2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第16回 24時間リレーマラソン神戸大会 2016 シングル(個人)の部 〜本編〜

第16回 24時間リレーマラソン神戸大会 2016 シングル(個人)の部 本編


あと3時間半・・・あと3時間半だけやろ・・・
最後くらい勝負しろよ・・・

時刻は午前8時を過ぎた。容赦なく照りつける太陽の熱がアスファルトの上でまた充満し始めた。この状況を形容できる言葉を必死に考えるが思い付かない。しかし、まわりのランナーの表情を見れば状況は自ずと分かるだろう。虚ろな目で黙々と走るランナー。下を向き歩き続けるランナー。中には蛇行しているランナーや足を引きずっているランナーもいる。彼らは何を目指して走っているのだろうか。自分にも問いかけてみるがやはり答えは出ない。

すでに走り始めて20時間以上が経過し、走行距離は165kmを超えている。周回ごとの計測地点へ戻ってくるとパルさんが何か必要なものがないか聞いてくれた。「何もないです。」と疲労のせいか少し無愛想に答えてしまったかもしれない。パルさんはスタートしてから常に自分のことを気にかけてくれ、細かな(時にものすごく我儘な)要望にも全て応えてくれている。ここまでしてもらったんだから何としても結果を出さなくてはならない。でも、足は鉛のように重く、ナメクジが這うような走りになりつつある。だめだ。これじゃあだめだ。そう声に出してみるものの、灼熱のアスファルトの上では言葉までが瞬時に溶けてなくなってしまった。また一周を回る。すると応援に来てくれているフッキーが20時間経過時点での順位を教えてくれた。


4位。
3位とは2周差。

「2周差か。そんなの絶対無理。もうダメだ。」これはその時に実際に口から出た言葉だ。このレース、昨年の反省を生かして前半はとにかく抑えた。昨年はスタートして3時間でそうめんが食べれなくなり30分寝なければどうすることもできないほどの熱中症になっていた。その経験から今年はキロ5分30秒〜6分ペースを刻み続けた。また、4時間ごとに大休憩をとり、水分・食事も可能な限り積極的に摂取する。そのおかげか一時は2位まで順位をあげることができたが、深夜の時間帯に足の疲労で失速し始める。おそらく数日前の大峯早駈のダメージだろう。太ももにこれほどまでの痛みが生じたのは初めてだ。それから2位→3位→4位とじりじりと順位を下げてしまう。だからこのまま失速していくという流れしか頭の中にイメージできなかった。相手も休まず走っていることを考えると2周差をこの時間帯から詰めるのは至難の業だ。しかし、「絶対無理」などとこんな言葉しか出ないのは明らかに自分の弱さを露呈するようなもの。情けなさが込み上げる。

さらにもう1周走りながら自問自答した。これで本当に終わっていいんだろうか。前回(137.7km)より大幅に記録を更新したからいいんじゃない?この灼熱地獄の中で160km以上走れたら十分だろう。こうした考えが頭の中を渦巻く。顔をあげると一緒に24時間走っている仲間の姿があった。彼らは何を思って走り続けるのか。わからない。でも何だっていい。理由なんてない。すれ違うたび、追い抜くたび、彼らの走る姿にただただ感動した。熱気がこもった空気の中に爽やかな風が一瞬吹いたような気がした。そしてまた1周を終え計測地点にいるパルさんの元へと帰ってきた。彼の顔を見るとレースを諦めかけていた自分に無性に腹が立った。

なにやってんだオレは・・・
あと3時間半・・・あと3時間半だけやろ・・・
最後くらい勝負しろよ・・・


この時この曲が頭の中に鳴り響いた
 turn 
by travis

まずは22時間経過までにできるだけ差を詰めようと考えた。フッキーに2位、3位のゼッケン番号を聞き、彼らの疲労の具合を確認しながら走る。彼らも明らかに疲れていた。だが休むことはせず距離を稼ぎ続けている。今のペースで走っていては差が縮まらないだろう。だが22時間経過までの1時間強をしっかり走れば差を縮めるどころか追い抜けるかもしれない。風向きが変わるように急に意識が変わった。こうなったらとことん追い込みたい。パルさんに周回ごとにかぶり水を用意してもらうよう伝える。キロ5'30前後のスピードで周り続けた。21時間以上走り続けた足ではこのスピードはもはやダッシュに等しい。相当足にも負担がかかっていたはずだ。余計なことを考えず一心不乱にただただ気持ちに身を任せた。寝ずに応援してくれるのり天ちゃんもペットボトルの水を手渡してくれる。そして22時間経過した時フッキーが現在の順位を教えてくれた。

2位!!
3位と4位は1周差

「追いついた!いける!!」この1時間半で4位から2位まで順位を上げることができた。あとは2周ほど差をつけられれば2位を維持できる。さすがに先ほどよりはペースが落ちるが歩かず走り続けた。そして23時間が経過。残り1時間。2位を確信した安堵感からかここでついに歩き始めてしまう。歩き出すと体の節々に痛みが走るのを感じた。でもこれは自分だけじゃないしそれが24時間走。ラスト1時間は体の痛みを感じながら全て歩き倒した。それまでは休憩を除いて、コース上に出た時はほぼ全て走ってきたように思う。休憩する時はとことん休憩し走る時はできる限りいいペースで走った。明け方の睡魔が襲ってくる時間帯は眠りながらも走った。もうどうしようもなくなった時は10分ほどベンチで寝た。今までの24時間走はとにかく走り続けることしか意識が向いていなかったように思う。だから足が動かなくなって失敗してきた。まだ24時間走り続けるというレベルには達していないということだろう。今の自分のレベルでは最後まで足を持たせるには如何に上手く休憩をするか、ここが大事なのかもしれない。

「ひゃっほいさんですか?」

歩いていると盲人ランナーの伴走者の方に話しかけられた。ありがたくもブログを見てくれているらしい。その方と話をしていると1位のランナーが後ろからやってきた。

カトルス星人!!(左端)
(※この時は脱皮していた)

22時間の時点で彼とはすでに5周の差があり残り1時間では明らかに勝ち目はない。だから自分は勝負を諦めて歩いていたのだが、彼は断トツトップでもなお走り続けていた。聞くと昨年のリベンジだという。昨年は190kmほどで2位。今年はどこまで走れるのか試したかったのかもしれない。自分には未だ実現できていないその挑戦心に深く感服した。そして彼のことをものすごく尊敬した。圧倒的な敗北だが、それは暗闇を意味するものではなく、淡い光を感じることができた。

そして・・・

FINISH!!

男子シングルの部
116周
197.2km
2

初めての表彰式

【あとがき】

一人では絶対に出せなかった記録。あらためて24時間つきっきりのサポートをしてくれたパルさんをはじめ、一緒に走った仲間や、わざわざ応援に来てくれた仲間たちに感謝したい。

正直に言うと、今までサポートがあるというのは自分の本当の力ではなく、それで勝っても意味がないと思っていた節がある。でも24時間走で結果を出すには、もしくは勝負するにはサポートが必須という考え方に変わった。24時間走は一見すると個人の孤独な戦いのように見えるが、それは一つのチーム戦でありフィジカル・メンタル面においてもサポートの力に寄るところも大きい。今回のレースでそういった種類の面白みが24時間走にあると気づけたのは大きな収穫かもしれない。ただ注意すべきはサポーターだからといって誰でも良いわけでは決してないだろう。そこには信頼できるパートナーや仲間がいることが必要だ。今回偶然にもそういった境遇に恵まれたことを本当に感謝している。

もちろんサポート無しで一人で24時間走を走りきった人にも敬意を払いたい。サポートがなければコースから外れてコンビニへ買い出しにいったりとサポートの有無で大きなハンデがあることも事実だ。そういった中で自分への記録に挑戦した人たちがたくさんいるということもここに明記しておく。

ちょうど一年前の24時間走神戸大会(その時の記事はコチラ)で、まめくまねーさんに言われた言葉がある。

私よりりょー君の方が絶対走力は上だと思う。でも私は100%いや120%引き出そうとすることができる。だけど、りょー君は半分も力を発揮してないんじゃないかな。

ねーさんにとっては何気なく発した言葉かもしれませんが
オレにとってこの言葉は出発点であり終着点でもある大切な言葉です

まめくまねーさん(右)と❤︎

ねーさん、
オレ、少しは自分の力を発揮できるようになったかな?



第16回 24時間リレーマラソン神戸大会 2016 シングル(個人)の部 〜本編〜





次回は、番外編と称し、一緒に走った仲間や応援に来てくれた方々、レース中のエピソードなどを断片的にご紹介致します♪

乞うご期待!!

番外編へつづく

コメント

パル彦 さんのコメント…
いやぁ~、まさかここまで走れるとは正直思ってなかったわ。
予想を超える走りに拍手ですよ。Ryo君の頑張る姿にこちらも全力でサポートせねばと奮起したよ。まぁ、色々失敗もしたけど(笑)
しかしこんなにも感動的なレポだと言うのに、最後の写真をよく見ると下ネタやん。
これで大半のファンを失い、新たなファンをその倍獲得したと思う(笑)
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
パルさんありがとうございます!
結構頑張りました(笑)パルさんだけでなく他にも多くの人にワガママ言っちゃい過ぎた事を今更ながら反省しています。いずれにせよ走る事に専念できる環境を作ってくれたことは感謝しています!

あ、最後バレましたか(笑)気づかれないつもりだったんですが、さすが○ネタ大王!よく見てらっしゃる(笑)