〜権現山〜樺島灯台〜茂木〜日見公園〜飯盛峠〜唐比温泉〜千々石〜小浜温泉》


ホテルをチェックアウトすると若いベルボーイに「本当にいいんですか?」と怪訝な顔つきで言われた。重い荷物を背負いながらスタート会場の水辺の森公園に到着すると数名のボラの方に出迎えられた。その中にはフッキーやレース中至る所で助けられることになるアカネさんがいる。そして、W部門のコースレコードを持つKIZENさん(今回もフルボラで参加)、主催者の阿部さんともがっちり握手。

現在午前0時前。当大会は走力別にスタート時刻が異なるため、すでに10時、13時、16時、18時、20時の選手はスタートしている。午前0時スタートは最後尾からのスタートだ。以前の記事でも書いたがコースレコードを狙うにはこの時間からスタートするしかない。ちなみに同時刻のスタートは3名。O田さんN村さん、オレの3名だ。

photo by フッキー

間も無く日付が変わろうとしている。たった3名のスタート。なんとも形容しがたいがこういう空気感は大好きだ。普通の大会ではまず味わうことはできない。改めて自分が超ウルトラに魅せられるひとコマを発見した気がした。とはいえ、ボラやスタッフの方が最大限の声援を送ってくれている。ひとりひとりの顔や表情がよく見えた。

そして、自身最長距離となる276kmの旅へのカウントダウンが始まった。




11/3
0:00 (00:00経過)
0km地点
水辺の森公園をスタート

稲佐山山頂を望む

ゆっくりとしたスタート。少しひんやりした風があるものの内側から発する熱のせいか寒さは感じない。むしろ首に巻いていたBUFFを取ったぐらいだ。ノースリーブに短パン。これ以上薄着にはなれない。完全に真夏の格好だ。ともにスタートした3名の方としばらく会話しながら走る。


O田さんは2年前にWを完走済み。さくら道を3度完走していたり、今年のみちのく津軽250Kでは31時間台で優勝されている凄い方だ。KIZENさん同様スピードよりも粘り強い走りを得意とされているように見受けられた。後半ちんたら走っているとあっという間に追いつかれてしまうだろう。

N村さんは当ブログの以前の記事でもコメントを頂けたNo121さん。もともと22時スタート(1名)の予定だったがコースアウトを懸念して人数のいる0時に変更された。フルを2:50で走っていたり、全国各地様々なレースに出られている。今回はさくら道の出場権を賭けて必ず完走すると仰っていたのが印象的だ。

おしゃべりをしているとあっという間に稲佐山の登りへと入っていく。稲佐山の標高は333m。4km近くでこれだけの標高を稼ぐわけだから如何に勾配がキツいかお分かり頂けるだろう。いきなり心拍を上げ過ぎないよう気をつけるが登り坂になるとどうしてもスイッチが入ってしまう。自然と前に出る形になりそのまま後続との差を広げていく。額から汗がじわりと出てきてすうっと頬を伝う。身体は軽く、調子の良さを手に取るように感じた。


0:42 (00:42経過)
avg.6'00/km
7km地点
稲佐山山頂CPを通過

展望台への階段をぐるぐる登っていく。カップルであろう2人組が驚いたようにこちらを注視するのがわかる。そりゃそうだ。こんな深夜にヘッドライトを点けた得体の知れないランナーがドタドタと突然現れた訳だから。こちらはそれをよそ目にチェックポイントを探す。あった!チェックシートにパンチする。振り返ると思わず息を飲んだ。そこには長崎の夜景が広がっていた。ダイヤモンドを散りばめたように辺り一面がキラキラと輝いている(実際にダイヤモンドを散りばめたことなんてあるはずもないが)。

日本三大夜景の一つ

パンチするチェックシート

写真に収めるとすぐに階段を駆け下りる。後続の2名はまだ来ていないようだ。最後尾スタートのランナーのためにサポートカーを出してくれているボラの土井さんに軽く会釈するとそのまま稲佐山を一気に駆け下りた。

しばらく降ると住宅街に入る。ここは少しややこしい。春のL部門時には白線の矢印書かれているがW開催時はある程度自力で探すことが求められる(赤テープや看板はあった)。スマホの地図アプリで何度も現在地を確認しながら進んでいく。




ある程度行くと見覚えのある道に出たのでtwitterを更新。道中何度か更新するつもりだったが結局スタートとゴールしか更新する余裕は生まれなかった。

深夜のR206

国道206号線へ出ると路面電車の駅を伝いながら北上していく。知っている道に出ると驚くほど走りやすくなる。相変わらず身体は軽い。体感的にはキロ5ちょいくらいだろうか。少しペースを落とそうか迷ったがそのままのペースで行くことにした。

坂を登り大井手川沿いに左折する。コンビニを見つけると今年の春にもここを走ったことを思い出した。まさか1年に2度もこの173km区間を走ることになろうとは。思わずニヤニヤ。確かあの時はあまりの暑さでここのコンビニで水を買って頭からぶっかけたっけ。それに比べたら走るのにちょうどいい気候。水だって100mlも消費していない。そんなことを考えているとあぐりの丘へ向かう登り坂に足を踏み入れていた。

「あぐりの丘まで4km」という看板

あぐりの丘は稲佐山ほどの急勾配はないもののじわじわとした登りが続く。少し歩きたいような衝動に駆られたが、ここで歩いてしまうとちょっとした登りでも歩き癖がついてしまいそうなので我慢する。トンネルを越え、真っ暗な橋を渡る。なにぃ?!追いつかれたか?!背後にバタバタという足音が聞こえた気がして振り返る。もちろん誰もいない。ザックに取り付けていたお守りが音を立てていただけだった。

ラムネつき♪

このお守りはこっちゃん(九州爆走女。スパルタスロン完走など超ウルトラ界では有名な女性ランナー)がスタート前にランナーに配っていたもの。もちろん彼女もWを走る予定だったが故障によりあえなくDNS。それでもフルボラで大会を支えてくれた。考えてみてほしい。これだけの長丁場の大会でのフルボラ。どれだけの時間起きていることになるのか。ある意味ランナーよりも過酷かもしれない。

こっちゃん以外にも何らかの理由により急遽走れなくなった方もおられるに違いない。彼らの分まで絶対に完走して金龍ランナーにならなくては。そう改めて誓うとあぐりの丘への最後のトンネルが大きく口を開いて現れた。



2:16 (02:16経過)
avg.5'09/km
25.5km地点
あぐりの丘エイドCPを通過

エイドには深夜にも関わらず数人の方が準備して待っていてくれた。味噌汁を頂く。具沢山。あちっ。うまいが超熱い。旨そうなおにぎりが並んでいたがまだ序盤なので我慢する。阿部さんの奥様手作りのキュウリの漬けものに手を伸ばす。酸味とほのかな甘みが身体に染みる。水を補給するとお礼を言ってすぐに出発した。


あぐりの丘から式見漁港まで2通りの下り方がある。春のコースでは左折するところをW部門では右折してもよいと公式に発表されていたので右折する。このコースの方が2kmほど短くなるそうだ。初めてのコースだったので不安だったが何のことはない。道なりに下っていけば問題なかった。それに案内の看板もあったので初見でも大丈夫だろう。


式見漁港に出ると海沿いの国道202号線を走る。ここから福田という港町までひたすら道なりに行けばよいから安心だ。全くの独りというのは少々心細いが"これぞ橘湾"という気分になって妙に楽しい。頭上にはヘッドライトが必要ないほどの月明かりが行く手を照らし続けてくれた。

月光(ぶれぶれ)

トンネルを抜け小江小浦という町を通過する。快調だ。いや、快調すぎる。どうもおかしい。呼吸や心拍は家で寝っ転がりながらテレビを見てる時と同じくらいなんじゃね?と思えるほど一定だ。乱れみたいなものを一切感じない。自分に問うてみる。


おい、ひゃっほい。
貴様は今から276kmも走ろうとしてるんだぞ。
それなのになんだこれは。
いつもと同じペースで走っとるではないか。
大丈夫なんだろうね?


.....

返答はない。恐らく逆に今このペースを落とす方が危険だと察知していたのだろう。これについては全てが終わった今となってもこのペースで特に問題なかったと思っている。それくらい身体は軽く、すこぶる調子が良かったのだ。体感的にはキロ5'30くらいで巡航しているイメージだったが実際にはキロ5を切るようなペースで走っていた(いや、やはり早過ぎたな)。


福田へと抜けるダラダラとした長い登り坂が始まる。橘湾マラニックの特徴としてこういった海沿いのアップダウンが至る所にある。そのほとんどがこれらの連続だと言っても過言ではない。これらは高低差図には現れないため実際に走ってみるとかなり苦しめられることになる。特に後半はそれが顕著だ。


春の大会なら無人エイドのある墓地(大きなスタチューがある)を過ぎるとようやく下り坂が始まる。足を使い過ぎないよう気をつける。できるかぎり小股で回転数を上げて。コンビニやその他の商業施設が入った大きな複合施設を通過する。途中でボラの土井さんが運転するサポートカーが物凄い勢いで追い抜いていったのを覚えている。狭い歩道を淡々と進んでいると右折を促す看板が見えた。

ここからは女神大橋へと向かうのだが少し注意が必要だ。長いトンネルを抜け、地下道を伝って反対側の道へ出るとそこから左手に伸びる登り坂を進めばよい。そのまま道なりに行くと『女神大橋 歩道』という看板があるのでその指示通りに右手の脇道へと入っていけばよい。間違っても女神大橋道路の料金所へ突撃してはいけない(自動車専用道路だ)。

女神大橋
そういえば散歩している人と数名出会ったな

時計を見ると3時間50分くらい。女神大橋のエイドが45km地点ということを考えるとハイペースであることは否めない。確か今年の春(L部門)を走った時はここに4時間で到着している。それでも速過ぎて後半大失速したことを考えると今のこのペースははっきり言って自殺もんだ。もちろん276km走るうえで確実にオーバーペースであることは理解していたが、なぜかこの時それでも大丈夫!という全く根拠のない自信があった。それに、どこまで通用するのかという気持ちが勝っていたように思う。


冷静に無茶する選択肢を選んだ


これが適切な表現だと思う。身体の内部に耳をすましてみても、天気のよい海辺でコトコトと船体同士が音を立てているような静けさしか聞こえてこない。女神大橋からエイドが見下ろせるのだが、ボラの土井さんがせっせと準備されている姿が見てとれた。もうすぐだ。最近完成したばかりであろう真新しいコンクリートで固められた人工物の上を淡々と走り抜けた。



3:52 (03:52経過)
avg.5'09/km
45km地点
女神大橋エイドを通過



残り231km

ここまでです!

おいおい、まだこんなとこかよ。全部読むのしんどいわ。という読者の声が聞こえてきそうです(^^;; 初期のドラゴンボール並の遅さで進みそうな感じは否めないですがご安心ください!後半になればなるほど記憶が曖昧になっているので意外と呆気なく終わるかもしれません。もちろんダラダラ続く可能性もありますけど( ´ ▽ ` )


レースレポート②へつづく




コメント

№121(HNたけはは) さんのコメント…
稲佐山で飛ばしていく後姿を見てO田さんと2人でちょっとあきれていましたが、素晴らしい突っ込みでしたね。長丁場のレース中お話できなくて残念でした。僕の完走記は一気に書き上げていますjognoteでよかったら。今晩は終電で行って始発で帰るランナーとハンドラーの応援に神宮外苑に行くつもりです。
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
たけははさんコメありがとうございます!
稲佐山の登りは完全に悪癖です(笑)ジョグノート拝見しました。面白くて一気に読んじゃいました。後半戦は結構壮絶でしたね。しかしそれでもあきらめない執念に感動させられました。O田さんは今回残念でしたが調子がよければ後半の103kmで抜かれていたかもしれません(^^;;

神宮応援に来られてたんですね。お会いできず残念でした涙