2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

OSJおんたけウルトラトレイル100K 2016 〈100マイル〉その⑥ (完結編)

OSJおんたけウルトラトレイル100K 2016 〈100マイル〉その⑥ (完結編)

その①(レース概要)
その②(スタート→CP1)
その③(CP1→CP2)
その④(CP2→CP3)
その⑤(CP3→CP4)からの続きです。

今回はいよいよ完結編!
最終関門であるCP4(118km地点)からFINISHまでです。

前半戦は18時間切りという記録を狙って快調に走り続けるも、現実はそう甘くなく後半どんどん失速していく。一時はリタイアの文字が頭をよぎるが、仲間との出会いや超長距離走独特の気持ちの変化のおかげで、少しずつでも足を進め続けてきた。いつの間にか記録や順位など人と競い合うレースではなくなり、ゴールへと向かう自分との戦いへと変わっていた。そしてようやく最終関門であるCP4へたどり着く。しかし、これまでの118kmは全て序章に過ぎなかったと言えよう。なぜなら本当の林道地獄はここから始まるからである・・・


CP4→FINISH
《第4関門(白川)〜小エイド〜(ループ③)〜小エイド〜FINISH(松原スポーツ公園) 約42km  6'14"34 区間順位36位》


11:14(15:14経過)
約118km地点(実際は116km??)
第4関門(白川)を通過

大会HPより

「素麺食べていってよ〜!!」エイドの方が元気よく疲れたランナーに声をかけている。ここのエイドでは上記画像のような素麺が振る舞われていた。疲れきったランナーの顔が素麺を食べるときは自然と笑顔になっている。すかさず自分もお椀に手を伸ばした。


うまぁぁぁぁあああああ!!
(※画像とは一切関係ありません。これは滝畑茶屋にて。)

喉越し、出汁の塩気、冷たさ、素麺はウルトラにおいての鉄板メニューに間違いない。ズルズル夢中になって素麺を啜っていると大会スタッフの方に話しかけられた。「お疲れ様です!今からちょうどフルマラソンの距離ですね〜!」そうか。マイルランナーはここから最後のループを周回しなければならない。ゴールまでちょうど42km。確かにフルマラソンの距離だ。この距離をどう捉えることができるかで超長距離ランナーとしての資質が問われる。

たったのフルマラソン1回分か。さてと、ラストスパートでもかけようかな。

え…フルマラソンも…あと何時間かかるんだよ…

このスタッフの方と話している時は不思議と前者の考え方で捉えることができた。さ〜て、やってやろうじゃないか!と。しかし、エイドを出て急坂の登りを目の前にした瞬間、この考え方はいとも簡単に崩れ去り、あっという間に後者の考え方になってしまっていたことを白状する。まだまだ自分のことを超長距離ランナーとは口が裂けても言えない。

「お互い頑張りましょう!」エイドを出る時、パルさんと最後の挨拶をして互いの完走を誓い合って別れた。威勢良くエイドを出発するも前述した通り、急坂の出現に一気に心が折れてまた歩き始めてしまった。しかし14時間切りを目指す100Kランナーの波から取り残されないように必死について行った。

「もしかして、ひゃっほいさんですか??」

今にも睡魔に支配されそうになっていた矢先のことだった。後ろから追い抜きざまに100Kランナーから声をかけられた。夢の世界を行ったり来たりしていたので、いつもの癖で「そうです…わたすがひゃっほいです…(志村けん風に)」と答えそうになるのを我慢する。そうです!と答えると、彼はこう続けた。

「手は大丈夫なんですか?!」

先日の美ヶ原での怪我の事を心配してくれた。しかし、どうしてそれをご存知なのか…お聞きするとやはり当ブログを読んでくださっているとの事。それを聞くとさっきまでの睡魔は何処へやら。一気に元気になって彼とおしゃべりしながらしばらく一緒に走らせて頂いた。爽やかなイケメンのお兄さんで、確か兵庫県在住(いや箕面だったかな?)の方だったと記憶している。フィニッシュ後にも声をかけて頂き一緒に『ひゃっほいポーズ』で写真まで撮って頂けた。その時に聞きそびれてしまったが無事に14時間切りされたのだろうか…

こうしてレース中に少なくとも2人ものブログ読者の方と出会えたというのは非常に嬉しいものである。かつ、完走するための活力になったことは言うまでもない。事実、情けない姿は見せられないと彼らに出会ってから身体に鞭を打って走る事ができたのだから。

彼と出会ったおかげか、ループ入り口の小エイドまでの約15km(実質12km?)は比較的順調に走る事ができた。CP3(103km地点)手前で追い抜かれた123番のマイルランナーにこの区間でようやく追いつく事ができた。このマイルランナーとはこの後も抜きつ抜かれつを繰り返すが本当に助けられた。同じマイルランナー同士、完走に向けてもがき苦しんでいる姿に刺激をもらい最後まで頑張れた事を先に記述しておく。

「あっ!さやかねーさん!!」
(※これは恐羅漢でのレース後の写真です)

風のように颯爽と下る100Kランナーに抜かれる。あの後ろ姿は!すかさず声をかけるとやはりさやかねーさんだった。彼女は全国様々なトレイルレースに出ており表彰台に上がることもしばしば。見た目のセクシーさからは想像もできないほどの実力派ランナーだ。昨年のおんたけで初めてお会いしたときも余裕の14時間切り。こちらは復活したあと必死に追いかけるも全く追いつかなかった思い出がある。今年も14時間切りに向け軽快に下っておられる時に偶然出会うことができた。声をかけるとわざわざこちらの元まで戻ってエールを送ってくれた(もしあの時ハグしていたら鼻血を出して再起不能になっていただろう)。
※もちろん彼女は2年連続の14時間切りを達成したとのこと。来年はマイル参戦か?!

ちょうどその頃、
2人の100Kランナーが立て続けにフィニッシュラインに到達していた。

おとっつぁん
12時間21分13秒
50代男子 7位
(※写真が無かったので大阪府チャレンジ登山(ダイトレ)のものを使用)

前半戦は睡魔に襲われゾンビ化していたものの、
コース脇で気絶したように(※本人の言葉)眠ると一気に復活。
そこからはまさしく怒涛の快進撃。
区間記録を見ても最後の2区間は20番台や30番台。
おそらくごぼう抜き状態だっただろう。

その15分後・・・

ミフィオ
12時間36分14秒
30代女子1
(※パルさん撮影)

苦手な下りは抜かれても登りで抜き返すというスタイルを貫き、前半は淡々と順位を上げていく。
しかし後半、股関節の痛みが出てそこから歩きを交えつつも、
ラストでは女子をごぼう抜き(最後の区間記録は女子1位)。
堂々の年代別優勝を飾る。
来年はマイルでとんでもない記録を打ち立ててくれるはずだ。

そんな彼らの活躍はつゆ知らず。ある意味、放心状態で走っていたように思う。とにかく足を止めることなく標高を下げていくとテントが現れた。

13:15(17:15経過)
約128km地点??
小エイドを通過

エイド前にはカラーコーンがあり左は100マイル、右は100Kと分けられている。なんだか左は地獄、右は天国と分けられているかのように錯覚してしまった。もちろん進路を左にとるとスタッフ(地獄の番人に見えた事は内緒にしておこう)の方がやってきてゼッケンのループ③の箇所にマジックでチェックを入れてもらう。

「6分ほど前に何人かのランナーが塊でループに入って行ったよ。」最後の戦いに向けて水を補給しているとこうスタッフに言われた。6分差か。もし全員を追い抜く事ができれば大幅に順位を上げる事ができるな。闘争心が少しでもまだ残っていた事に自分でも驚いた。時計を見るとスタートから17時間以上が経過。当初は18時間切りなんていう大口を叩いていた自分が恥ずかしくなる。そのためには今頃すでにループ③を終えていなければならない。改めて未熟さを痛感した。


ループ③の林道へ入っていくとそこには静寂があった。不自然なほど静かだったのを覚えている。今思い出してみても風の音や木々が揺れる音、そして自分の足音なんかもどうしても思い出せない。もちろん前後には誰もいない。あまりの静けさに怖くなった。急に熊が現れそうな気がして熊鈴を手に持ちチリンチリンと鳴らしながら進む。合流地点までの約10kmはひたすら登りが続く。最初は走った。

ここを走り続けられれば!
最初はしんどくとも走っていれば波に乗れるはず!
何甘えてんだ!!過去にも復活した事があっただろ!!
おい!長崎はどうした!これじゃあ来年は勝てないぞ!!!
とにかくやるんだ!!
(SJ著 『EAT&RUN』より)

後悔したくなかった。先ほどの小エイドで僅かながらにでも残っていたレースへの闘争心をただの幻想で終わらせたくなかった。レースに出る以上やっぱり積極的に戦わなければならない。その対象は人かもしれないし記録かもしれないし自分かもしれない。なんだっていい。とにかく戦え。とにかくやるんだ!!

しかし…
ダメだった。走れなかった。

今となってはあの時もう少し頑張っていればとか、小エイドでしっかり休んでいればなど、いくらでも反省点を挙げることができる。でもあの時あの瞬間あれが自分にできる限界だったのだろうか。分からない…。でも限界だったとはやっぱり思えない。なぜなら同じ状況でも最後まで戦い続けているランナーがいたからだ。

歩き始めると後方からやってくるマイルランナーに次々と抜かれていった。その数は5,6人。器用に2本のストックを駆使して小走りで走っていくランナー、淡々と走り続けるランナー、しっかりした足取りで歩み続けるランナー。彼らに抜かれるたび、自分に対してどんどん自信を失っていくのを痛感した。

今までの練習や経験は何だったんだ…
超長距離の素質なんてないんじゃないの…
またこのザマか。いつになったら結果を出せるんだ…

完全なるネガティブ思考。林道地獄なんて言葉を使って全てを林道のせいにしてしまっていたが、本当は自分の弱さが露(あらわ)になり、自ら負のスパイラルに陥っていただけである。しかしこの時は文字通り周りの景色が地獄に見えていた。曲がりくねった果てしない林道。枯れ果てた木々。がけ崩れの現場のように転がった岩。顔を上げても白っぽいガスがかかって向こうに何があるのかよく分からない風景。大げさに言うならば、荒廃してしまったこの世の果てにしか見えなかった。

林道わきにあった丸太の上に腰をおろす。もうどうしていいかも分からないので手元にあるジェルやらサプリやらを投げやりに口の中に放り込んだ。意味もなく靴紐をほどいて締め直す。ボォっとする。無の時間。

ザッザッザ・・・

どれくらい時間が経っただろうか。おそらく5分もなかったのだろうが、その時間は永遠にも感じられた。遠くから足音が聞こえてきた。ランナーだ。こんな姿は見せられない。立ち上がって歩き出す。追い抜かれる。女性ランナーだ!!「頑張ってください!」と声をかける。すると、(何言ってんのよ?!)一緒に頑張りましょう!」と言われた。

力強く進み続ける女性の後ろ姿を見送りながら、あれだ!あれが100マイラーだ!!と意味もなくつぶやく。徐々に勾配が緩やかになり、合流地点はどこだどこだ?!とカーブの先に期待を寄せながら走り始めた。この頃から少しずつ走り始めることができた。とにかく合流地点に出れば何とかなりそうな気がしたからだろう。

ちょうどその頃
とある100Kランナーがフィニッシュしていた

パルさん
15時間14分49秒
(※画像はパル彦便りより)

走力だけで言うならばおんたけ100Kのコースは彼にとって特別な距離ではなかったはずだ。
しかし最後のエイドで吐き気が襲ってきたらしく、
そこからが戦いの始まりだったのだと思う。
レース後、初めての幻覚体験を楽しそうに語るパルさんを見ていると、
おそらく来年は14時間切りを目指して再挑戦してくれるだろう。

数人のランナーがコースを横切っているのが見えた。合流地点だ!!あとは先ほど走ったコースを走るだけ。確かそのほとんどが下りがだったように記憶していたので、自然と足にも力が戻り淡々と走っていく。先ほどまで廃人のようになっていたのが嘘のように走ることができた。周りの100Kランナーの多くはかなり疲弊している様子だった。とぼとぼと歩くランナー。ランナー同士声を掛け合いながら進むランナー。林道脇でうずくまるランナー。それぞれのゴールを目指して。

軽快に下っていると先ほど廃人と化している時に追い抜かれたマイルランナーに数人追いつくことができた。どうやら足に痛みが走って下りが思うように走れないらしい。それでも懸命に一歩一歩進んでいる。中には「もう足がダメで・・・。コレがなかったら完走はあきらめてましたよ・・・」とストック代わりにしている大きな木の枝2本を指差しながら語るランナーもいた。

そしてようやく2回目の小エイドへ戻ってきた。今度はカラーコーンの進路を右に進む。今から左の周回コースへ入っていくマイルランナーもいた。小エイドにはゴールまであと7kmと書かれた紙が貼られていた。あともう少し。

林道を抜け舗装路に出ようかという時に颯爽と走り抜けるマイルランナーに追い抜かれた。なぬ?!ここでようやく闘争心に火がつく。舗装路に出ると不思議なほど足が動いた。なんやねん・・・足元気やん・・・。彼の後ろ姿を必死で追いかけた。そして松原スポーツ公園へ。多くの方が拍手で出迎えてくれる。歩いている100Kランナーにもたくさん声をかけて頂いた。そして・・・

FINISH!!

100マイル
21時間24分38秒
男子総合20位
年代別8位

Start-CP1 5'56"48 17位
CP1-CP2 2'21"47 9位
CP2-CP3 4'21"15 37位
CP3-CP4 2'30"14 64位
CP4- Finish 6'14"34 36位

154.2km
累積上昇高度 5371m
累積下降高度 5338m
(※Epson SF-710にて計測)



OSJおんたけウルトラトレイル100K 2016 〈100マイル〉
全6編



【あとがき】

いかがでしたでしょうか?長い!長すぎますね!!(笑)小分けにして書いたとはいえ、その⑥まで到達したのは過去最高です。100マイルでこの長さですから、これじゃあ200km以上のレースなんて走っちゃうとどれだけの長編になるんだって話ですよね(汗)要約する力が欲しいです。

記事を書く者として一番危惧していることは、実際にこのおんたけを走ったことの無い人でもコレを読んで楽しめるのか?ってことです。写真も無ければ、ただ心の中で思ってることを文字に起こしただけですから。最後の方なんてもうおっさんのただの独り言だらけでしたし(笑)いずれにせよ、その①から完結編まで全てを読んで下さった方がいらっしゃるとしたらコツコツと書き続けてよかったと心底思える瞬間です。

もうおんたけ100マイルから2週間も経つのですね。この2週間は怒涛のように過ぎたような気がします。まぁこの2週間だけに限らずレースが入っていると毎日があっという間に過ぎていくので正直怖いです。明明後日の8/3(水)はfunrunde主催の『大峯早駈』という超ローカルな大会に出てきます。開催日が今年は平日とあってエントリー者は30名弱(笑)エイドやデポ、道案内なんかは皆無です。途中の水場で水が枯れてたら死亡です(笑)昨年2位の方は最初から水を2.5Lも持って走ったというからオドロキです。。主催者側がしてくれることは出発を見送って、ただゴールで待ってくれること。でも途中でリタイアするなら「自力で下山してタクシーで戻ってきてね」というエキスパートっぷり。単純に人数が少ないのは、平日開催というだけでなく、そういった本来の意味での山のレースという厳しさがあるのでしょう。どれだけの結果が出せるかわかりませんが全力で楽しんできたいと思います!!



コメント

ナビ横田 さんのコメント…
さすがの走りやわ!さすがっすマイラーですね!かっこいい!
ナイスランお疲れ様でした
来年は御嶽100km行きたいっすわ(笑)
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
ナビ横田さん毎度です!
ナビさんならマイルは余裕でしょ。ただ自販機とかないんでビールが途中で飲めないのでナビさんにとっては辛いところですね(笑)

来年ぜひおんたけ走ってください!!
戦っていないパル彦 さんのコメント…
①から⑥まで続けて読むと100マイルの過酷さがひしひしと伝わってくるねぇ。
これ読むと自分は全然戦っていなかったわ(笑) 歩きたい時に歩きまくってたからねぇ。ウルトラの素質は精神力の強さやねぇ。
完走後は再挑戦したい気持ちが強かったけど、今はその気持ちは萎んでます(笑)
ナビ横田 さんのコメント…
来年行けたら行きます(笑)
今週24時間走っすね!
土曜日富士山頂往復マラニック終わったら帰りにのぞきに行くかもです夜中かな(笑)!いっちゃんも参加!
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
どんなスケジュールですか?! ナビ横田さんに比べたらまだまだオレなんて雑魚ですわ(笑) ぜひ宴会しに神戸にお越しください!!

おー!!いっちゃんも参加するんすか?!これは強敵ですね!!久しぶりにお会いできるのが楽しみです♪
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
名前(笑) 戦ってないなんて滅相もない!おんたけを走ってる人は皆さん何かしらと戦ってるはずですよ。

続けて読んで頂きありがとうございます!書いた甲斐がありました♪来年は更にクリック合戦が熾烈になりそうですからね。やっぱり超ローカルが一番です。来年は大峯早駈どうですか?笑