2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第3回 OSJ特別戦 KOUMI100 2016 〜リタイアの真相 その⑤〜

第3回 OSJ特別戦 KOUMI100 2016 〜リタイアの相 その⑤〜




本沢エイドまで長い登りの舗装路が延々と続く。防寒着(といっても長袖のシャツとネックウォーマーだ)を着ても冷え切った身体はそう簡単には暖まらなかった。とにかく走って身体を暖めなければ。身体が冷えると面白いほどメンタルが削られていく。そうでなくとも今はリタイアの文字が頭をよぎるほどの精神状態。必死に走ろうと試みるが、身体は言うことを聞かない。まるで誰かが突然やって来て、思考と行動をつなぐケーブルを大きな鉈でぶっつりと切断してしまったかのようだ。いや、待てよ。本当に必死に走ろうとしたのだろうか。もしかするとこの時すでに自分のレースを諦めていたのかもしれない。

こんな調子じゃもう上位を狙うなんて無理だ

こんな考え方が頭の中を埋め尽くしていたように思う。心のどこかで自分は上位を狙えるんだと慢心していたのかもしれない。もちろんそれなりにトレーニングもしてきたし様々なレース経験をしてきたつもりだ。でも実際はどうだろう。上位選手と互角に戦えるような走力や精神力はまだ持ち合わせていなかったに違いない。

上位を狙えないならもう意味がない

今まではどのような局面であろうともこんな考え方には絶対に至らなかった。失速しても途中でレースを投げ出すようなことはせず完走だけは果たしてきた。なのに…。


歩き続けて本沢エイドへたどり着いた時、ちょうどマイクロバスが横付けされていて、リタイアを決めた人がそのバスへ乗り込んでいるように見えた。ここからスタート地点までは残り約7,8kmほど。4周目途中から痛みが出ていた膝のことを考えると、どうせリタイアするなら無理せずここでリタイアした方がいいのでは。そんな事を考えながらエイドで温かいココアを作ってもらった。黙々と飲む。両手から伝わる温もりと喉が痛くなるほどの甘さがカチカチに冷え切っていた心をゆっくりと和らげていく。もう一杯頂くとお礼を言って暗闇の林道へ入っていった。

林道の長い下りは足が動かなくなると悲惨だった。足裏や膝へのダメージがもろに襲いかかり、ペースも遅いので途方もない時間がかかる。この間に何人ものランナーに抜かれた。抜かれれば抜かれるほどもうダメだという感情が増し続けた。何を考えていたのか全く思い出せない。やけに白く光った石や何度も踏み固められた茶色の泥、林道脇に生えた濃い緑の草木がヘッドライトの明かりで絶え間なく揺れ続けた。どれくらい時間が過ぎたのだろう。気づいた時には民家のある舗装路に出ていた。もうリタイアするかどうかについての自問自答はなかった。遠く見える山影を眺めながら最後くらいは走ろうと足を動かしていると、巨大なアンプによって拡大されたアナウンスや音楽の音が近づいてきた。

そして周回を終えるとリタイアすることを告げた。


KOUMI100 2016
結果
DNF(リタイア)


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4周目を走り終えた時点での順位は13位。ここまでにかかった時間は21時間53分43秒。昨年の完走タイムは31時間45分22秒。どうして目標を昨年よりタイムをあげることに頭を切り替えられなかったのだろう。リタイアすることを告げた時「もう膝がだめで…」と言ったことを覚えている。この時はリタイアの原因は膝をかばうためだったと大真面目に考えていたのだから不思議だ。膝の痛みは確かにあったがレース後も普通に歩けたし現在走ってもまるで問題が無い。100マイルもの距離を走るのだから膝に限らず様々な痛みが出て当然だ。

上位が狙えないならもう意味ない

最終的に自分が出したリタイアの全ての原因はこの考え方だと思っている。3周目を終えた時、快調さのあまり「このままキープし続ければ上位が狙える!」という感情が湧き上がった。この時すでに『ポジティブな感情』は姿を消し、知らず知らずのうちに築き上げていた慢心が顔をのぞかせていたのかもしれない。

より速くなりたい!
より長い距離が走れるようになりたい!

ランニングを始めた時の純粋な貪欲さがあったならばリタイアしなかっただろう。昨年のKOUMIは初めての100マイル挑戦であり、ラスト1周は10時間以上かけてでも何とか完走を果たした。今年と昨年を比較した時に、体感的に今年の方が走力が上がっていたかもしれない。ただ、走る事に対する純粋な貪欲さはどうだろう。トップ選手でもない自分のようなランナーが上位が狙えないから途中でやめたというのは慢心以外のなにものでもないはずだ。

もちろんこれで全てが終わりではない。今後のランニングを楽しむためにも、この結果を前向きに考える必要がある。リタイアによって知らず知らずのうちに築き上げていた慢心に気づく事ができたことは少なからずとも意味があるだろう。走り始めて丸4年が過ぎた。様々な経験をしてきた今だからこそもっと貪欲にならなくてはならない。まだ旅は始まったばかりだ。







本編は以上です!
次回はもう少しゆる〜い感じで【編集後記】を書きますのでお楽しみに♪
(まだ続くんかよ!笑)

コメント

Unknown さんの投稿…
う~~~ん
切ない。
今回は泣けるじゃないか

これでまた気付きを得たなら伸び代はあるし反省できることはエラいことだよ!

まだまだ追いかける立場だと楽しみがいっぱいあるでしょう!
それまでは天狗の鼻引っ込めてなさいなー( ˙-˙ )౨

それにしても長いよ!!!
何度読むのやめようと思ったことか(笑)
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
フッキー、こんなコメントしにくいブログにわざわざコメントありがとう!

反省してるのかどうか微妙なとこやけどこれからもめいいっぱい楽しみます♪フッキーも12月のレースに向けて楽しんでいこー!!

長いよな〜(汗)自分でも引いたわ(笑)字を書くことでストレス発散してるかも。これからより一層長さに磨きがかかると思うけど飽きずによろしくっす♪