2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第7回 小江戸大江戸200K 2017 その⑥ 〜大江戸・前編〜

第7回 小江戸大江戸200K 2017 その⑥ 〜大江戸・前編〜

その① 〜準備編〜
その② 〜結果報告〜
その③ 〜大会概要とまえがき〜
その④ 〜小江戸・前編〜
その⑤ 〜小江戸・後編〜
からのつづきです。



▶︎▶︎大江戸編
《蓮馨寺(91.3)〜成願寺AS(128.0)〜こあしすAS(144.1)〜おしなりAS(156.1)〜秋ヶ瀬(189.9)〜川越(204.2)》




蓮馨寺を出発すると次の成願寺ASまで約36kmもの間エイドは一切ない。前後にはランナーがいないので完全なる一人旅となる。R254の川越街道に出るまでは注意深くスマホのgpsで現在地を把握しながら進んだ。小江戸コースの要所要所にはあった看板や白線での誘導は大江戸コースに入ると全くと言っていいほどなくなってしまう。

maps.me
maps.meというアプリが非常に役立った。
これがなければ恐らく迷いに迷って順位争いなど到底出来なかっただろう。
事前にコースのgpxデータと地形図をダウンロードしておけば、オフラインでも自分の現在地を正確に知ることができるので便利だ。


国道254号線に出ると熊野町交差点まで約28kmほど国道沿いにひたすら南下する。しかしそれでも安心はできない。知らず知らずのうちに違う道を走っていれば取り返しがつかなくなる。何度も芝を読むゴルファーのように神経質なほどスマホを取り出して現在地を確認しなければならなかった。

「頑張ってください!」

前から走ってくるランナー数人に突然声をかけられた。この大会を知っている方なのだろう。分かってくれる人がいる。ただそれだけで不思議と元気がもらえた。一方で徐々にペースが落ち始めていることも実感していた。バテてはいないものの足の重さは顕著になり始めている。ゆっくりと不調の波が襲い始めていた。

これほどまでに力を与えてくれるとは!

17:13 (09:13経過)
100km地点通過

100kmを通過したのは17:13頃、スタートから9時間13分で走ってしまったことになる。これは当初の予定より1時間近く早い。しかし突っ込んだ、無理したという感覚はない。エイドでもしっかり食べて休憩してきたし何も戦略的に先行逃げ切りを狙ったわけではない。気持ちいいペースで走ってきただけだ。全てが終わった今となっては200kmを走るペースでは無かったと冷静に分析することができる。いや、このペースに耐えられる走力・精神力はまだ備わっていなかったという方が正しいかもしれない。

100kmを超えた辺りで突然背後から背中をドンっと押されたような疲労感が襲ってきた。信号待ちで立ち止まる度にフラフラと貧血のような症状が現れ始めたのはこの時からだ。まだ次のエイドまで25km近くある。ここで止まるわけにはいかない。もしかしたらエネルギー切れかもしれない。とにかく110kmまでは頑張ってコンビニで好きなものを食べるんだ!コンビニを餌に足を動かし続けた。

しかし運悪く110km地点付近はちょうど自衛隊駐屯地の大きな建物がある場所で全くコンビニが現れなかった。シンプルハイドレーションに入れた水も尽きかけていたので自販機で水を購入。出てきたのはなぜかビックル。まぁいい。一気に飲み干すと一時的にフラフラ感は消えた。

約113km地点
地下鉄成増駅付近

交差点で信号待ちをしている時にふと『板橋区成増町』と書かれている青い看板が目に入った。ついに東京に入ったんだぁと感慨に浸っているのも束の間、突然街の様相が賑わい始め、歩道は仕事帰りのサラリーマンなどで溢れ返っている。ちょうどコンビニがあったので一目散に駆け込んだ。お目当ては・・・

え〜っと
え〜っと

・・・

あった!
これだ!!

まるごとバナナ!!
(しかもレアなチョコ味ですやん!)

ブラック缶コーヒーと水も一緒に購入する。シャリ〜ン♪ドキドキしながら初めてスマホのおサイフケータイで支払ったがうまくいった。事前にチャージしておけば小銭を出さなくて済む。ウルトラではマストアイテムとなりそうだ。

さて、ここは県境付近と言えど大都会東京の繁華街。想像して頂きたい。頭にはヘッドライト、背中にはザックを背負った半パンノースリーブ野郎が缶コーヒー片手にまるごとバナナを咥えながら歩行者をかき分けて走っている様子を。だからそれを見た人が「え〜」とか「すげ〜」とため息を漏らすのも今となっては頷ける。しかしこの時はそんなことを気にしていられなかった。なぜならまだあと90kmも走らなければならないのだから。

大好物のまるごとバナナが効いたのか、ブラックコーヒーのカフェインパワーが効いたのか、あるいはそれらが何かしらの化学反応をしたのか、100kmからの不調が嘘のように消え去り、心身ともに復活して足は滑らかに回転し始めた。




これがウルトラマラソンなんだ

これがウルトラマラソンなんだ

これがウルトラマラソンなんだ

そう馬鹿みたいに唱えながら、気づけば買い物帰りの自転車と競い合うかのように走っていた。今考えるとある種のトランス状態だったかもしれない。あるいはこうも言えるかもしれない。打ち上げられた花火がド〜ンと音を立てて花開く最後の美しい瞬間とも。


残り84km


その⑦へつづく




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