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第1回 沖縄100Kウルトラマラソン 2016 その④ 〜レースレポート 後編〜
からの続きです。
《前編のあらすじ》
サブ8.5を目指し順調なスタートを切る。キロ4'40ペースで刻み続けるも、40km手前でロスト。すぐにコース復帰するが、分岐に表示が無くまたもやロスト。3人のランナーとともにスタッフに指示された道を行くと、なんと元来た道へ戻ってきてしまった!サブ8を目指していたランナーの1人は怒り心頭でレースを辞めてしまう。自分もレースに集中できないことで焦り始めた時だった…。いよいよレース後半戦へ!
【レースレポート 後編】
若いのに冷静ですね〜!
共にロストしたもう一人のランナー(以降Kさん)にこう言われた。Kさんは100kmを8時間で走る40代のウルトラランナー。UTMFなどの100マイルレースやトレイルレースにも数多く出ている猛者だ。
沖縄まで来て105kmも走れるなんてお得じゃないですか!
こう言うKさんの表情はとても明るい。これほどのトラブルに見舞われたにも関わらずどこ吹く風といった感じだ。いや、むしろこの状況を楽しんでいるようにも感じた。塩を吹き始めた顔に太陽の光が反射し眩しかった。
今考えてみると、ロストしてしまうことはトレイルレースなどではよくあることなので、苛立ったりレースを放棄してしまうという感情は生まれなかったのだと思う。だからKさんの目には自分が他のランナーと比べ冷静に映ったのかもしれない。でも内心では、焦りが生まれ、目標のサブ8.5なんて無理だろうなぁとレースを半ば諦めかけていたのは事実だ。そんな時にKさんの口から出た何気ない会話の中に含まれるポジティブな言葉の数々が胸に突き刺さった。
あぁ、そうだった!
オレの目標はサブ8.5だけじゃなかった!
限界ギリギリまで追い込んだ時に最後まで楽しめるかどうか
これだ!
まさに今がその時!!
結果的にはこのドタバタ劇で20分ほどのタイムロスをしたんじゃないかと思う。あの時ひとりだったらレースを立て直せただろうか。分からない。でもKさんとのポジティブな会話が自分をもう一度レースに引き戻させたことは間違いない。誘導のミスについては、確かに運営側にも否があっただろう。ただ、如何なるトラブルにも対処できる力もウルトラランナーに求められる資質だろう。正規ルートへ復帰すると、ちょうど中間地点にあたる糸満市役所(50km地点)までは少しでも遅れを取り戻すべくKさんと協力し合いながらスピードを上げた。
50km地点の糸満市役所
(google mapより)
糸満市役所に到着した時点で6位。もっと順位を落としているかと思っていたので正直驚いた。レース後分かったことだが、自分の前を走っていたランナー数名も同じようにロストしていたようだ。ドロップしていたジェルを急いで補給し、ハンガーノックにならないようエイドで2個のおにぎりを胃に流し込んで再出発した。
あと半分!頑張らんかい!!
スピードを上げランナーを2人抜いて前から4番手になった。ここからは何を原動力に走っていたんだろう。タイムのこと、順位のこと・・・。もちろんロストしたとはいえ予想以上に前にいたことはヤル気に火をつけてくれた。タイムのことも頭の中にあった。でもそれだけじゃない。気温がぐんぐん上がり疲労が身体に現れ始めるもどこかに「まだまだイケる!」という感覚があった。
糸満市役所からは折り返しになるのでたくさんのランナーと声を掛け合うことができる。笑顔で走るランナー。拍手を送ってくれるランナー。下を向き一歩一歩に集中するランナー。顔も名前も知らないが、同じゴールに向かって走るという一体感を強く感じた。
ファイトっ!
頑張りましょう!!
ナイスラン!!
まだまだイケる!!
励ますつもりでできる限り声をかけたが全ては自分に向けた言葉だったのだろう。とにかくやれるところまでやろう。それでダメなら仕方ない。でももしかしたら?!
きょろねーさん・いっちーさんと出会い
60km → 80km
1時間50分22秒 avg.5'31/km
60km地点通過が4時間58分1秒。ロストしたとはいえ正規ルートに戻ってからスピードをかなり上げたおかげで被害を最小限にとどめられた。平均キロ5を切るペースだ。今まで60kmをこのペースで走ってきたことは一度もない。ここから未知の領域へ入ることになる。身体がどうなるのか分からないが可能性を考えるとワクワクした。Kさんの明るい表情が前方を照らし続けている。まだイケる!
でも100kmは長い。
やはりロスト後の無理なペースアップが祟ったのか、明らかにスピードが落ちてくるのを実感した。滑らかに回転していた歯車がギシギシと音を立て、呼吸が浅くなり始めている。気温が上がり続け、エイドで給水する回数も多くなった。ハンガーノックだけは恐いのでジェルを定期的に摂取し、エイドではオニギリやバナナを何度も無理矢理口に放り込んだ。そんな時助けられたのは子供たちの声援や笑顔。どこのエイドに寄っても小学生から高校生までの地元の子供たちがとびっきりの笑顔で声援を送ってくれた。
70kmを通過すると「残り30kmやろ!」と何度も自分に言い聞かすが、身体は正直で、わずかな登り坂でも歩きたい欲求に駆られてしまう。それでも前方にランナーの姿がちらちらと見え始めた。彼を目標に走っていると、後ろからぐんぐんと迫ってくるランナーの気配を感じる。走りが全く違うのですぐに捕まってしまった。彼(以降Iさん)も途中でロストし大幅にタイムロスをしてしまったらしい。追い越されたIさんについて行こうとペースを上げるがもちろんすぐに置いて行かれてしまった。ここで5番手に順位を落とした。(フィニッシュ後に分かったことだがIさんは今年の村岡100kmで優勝している凄いランナーだ。)
その後すぐに、先ほど前に見えたランナーを抜いてまた4番手に戻る。
島特有の天候の変化について。日が出ているとかなり暑い。沖縄の冬は空気が乾燥しているのか、想像以上に身体から水分が抜けていたように思う。レース後ここまで体中塩だらけになっていたのは初めてではないだろうか。塩熱サプリがかなり役立った。しかし、いったん日陰になると一気に体感温度が下がる。おまけに強風が吹いていたので尚更だ。また、青空が出ているにも関わらず時折パラパラパラと雨が降った。
80km → FINISH(100km)
1時間44分18秒 avg.5'12/km
タイム計測する80kmの青いマットを踏んだのが6時間48分23秒。残り20kmをキロ5分(1時間40分)で走ればサブ8.5が達成できると計算したのを覚えている。
すでにキロ6までスピードが落ちているというのに
キロ5だと?!
でもここで切り替えなきゃ絶対に目標には届かない。それにこの調子で走り続ければ確実にペースがどんどん落ちていくだろう。ここまできたら体力も走力もスピードも関係ない。やるかやらないか。もう気持ちだけだ。
やれるとこまでやろう!
そう決心すると小排気量のエンジンが轟音を立てるように回転数を上げた。意外にも足が動いた。また、幸運にも頑張れるキッカケが生まれた。23km部門のランナーの姿が現れ始めたのはこの辺りから。彼らの背を追いかけながら走る。声を掛け合ってパワーをもらう。まだイケる!絶景が広がるニライカナイ橋を駆け下りながら思わず声が出た。
しかしやはり気持ちだけではどうにもならないのか、気持ちが足りないのか、最後までは続かなかった。今振り返ってみると、やはり100kmをハイペースで走りきる走力がまだ不足しているいうことに尽きる。無理が祟ったのか90km手前では頭痛がし肩が固まったような感覚になった。おそらく軽い脱水症状だったと思う。およそ2.5km間隔であるエイドがとてつもなく長く感じた。
水…みず…みず・・・
90kmを超えたところで前方にIさんの姿が見えた。彼に追いつけば3位!と気持ちを奮い立たせるが一向にその距離は縮まらない。自分の存在に気づかれるとIさんはスピードを上げどんどんとその差は開いた。もう今の自分にできることは何があっても最後まで走りきること。それだけだ。
沖縄の青空を眺めながら一歩一歩足を前に出し続けた。自然とこの曲の旋律が口からこぼれ落ち、サビになると声が大きくなった。風が背中を押してくれたような気がした。
でいごの花が咲き 風を呼び 嵐が来た
でいごが咲き乱れ 風を呼び 嵐が来た
繰り返す 哀しみは 島わたる 波のよう
ウージの森で あなたと出会い
ウージの下で 千代にさよなら
島唄よ 風にのり 鳥と共に 海を渡れ
島唄よ 風にのり 届けておくれ わたしの涙
(THE BOOM 「島唄」より)
〜おまけ〜
レース翌日は
いっちーさん・キョロねーさんと一緒にドライブ♪
カメラを買った時のエピソードが面白すぎ(笑)
ソーキそば
うまぁぁぁああ!
(何回食べたことか・・・笑)
ここまで読んで頂きありがとうございました!
それでは最後にこちらの画像でお別れです♪
貴重な1枚です。
いっちーダンス♪♪
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