2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第8回 千羽海崖トレイルランニングレース 2017 その④ 〜レースレポート 後編〜

第8回 千羽海トレイルランニングレース 2017 その④ 〜レースレポート 後編〜


からの続きです。

【レースレポート 後編】


海岸(19.5) → AS2(28.7)
《青少年自然の家〜水落登山口〜白沢エイドステーション 9.2km 1'16"22》



視界が開けると目の前に太平洋が現れた。磯の香りが鼻腔をくすぐる。本能的なものだろうか、懐かしさみたいなものが身体の奥底で蘇ったような気がした。

いよいよ千羽名物の海岸やぁー

ん?あれ?!

コース案内の標識が山の中を指していた。なるほど。山を越えてから海岸に出るようだ。この山の入り口で少し迷ってしまい(ロープを突き進んでしまった)少しタイムロス。コース復帰して山を登っていると下の方で人の気配があった。よく見えない。

緑のランナーに追いつかれちゃったか?!

山を越えると再び海岸へ出た。もう山はない。目の前には海岸が広がっている。コース案内の標識はない。『さぁ好きなところを走りなさい』とでも言わんばかりだ。ちなみに海岸と言っても白い砂浜やビキニギャルがトロピカルジュースを飲んでいるビーチを想像してはいけない。そこにあるのはゴロゴロとした大きな石や打ち寄せる波によって長い時間をかけて削られた黒い岩ばかりだ。

ジャラジャラジャラジャラ

ここを走った方ならこれより的確な擬音語が見当たらないことに同意してくれるはずだ。石に足を取られ思うように走れない。黒い岩場では波が打ちつけ、ところどころは膝くらいまで水没しなければ進めない。今思えばコース取りが悪く無駄に岩場の登り下りをしてしまっていた。視界が広がったところで前のランナーを探してみるが一向に見える気配はない。右手には広大な太平洋が広がっている。水平線を探してみるが、太陽の光が波にキラキラと反射してよく見えない。その時だった。

??「りょーさん!!」



そ、その声は?!
TAKEさん!!
うぉぉぉおお!!
追いつかれてしまったぁぁあああ!!!!

TAKEさんはBUNさんを通じて知り合った伊賀のランナー。年が3つほど上なので自分にとっては兄さん的存在。昨年末に初めてお話したが、それまでにもTAKEさんの名前をリザルトで何度も見たことがあった。なぜならいつも同じくらいの順位だったから。負けることもあったが勝っていることもあったので千羽では勝手にライバル視していた。だから追いつかれた時のショックたるや…。

TAKEさん「こんなコースあるんだぁ!楽しいぃ〜!!」

そう言いながら軽やかに岩場を乗り越えていく。それに対して全然ついていけないオレ。決してバテているわけではない。なぜか身体にキレがなくなり思うように動かない。ほぼ歩きながら岩場をゆっくりと乗り越えていくしかなかった。その時だった。またしても背後から人の気配が。

に、忍者か?!

背後からTAKEさんを凌ぐ身軽さで岩場を飛び越えていくランナーが現れた。散歩するかのようにヒョイッヒョイッと飛び越えていく。ついには前にいたTAKEさんをも抜いてしまい、その差は瞬く間に広がっていく。忍術使いのようなその身軽さに一瞬我を忘れて見とれてしまったほどだ。

一体なんなんだあの人は?!
((((;゚Д゚)))))))

ゴール後分かったことだが彼は四国で有名な木村さん。なんと昨年の奥四万十ウルトラトレイルで一緒に走った木村さんのお兄さんとのこと。兄弟揃ってとんでもないランナーだ。あの海岸での走り方は今でも目に焼きついて離れない。

一気に2人のランナーに抜かれ一時的に戦意喪失してしまった。身体のキレは一層なくなり足がどんどん重くなる。ダメだダメだ。こんなんじゃダメだ。楽しまないと!そんな思いもジャラジャラという足音にかき消されてしまった。次第に少しでも早く海岸から抜け出すことしか考えられなくなる。せっかくの海岸コース。ここを楽しめなかった事が本レース中唯一の後悔となった。

頑張ってー!!

もう海岸が終わりというところで女性の方が黄色い声援を送ってくれた。カメラマンもいる。たいした登りでもないのに疲れ果ててしまっていた自分が恥ずかしい。必死に笑顔をつくって声援に応えた。

海岸が終わると一旦舗装路へ上がるためにぐっと登る。上を見上げるとTAKEさんの黄色いリュックが辛うじて見えた。その差は50〜100mほどか。なんとか差を縮めたいがまだ戦意喪失状態が微妙に続いていたように思う。舗装路へ出るとシューズの中に入った砂や泥が気になったので、一旦シューズを脱いで靴下についた泥や砂を丁寧に落とした。後続のランナーの気配はない。

登山道に入ると標高差300m強を登る。気持ちを切り替えてTAKEさんを追いかける事にした。たとえ追いつかなくとも差をこれ以上広げてはならない。そこまで勾配はきつくないので走りをいれながら登るが、一度落ちてしまった心拍をもう一度あげようとしても呼吸音ばかりが激しくなるだけで思うように進まない。なんとかピークを越えると下りだ。ここはかっ飛ばして…

??!!

嫌な痛みが足裏の外側を襲う。疲労の痛みではなく筋の痛みだ。なぜあんなテーピングをしたんだ!(そして、なぜこの時立ち止まって剥がさなかったのだろう…)自動的にブレーキがかかってうまく走れない。後続のランナーに抜かれそうな焦りだけが募る。舗装路に出ると見覚えのある景色があった。安堵感で包まれた。エイドまでもうすぐだ。この山の区間で失速していた2人のランナーを抜いた。



AS2(28.7)→ FINISH(40.0)
《白沢エイドステーション〜日和佐城〜大浜海岸 11.3km 1'18"35》


念のため500mlのボトルを満タンにする。予想以上の暑さだ。黒いゲイターには塩が吹いている。残り約10km強。ハンガーノックだけは避けたいのでバナナを3切れを一気に食べる。

もうすぐですよね!!

エイドのおばちゃん「んーここからがキツいからしっかり頑張るんやで〜!」

内心ではあともうちょいっしょ!と高を括っていたが、このおばちゃんの言ったことは全然間違っていなかった。なぜならこの後には千羽最大の名物であるアレが待ち構えているからだ。千羽を一度でも走ったことのある方ならもうお分かりだろう。

そう、階段だ。

階段だらけの激しいアップダウンが続く。三半規管がおかしくなりそうなほどの容赦ない上下運動を繰り返す。実際に『千羽名物の階段』と書かれた看板のある急登ではクラクラと目眩が襲った。その階段の途中で立ち止まっているランナーがいた。

大丈夫っすか?

低血糖で・・・。

食糧あります?

まだあるんで大丈夫です!

キツイっすけど頑張りましょう!

こんなやりとりをした記憶がある。一時的にレースであることを忘れた。みんなココが一番辛いところ。一緒に走るランナーはもはや競争相手ではなく仲間だ。自分は彼ほど追い込めてない。ほらっ。まだ走れる身体。

ここを乗り越えんかったら強くはなれん。

あきらめかけていた気持ちが戻ってきた。やっぱりTAKEさんには負けられない。海岸で抜かれた記憶が蘇る。必死で追いかけよう。ゴールまでまだあと8kmはある。十分チャンスはあるはずだ(結果的には全く及ばなかったけど笑)!

ここからは足裏の痛みなど気にせず下りでもかっ飛ばした。登りも攻める。もしかしたらあの階段の先に彼の黄色いザックが見えるかもしれない。わずかな期待を込めて走る。でもいない。あ!いた!!と思ったらショートクラスのランナーだった。

日和佐城近くの見晴らしのいいところからゴールの大浜海岸が見えた!1位のランナーはもうゴールしているのだろうか。登山道を抜けると美波町の街に出た。あともうすぐ!

すると前方に見覚えのある後ろ姿が!!


タカさん「足攣っちゃったぁぁ」

超爽やかなスマイルでそう語るのはこれまた昨年末のBUNさん練習会で知り合ったタカさん。あまりの爽やかさに一瞬ドキドキしたのは秘密(笑)タカさんは新城ダブルで3位、びわこスカイレースで6位になるなど俺なんかと比べもんにならんくらいの俊足ランナー。このアクシデントがなければ十分表彰台も狙えたはずだ。

沿道でのたくさんの応援を浴びながら走り抜けると

大浜海岸だ!!

そして・・・


FINISH!!
4時間49分19秒
総合8



レースレポートはここまでです!
次回は番外編と称して【あとがき】やレース外のことについて書いていく予定です。
乞うご期待♪

その⑤へつづく









コメント