2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第3回 FAIRY TRAIL 高島朽木トレイルランニング in くつき 2016 その③


第3回 FAIRY TRAIL 高島朽木トレイルランニング in くつき 2016 その③


その① 〜概要と結果報告〜
その②
からの続きです


AS2→AS3
《朽生(22)〜白倉岳(28)〜大彦谷林道(33) 約11km 1:37'41》




おそらく中間エイドに到着した時点では4位。疲労度はそこまで感じていないが、順位云々ではなく『どこまで逃げ切れるか』が後半戦の勝負どころだと考えていた。エイドに到着すると多くの方が声援を送ってくれる。ちょっとした会話だけで本当に元気になるから不思議だ。500mlのボトル満タンにしバナナを1本分くらい食べた。すると先ほどのランナー(以降Tさん)が到着する。「助かりました!」と爽やかな笑顔でお礼を言ってくれた。まだまだ元気そうだ。すぐに抜かれそうな予感がしたので、できるだけ逃げようと思い先行した。


橋の上からAS2を振り返る


ここから2kmほど朽生の集落を一周する。ここは昨年の記事でも書いたが超ローカルなウルトラマラソンにありそうなコースで本当に気持ちが良い。稲の香りが漂う田んぼ、風に揺れるすすき、荒々しさと静寂の入り混じる川の音、集落を囲うように広がる山々、そしてそれらを包み込むような太陽の恵み。スーっ。深呼吸すると身体の中に溜まった不純物が全て取り除かれたような気がした。道幅1.5mくらいだろうか、そこで暮らす人々の家の前も通らせてもらう。農作業をしている地元の方に挨拶すると「頑張れよぉ〜」と満面の笑みを返してもらえた。この時ばかりはレースということをすっかり忘れていたように思う。あの時目に見えた景色や肌で感じた空気を、記事を書いている今でも思い出して懐かしい気分にさせてくれる。


川の音が聞こえてきそうだ


舗装路を走り終えると応援団の方々が登山道へ誘導してくれた。いきなりの急登。どれくらい急登かというと約3kmで標高差約710mを一気に登る。もっと分かりやすく言うなら壁だ。ここまで20km超の山道をそれなりにしっかり走ってきた者にとってもはやにしか感じられない。しかし逃げ切るためにはそんなことは言ってられない。必死にパワーウォークで壁をよじ登るが全くガシガシ登れなかった。するとTさんに抜かれる。食らいつこうという余裕すら与えられないほどのスピードだった。彼はダダダダダッと急登を走って攀じ登る。その後、しばらく歩くと、またダダダダダッと一気に標高を稼ぐ。なんの誇張もしていない。本当に走って攀じ登るのだ。こんなこと最後まで続くのか?!と目を疑ったが、それが彼のスタイルなのだろう。徐々に視界から消えてしまった。Tさんはそのまま走り続け結果は4位(14分の差をつけられた)。


こんなもの気合いでどうにかなるものじゃない。
完全なる実力の差。
しっかり練習しなくては…


圧倒的な登りを体感して素直にこう思えた。とにかく今自分ができることは耐えるのみ。小股であっても一定のテンポを保ってリズミカルに登り続ければ何とかなる。目の前に現れる斜面とひたすら対峙し続けた。もうナンダカンダは流れない。ボクサーがジャブを繰り返すように、職人がカンナで木を削るように黙々と足を動かし続けた。

腕時計で現在の標高を確認するとすでに900mを超えている。昨年の経験から似非ピークが何個かあることは知っていたが、案の定今年も何度も裏切られる。この辺りは高低差グラフでみても明らかだが、登ったり降りたりを繰り返してほんとにコレがキツい。この似非ピークに翻弄されているあたりで貧血なのか脱水なのか分からないが突然ガクっとペースが落ちてしまった。パワーゲージが一気になくなり赤く点滅し警告音が激しく鳴り響いているような感じだ。いつも以上の無理が祟ったのだろうか。ズルっ。疲労で足がもつれ下りで滑ってしまった。するとその時の衝撃で肩から脇にかけてイヤな痛みが走る。攣ってはいない。鈍痛のような感じだ。急に身体が動かなくなった。焦る…。こんなところで終わったら今までの頑張りはなんだったのか…。どうしようもできないのでしばらく歩いて回復を待つ。2,3分くらいで走れるように戻ったが一体アレは何だったのだろう。

ペースが落ちたことを実感するが、ここで無理すれば身体に何かしらの支障をきたしそうな気がしたのでAS3への下りまではペースを落とすことにした。すると背後からランナー(以降Kさん)に抜かれる。レース後にご挨拶させてもらったが、Kさんはトレイルレースの上位でよく名前を拝見する凄い方だ。昨年のフェアリーでも4位というホンモノの実力者。来年開催される『みなと舞鶴とれとれトレイルラン』の偉いさんでもあるようだ。
※以下にHPを載せておきますのでぜひご覧下さい。


みなと舞鶴とれとれトレイルラン in 大浦
開催日:2017年5月6日


さてそんなKさんを見送るといよいよ体調が悪くなってきた。頭痛がしだし、なぜか右肩から首筋にかけて凝ったような痛みを感じ始めた。原因は定かではないがおそらく脱水だったかもしれない。気温は低いが想像以上の発汗があったのだろう。ボトルの残量は少ない。少しずつ小まめに摂取するが一向に良くならない。次のエイドまでたどり着ければ何とかなる。そんな思いだけで走り続けると「エイドまであと1kmですよ〜!」というスタッフの方の明るい声が聞こえてきた。




AS3→FINISH
《大彦谷林道(33)〜雲洞谷山〜朽木中学校(40) 約7km 0:48'59》




エイドに到着すると大歓声で迎えてくれた。ランナーは誰もいない。ボトルに給水してもらっている間に目についたコーラを2杯立て続けに飲む。それからバナナを何個も貪るように食べた。そしてコーラをまた飲む。


応援の方「現在6位ですよ!」


ほえぇ?


順位の事は頭からすっかり消えていたので驚いた。しかもある程度メジャーなトレイルレースで1桁の順位、ましてや6位などという状況は経験したことがない。だから応援の方が言ってくれた6位という言葉は宙に浮いたままで頭にうまく入ってこないような感じだった。イマイチ反応の悪いオレを気にしてか、応援の方はこう続ける。


応援の方「6位まで入賞だから頑張って❤︎」


ハートに関しては脚色したが、このおかげでようやく宙に浮いていた言葉が地に足をつけて頭に入ってきた。"我に返った"と言った方がいいかもしれない。もしくは"ケツを叩かれた"とも言える。


入賞?!このオレが?!
でも、ここまできて入賞逃したらアフォでしょ!!


そんな気持ちでエイドを出発した。確か記憶では軽く登ってあとはひたすら下るだけだったような。ただ後ろのランナーとはどれくらい離れているのか全く見当がつかない。ハッキリしてることは自分がエイドを出発する時にはまだ来ていなかったことだけ。残り6,7km。全力出して抜かれたらそれはしゃーない。でも手を抜いて抜かれたらほんまもんのアフォや。くらいの気持ちで走った。

ヤル気にさせてくれたのは先ほどの応援の方が言ってくれた言葉以外にもう一つある。それはショートコースを走るランナーの存在だ。フェアリートレイルはロングコース以外にショートコースという部門がある。ちょうどAS2の中間エイドからロングより1時間遅れの7:30にスタートして同じフィニッシュ地点を目指す。だからショートでゆっくり走るランナーにロングのランナーが追いつく形になる。ロングを走るランナーのために道を開けてくれるのだが、追い抜く度にすごぉーい!頑張って〜!!という黄色い声援を頂けた。お美しい女性二人組の方にはジェントルマンの嗜みとしてこう返す。


「カワイイですよーーー!!」

※決してお世辞で言ったわけではありません。ちゃんとお顔を拝見させてもらいましたがそれはもう浅野温子と浅野ゆう子のようでした。ってのは冗談で、実際は竹内結子と井川遥が現れたのかと思いました(笑)




こうした何気ないやり取りや「お互い頑張りましょう!」というエール交換で先ほどまでの頭痛が嘘のように飛んでいった。ロストしないようにテープを追いかけながら駆け下りる。美ヶ原で負傷して以来ずっと下りを全力で駆け下りるのは抵抗があったが、この時ばかりは変にブレーキをかけることなく丁寧に走りきれたように思う。もちろんまだまだ速い人に比べれば全然だが、以前、山の師匠から丁寧に走ることを教わった(ご本人はそのつもりは全くなかっただろう)ことは今の自分の走り方に大きな影響を与えてくれている。あれ以来、危険な転び方は無くなったような気がする。とはいえ、下りのテクニカルなところでは何度も滑って尻もちをついてしまったが(汗)



ロードに出ると「あと2kmです!」とスタッフの方が誘導してくれた。ここまで何とか逃げ切ることができたがまだまだ油断はできない。あと1kmという見通しの良いところで後ろを振り返ると誰も来る様子はない。ようやくここで6位を確信する。途中で『妖精見れた?』というメッセージを掲げた方が応援してくれた。あ、そうだった。鏑木さんが妖精を見たからフェアリートレイルって名前だったんだ。妖精…いたかな…あ、AS3でケツを叩いてくれた方が自分にとって妖精だったかも。


そして…


ひゃっほい
FINISH!!

4時間57分45秒
男子総合6位




【あとがき】

最初にも書きましたが、ある程度メジャーなトレイルレースで入賞できたことは初めての経験なので非常に嬉しいです。ただ、大阪マラソンやOSJ山中温泉トレイルランがなどの主要大会が同日開催だったことで当大会の参加者数が減ったことが今回入賞できた要因のひとつだとも思います。しかし、入賞云々よりも40kmという距離の短いレース(マイルやら超ロングばかり走っている自分としては)において最初から最後まで攻めるレース展開ができたことは今後の指標となりそうです。そして何より良かったことはレースを純粋に楽しめたこと。つらい局面もありましたが楽しむことに重点を置けたことが結果につながったと思っています。

さて今週末は奥四万十ウルトラトレイル。第一回大会なので全く想像がつきません。73kmという距離ですが、高低差グラフを見る限りではそれほど累積標高は無さそうな印象。そうなるとある程度のスピードレースが予想されるので、スピードのない自分としては一定のペースをしっかり刻み続けることが求められそうです。といっても聞くところによると参加者数は100名程とか?!天気も良さそうなので奥四万十の自然を十分に満喫してきたいです♪



みんなでフェアリーポーズ(笑)



第3回 FAIRY TRAIL 高島朽木トレイルランニング in くつき 2016
全3編







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