2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第7回 小江戸大江戸200K 2017 その④ 〜小江戸・前編〜

第7回 小江戸大江戸200K 2017 その④ 〜小江戸・前編〜


その① 〜準備編〜
その② 〜結果報告〜
その③ 〜大会概要とまえがき〜
からのつづきです。

※当記事は小江戸大江戸200Kの種目について書いています


【レースレポート】


何度つまづいて転びそうになっただろうか。衝撃で足の指先から痛みがじわじわと広がってくる。それでも睡魔は背後から離れようとはしてくれない。すでにスタートから21時間以上が経過している。夢と現実の境目が分からなくなってきた。走っているのか歩いているのか。いや、そもそも進んでいるのか。こんなんじゃだめだ。もっとしっかり走れるはずだろ。そう問いかけるが身体は金切り声の悲鳴をあげるどころかもう何も発してくれない。バイパス沿いを猛スピードで走り去る車のヘッドライトがまぶしくて視界が涙で滲んだ。あともう少し。あともう少し。そう呟きながら淡く青みがかり始めた暗闇に向かって足を動かし続けた。



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▶︎▶︎小江戸編
《蓮馨寺(0)〜吉見AS(21.2)〜手島AS(32.7)〜浄恩寺AS(51.8)〜唐子AS(72.0)〜蓮馨寺(91.3)》






清々しい気候で風も弱く絶好のラン日和だ。スタート会場となる蓮馨寺は色とりどりのランナーで溢れかえっている。皆に共通して言えることは誰一人として険しい顔をした人がいないことだ。まるでこれから卒業旅行にでも出かける高校生のような顔つきをしている。もちろん行き先はディズニーランドでも沖縄でもハワイでもない。行き先はこの場所。ただ埼玉・東京をぐるっと周り、走って戻って来なければならない。その距離は204km。

小江戸大江戸
左から横田兄貴、ヒマ兄、ミフィオ、
オレ、O田さん、いつホノっち
※photo by 横田兄貴


8:00 (00:00経過)
0km地点
蓮馨寺をスタート

ラン仲間とエールを交わしたりくだらない話をしているといつの間にやらスタート時刻を迎えていた。何の緊張感もないままスタートゲートをくぐった事を覚えている。

さぁ楽しい(?)旅の始まりだ!


川越の古い町並みをランナーが隊列を組んで走っていく。おっと。いきなり信号だ。うまく信号を渡れた集団は見えなくなった。ここでこの大会をご存じない方に説明しておかなければならない。この小江戸大江戸はよくあるマラソン大会などのような交通規制などは一切ない。またコース誘導もなく、事前に配布されたコースマップを基に自分で地図読みをしながらコースアウトしないよう走る必要がある。また違反が無いよう5ヶ所あるチェックポイントで目標物を写真に収めなければならないのもこの大会の大きな特徴だ。この地図読みに関しては精神的にも相当疲労する要因になった。特に肉体的にも疲労が溜まり始めた後半の大江戸コースで大苦戦することになる。

でもそれはまだまだ先の話。今は前を走るランナーが数名いるので彼らについて行けば良い。それに要所要所には矢印の看板が出ていたり路面に矢印が書かれている。なーんや。地図読みする必要なんてなかったやん。よかったー(実際はそんなことは無い)。それにしても皆速い!キロ5ペース。ここで衝撃の光景が目に飛び込んで来た。

裸足ランナー!!

彼は裸足界では有名なランナーらしい。ハセツネを裸足で走り抜けたという逸話があるほどだ。このまま200kmを裸足で走り続けるのだろうか。平成の森公園まで彼の背中(いや、裸足)を追い続けた。

14km過ぎ。荒川土手に上がると上流に向かって荒川自転車道を進む。途中比企自転車道との分岐があるがここは右に進路を変えて荒川自転車道を進まなければならない(誘導がないので要注意)。それにしても心地よい天気だ。暑くもなく寒くもない。しかも懸念していた土手沿いの向かい風はほとんどない。時計をみる。平均キロ4'50?!


速すぎるかな?
ま、いっか。

さくら堤公園付近

9:43 (01:43経過)
21.2km地点
avg.4'49/km
吉見総合運動公園ASを通過

「調子どうですか?」

エイドの食べ物を物色していると話しかけてくれる女性の方が。

あ!青谷さん!!

スパルタスロン完走や24時間走の世界選手権日本代表という輝かしい実績をもつ青谷瑞紀選手が目の前にいた。彼女がマラソンを始めたきっかけはこの小江戸大江戸200Kである。そのエピソードを事前に大会HPにある手記(→コチラ)で読んでいたのでこうしてお会いできたことに心底驚いた。

青谷さん「昨年1位の飯野さんと同じペースですね〜♪」

オレ「やばい!速すぎますね!!(^◇^;)」

青谷さん「塩分をしっかりとりましょうね!」

オレ「はい!(照) 」 ←なに照れてんねん笑

3名くらいが入ってきたと同時にエイドを出発した。青谷さんの指示通り梅干しを2,3個持って(照)。 ←だからなに照れとんねん笑  


玉作水門をぐるっと回る

その後は次の手島ASへ向けてひたすら土手沿いを走る。先ほどの吉見ASで追いつかれた年上ランナーとの距離はどんどん開いて行く。速いなぁ。やっぱ凄い人がいるんだなぁ。と思ったがそれも当然。あとで分かったことだが彼は昨年200Kで1位の渋谷さんだった。そのタイムはなんと21時間台。



10:43 (02:43経過)
32.7km地点
avg.4'57/km
手島集会所ASを通過


4番目ですよ〜!!
(200K部門では3番目)

え?マジ?!そんなに抜いた覚えはなかったがいつの間にか先頭グループに属していた。とはいえ全く疲労感を感じていない。先日のアワイチではキロ6を保つだけで必死だったのが嘘みたいだ。焦らず青谷さんの指示通り塩分補給のためお味噌汁とたくわんを頂く。ちょうどいなり寿司が届いたようなので2個手に掴んで出発した。走りながら口に放り込むと油揚げに染み込んだ甘みと酢飯の酸味が口いっぱいに広がり、それらが周りの田園風景と相まって気持ちを落ち着かせてくれた。


一旦国道に出るとすぐに土手道へ入って行く。一直線の道だ。あまりにも景色が変わらないので自分のペースがどれくらいなのか分からなくなった。


「3分45秒です!頑張って下さい!」

40km付近だっただろうか。鹿島古墳へ向かう田舎道で私設エイドを開いてくれる男性の方が前のランナーとの差を伝えてくれた。団子とブラックサンダーを頂きお礼を言って後にした。この辺りは道が入り組んでいたので心配していたが、曲がり角では必ず矢印の案内が出ていたのでストレスなく走ることができた。


「前のランナーとの差は5分!さらに前のランナーとは10分差です!」

しばらく行くと女性の方も応援してくれた。さきほどの男性の方と比べるとかなりアバウトだがこうして声をかけてくれるのは非常に嬉しい。お礼を言って砂利道を進み続けた。

フルを通過したのが3時間37分くらい。自分でも驚くほど疲労感を感じていなかった。あとフルを4回走るだけかぁ。すでに1/5を走り終えたと思うと200kmという数字が一気に近づいたような気がした。もちろんこの時は最後に地獄が待っているとは夢にも思っていない。いや、本当はこのペースが最後まで持つはずがなくいつかは地獄がやってくることを見て見ぬふりしていたのだと思うが。

そんな事を考えていると前方に歩いては走ってを繰り返すランナーの後ろ姿が見えた。戦略的歩行なのだろうか。走っている時はしっかりした足取りなのでトラブルや何かしらのアクシデントではなさそうだ。

「暑いですね!」

そんな会話をして追い抜いたように思う。この時はまだ知らなかったがこの方があの渋谷さんだった。後で聞いた話ではこの時は足が終わっていたらしい。一旦は後退するものの結果的には抜かれることになる。渋谷さんの話はまた大江戸編でしよう。

「3番ですね!頑張って下さい!」

歩道脇で私設エイドを開いてくれている女性の方が声をかけてくれた。スポーツドリンクと塩飴をもらった。甘しょっぱいあの味を今でも思い出すことができる。お礼を言って出発した。

玉淀大橋を渡る
(口の中に飴玉入ってます)


12:24 (04:24)経過
51.8km地点
avg.5'05/km
浄恩寺ASを通過

あ!青谷さん!ここでもお会いすることができた。あと150km走らなければならないのにハイペースで来てしまっていること、天候が良くて走りやすいことを少しだけ会話したように思う。まさかこうして2度も話す機会があるとは思っていなかったので純粋に嬉しかった。先に到着していたサングラスのランナーにここで追いついた。飲み物を補給するとすぐに出発した。

この時点で全体の2番手。順位を意識するようなったのはここから。まだ50kmやそこらで順位を意識するなど今思えば噴飯ものだが正直に書こうと思う。今のところ大きなアクシデントや疲労はない。このペースを刻めれば1番手にも追いつけるかもしれない。無理はしないがこのペースを守っていけるところまでいこう。ひょっとしたら...

しかし先行するランナーの姿は一向に見えない。何て速さなんだ。これじゃあ20時間どころか19時間を切るようなペースだ。マイペースを刻もうと心がける反面なぜか少しでも追いつきたいという競争心が芽生えてしまっていた。

国道254号線を南下し続ける。相変わらず信号待ちや歩道橋という障害物が現れるものの一直線なので地図読みのストレスからは解放されて走ることに集中することができた。その時だった。


??!!

うう...


はうあっっ!!


ここまでです(笑)
次回は小江戸・後編をお届けする予定です!
乞うご期待♪

その⑤へつづく






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