2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第6回 inov-8 CUP 美ヶ原トレイルラン&ウォークinながわ 2016 〜無念の初リタイア〜 後編


第6回 inov-8 CUP 美ヶ原トレイルラン&ウォークinながわ 2016 〜無念の初リタイア〜 後編

更新遅くなってすいません!
前編からの続きです。
ちなみに少し長いです(笑)

初リタイアの真相とは?!
※レース中の写真を撮っていないので文字が多いです。また一部写真は大会HPより拝借致しました。


START→A1→A2
《ブランシュたかやま〜ゲレンデトップ〜和田峠〜扉峠(21km地点)》



4:00(00:00経過)
0km地点
ブランシュたかやまスキーリゾートをスタート

スタート前

もうすぐ4時になろうかという時刻。夜明け前の暗闇が広がる空の下、800名近いトレイルランナーがまだかまだかと抑えきれない興奮とともにスタートの合図を待っています。立っている場所は標高1300mとはいえそこまで寒さを感じません。ヘッドライトをしてスタートするかぎりぎりまで悩みましたが、まだ当分漆黒の闇が遠ざかる気配はないのでヘッドライトを頭に装着した状態でスタートを待ちます。また、手にグローブも装着しておきました。防寒という意味ではなく、勢い余って転倒することが最近多かったので念のためという感じです。

5!4!3!2!1!!
スターーートォォォォ!!!

漆黒の闇を引き裂くように一列に連なった光の塊がスキー場のゲレンデを突き進んでいきます。足元は夜中に降った雨のせいか、それとも朝露のせいなのか、足を踏み入れるたびにシューズの中が少しずつ濡れていく感触があります。気づけばトップ集団がすぐ見える位置をキープして走っていました。今までスタート直後は抑える走りをしてきましたが、今回はトップ集団は無理でもできる限り前をキープしながら走ろうと決めていました。

とはいえ、いきなり標高差400mのゲレンデを登るわけですから周りのランナーも徐々にハァハァと息が乱れる音が聞こえ始めます。しかしコースは80kmのロングトレイル。ここで上げすぎてしまっては必ずや後半に響くと思ったので、息が乱れない程度のペースを維持。汗が額から滴り落ち始めます。顔を上げるとトップ集団はどんどん小さくなっていくのが見えます。やはり速い!あの中には小川壮太選手や土井陵選手がいるのでしょう。最初から次元の違いを思い知らされました。

ゲレンデトップに近づいた頃にはいつの間にか漆黒の闇は消え去り、代わりに草が生い茂るゲレンデが淡いブルーの光に包まれていました。ヘッドライトをザックの中にしまい、標高をぐんぐん上げていきます。

4:32(00:32経過)
約4km地点
ゲレンデトップを通過


標高差400mものゲレンデを登りきると、極上のトレイルへ入っていきます。残念ながら辺りは白いガスで覆われていて何も見えませんが気持ちの良いシングルトラックが続きます。前後4人くらいだったでしょうか、一定の間隔で一列になって走りました。大阪に住んでいると標高1800m前後のこういったシングルトラックを走る機会は少ないのでとても新鮮で気持ちいい!しかし、同時に、それによってある課題が浮き彫りになりました。その話はまた後で。

ゼブラ山を過ぎると下りが始まります。無理しないペースを維持しながら前のランナーに離されないようついて走りました。標高を下げていくと途中から林道に変わります。この林道でさらに前を走っていたランナー2名ほどに追いつきました。足を労わりながら無理せず下っていくとスタッフの方が「トップとは5分差!」と大きな声で叫んでいます。もっと離されていると思っていたので、この言葉はヤル気を引き起こしてくれました。

ここからA1の和田峠手前までは展望のきかないアップダウンがある登山道が続きます。ここである問題が露呈します。

登りが弱い!いや弱すぎる!!

ここまで登りが弱かったのか!と思うほどスピードが出ません。これはレース中終始感じたことです。林道やロードの登りではひょいひょいと足が前に出走れるのですが、登山道に入って走れないような勾配になると一気にペースが落ちて後ろのランナーに追いつかれてしまいます。まだ10kmそこらの序盤なのでバテているはずはありません。おそらく考えられる理由は以下の二点です。

①山(登り)の練習量の不足
②標高の高い場所での山の経験が少なすぎる

①は前回の奥三河パワートレイルでも実感したことですが改善できていません。最近大会以外で走るときのほとんどがロード。山の足を作ることはトレイルレースに出る以上必須だと改めて実感しました。しかし、まだ序盤でこれほどまでに登りでスピードが出ないのは他に理由があると感じました。それが②です。標高1500m付近では大阪のような平野部と比較すると酸素濃度は約17%減の83%。標高2000mにもなると22%減の78%になります。普通に動く分には問題ないとは思いますが、トレイルランのような激しい運動ともなると疲労が顕著に現れるような気がしました。特に自分みたいに標高の低いところでしか練習していなければ余計です。UTMFやKOUMI100で結果を出すには高地トレーニングは必須かもしれません。

などと考えていると、またもや後ろのランナーに抜かれてしまいました(涙)。下りは快調に走れるのでここで無理しても仕方ないと諦めてマイペースを維持しながら登ります。ビーナスラインに合流するとA1の和田峠へ到着します。

5:42(01:42経過)
14km地点
A1和田峠を通過

多くの方があたたかい拍手で迎え入れてくれました。予定ではまだ序盤なのでここのエイドはスルーするつもりでしたが、予想よりも手元のドリンクが減っていたので念のため補給しました。そしてすぐに出発。名残惜しいですが仕方ありません(涙)

このエイドで補給している間に先ほどから少しずつ差を詰めてくるランナーに抜かれました。このランナーは登りでも細かく刻みながら常に走って登ってきていました。おそらく自分もこのランナーのように登りをがしがしパワーウォークで登っていくタイプのランナーではないような気がします。林道や舗装路では細かく刻みながら走るのが得意(というか好き)です。しかしトレイルのキツい登りになるとつい歩いてしまって、リズムが狂い、ペースが落ちているような気もします。だからこのランナーのように物凄いスピードはなくとも着実に進み続ける力がロングトレイルでは自分には必要だと感じました。このランナーの軽快に走り続ける後ろ姿を眺めながら、「カッコイイなぁ。オレもあんな走りができたらなぁ。」と競い合う事を忘れて、イチ傍観者と成り果てていたことを白状します(笑)


三峰山山頂まで細かなアップダウンを繰り返しながら標高を上げていきます。やはりここでも登りの弱さを痛感しました。平地や下り、舗装路なんかでは前をいくランナーを抜く事があっても、逆に登りで抜き返すという事はありません。むしろ抜かれてしまいます(汗)三峰山への登りは非常に展望の良い稜線沿いのトレイルが続きます。しかし、ガスっていて何も見えません。真っ白。しかもこの日は風が強くお腹につけているゼッケンが吹き飛ばされそうになるのを守りながら進んだほどです。晴れていれば上記画像のような素晴らしい景色が左右に広がっていた事でしょう。

標高1887mの三峰山山頂を通過すると、登りで抜かれたランナー2人に遅れないよう必死に食らいつきながら下りました。スタートからまだ20kmほどでこれだけの疲労感を感じているのは、前述した通り、山の練習不足というよりもやはり高地(酸素濃度が低い場所)でのトレーニング不足が露呈してしまった形だと思っています。その証拠に標高を下げて集落へ出たり林道へ出ると疲労感はなくなり前行くランナーに難なく追いつくことができました。ビーナスラインに合流ししばらく舗装路を走るとA2の扉峠に到着です。






A2→A3→A4
《扉峠〜茶臼山〜山本小屋〜物見石山〜和田宿(39km地点)》



6:48(02:48経過)
約21km地点
A2扉峠を通過



登山道に入ったところにそのエイドはありました。食料はなく水だけです。曇っているので日光の暑さは感じませんが湿気によりかなり蒸し暑く感じていました。これからどんなコースが待っているのか想像もつかないのでしっかり水を補給しました。

今回は1時間おきにジェルと塩熱サプリを必ず補給しています。初めて塩熱サプリを利用したのですが、すぐ取り出せるようパンツのポケットに9粒を裸で入れていました。すると、汗でドロドロに溶けているではありませんか!!しかも、

なんか臭いなぁ。ついにジェルを食べ過ぎて身体からジェルの匂いがするようなってしまったか…。

と思ったほど、匂いがキツい!!パンツに染み付いた塩熱サプリの匂いを終始撒き散らしながら走っていたことになります。ランナーの皆様ご迷惑をおかけしました(笑)後日このパンツを洗濯しても匂いがなかなか取れません。皆さんも気をつけましょう(笑)

さて、話を元に戻します。扉峠からは本レース中最高峰の茶臼山(標高2006m)まで登り切ります。前半戦最後の登りです。ここを登り切れば歩行区間もありますので、ペースダウンすることなく進むことが求められます。しかし、

ダメだぁぁぁぁあああああ

決してバテてしまってダラダラ登っているわけではありません。頭では足がもっと前に出てグングン進んでいるつもりなんですが、身体がそれに追いついてこないといった感じでしょうか。山頂が近くなるとさらに勾配がきつくなります。とにかく失速は最小限に抑えようと思い止まらずに前に進み続けました。確かここで暑さに負けて手につけていたグローブを外したということをここに明記しておきます。


扉峠から茶臼山山頂まで距離は2.4kmほど。比較的すぐに山頂に到着したように思います。相変わらずガスで真っ白(涙)晴れていれば北アルプスをはじめ、日本アルプスに八ヶ岳に富士山までが見渡せるそうです!!残念!!

山頂付近は平坦な台地状の地形で、美ヶ原牧場と呼ばれる牛の放牧地となっているそうでアップダウンはほとんどありません。ここで上着を羽織っているランナーに追いつきました。最初はアクシデントかな??と思いましたが違っていました。その方は確か3回ほどこのレースに出場しており、ここから始まる歩行区間で身体を冷やし過ぎないよう対策をとっておられました。実際ここは標高2000m級の高原地帯で強風が吹き荒れています。しかも歩行区間なので嫌でも身体が冷えます。かくいう自分もこの歩行区間が終わった頃には身体が冷えきる一歩手前でした。周りを見渡すと牛やポニーが放牧されており真っ白なガスと相まってとても幻想的な風景が広がっていたのを覚えています。そして、歩行区間が終わり平坦な砂利道を走るとA3の山本小屋が見えてきました。


7:35(03:35経過)
26km地点
A3山本小屋を通過

スタッフやボランティアの方が大声援で迎えてくれます。ここで前を行っていた何人かのランナーに追いつきました。少し身体が冷えていたのでおしるこを見るなり、おばちゃんに「これって温かいっすか?」と尋ねると「ごめ〜ん。冷えてるのよ。」と返答が。でも口に流し込むと、、

うまぁぁぁぁぁぁあああ!!
※画像とは何の関係もありません。そもそも食べたのはおしるこです(笑)

不思議と元気が出てきました。うまいもんはうまい!!これだからロングレースはやめられません。ほんのちょっとした会話やエイドでの食事になぜか物凄く元気をもらえます。バナナなどを何本か頂き、水の補給もしてすぐに出発しました。よく考えるとまだ26km地点。まだまだこれからです。

山本小屋を出るとビーナスラインを少し登り(ロードの登りでは不思議とランナーを抜かせる)、レンゲツツジの群生地の中をしばらく走ります。思ったことは、

デートにぴったりの場所やなぁ(爆)

なぜこんなことを思ったのかはよく分かりませんが、心に余裕が生まれたということにしておきましょう。(もしくは気が抜けていたのかもしれません。)晴れて視界がよければ相当気持ちいい高原地帯に違いありません。しかし今は風が吹き荒れ相変わらず辺りは真っ白です。

ランナーと抜きつ抜かれつしながら物見石山(標高1985m)をクリアすると、ここから次のエイドである和田宿まで標高差1000mを一気に駆け下ります。物見石山からすぐの下りはガレ場があるため足元注意です。勢いよく突っ込むと、自分みたいに、

ん?ほぇ?マジで?!あぶね!ひゃっ!
ひゃぁぁぁ〜〜〜

となります(笑)腰が引けてしまったので後ろのランナーの方に前を譲りますがあっさり断られました(爆)このガレ場を過ぎると逆に物凄く走りやすい尾根伝いのトレイルへと変貌します。思わずスピードが出そうになりますが転倒が怖いので7割くらいの力で駆け下りました。しかしそれでも気が抜けたのか、ここの下りで2回ほど転んでしまいました。2回とも運良く全くの無傷でしたが、今考えてみるとこの時すでに警鐘が鳴り響いていたのかもしれません。

途中でスタッフの方から順位が20番目くらいということを告げられました。あれ?もっと後ろかと思った!というのが率直な感想。この言葉で少しずつ競争意識が戻り始めました。標高を下げていくとトレイルから林道、舗装路と変化していきます。そして同時に気温が上がっていくのを感じます。舗装路に出たところで同じ大阪から来たというランナーとおしゃべりしながら走りました。話をしていると前半での疲れが嘘のように消えていきます。また町の人々が皆さん笑顔で「がんばれー!」と声をかけてくれます。

ロングトレイルってやっぱ最高だなぁ

って思わせてもらえる瞬間です。もちろんレースだけど、単純に人と競い合うだけじゃなく、山を越えるとその土地の人たちとの心のふれあいがあって元気やパワーをもらえたり、同じランナー同士励まし合いながら走ることができます。そんなことを考えながら古い町並みを走っていると、遠くからでも「お〜い!」という言葉が聞こえるほど歓声を送ってくれるエイドへ到着します。それが中山道二十八番目の宿場である和田宿エイドです。

A4→リタイア
《和田宿〜水沢峠〜入大門集落(43km地点)》


9:01(05:01経過)
39km地点
A4和田宿を通過

googleマップより

ついにリタイアの真相について語らなければならない回がやってきました。ある意味では思い出したくもない悪夢ですが、自分への戒めのためにも、またそれによって得た経験のためにもここに書き残しておきたいと思います。もちろん和田宿のエイドに到着した時はこの先リタイアすることになろうとは思いもしません。むしろその逆で、少しでも順位を上げたい気持ちが燃えていました。悲しいかな、今までの疲れが嘘のように消えて力がみなぎっていたほどです。

大歓声のエイドへ到着すると、ここでも前を走っていた何人かのランナーに追いつきました。ここがちょうどコース中間地点(39km地点)に当たります。後半失速しないためにもしっかり補給しておく必要があったので、目に入った食べ物を迷わず口の中に放り込みました。食事は蕎麦と素麺が選べましたが迷わず素麺をチョイス!つゆをたくさんかけてもらってズルズルっと流し込むと・・・

うまぁぁぁぁああああ!!!

思わず2杯おかわりしてしまいました(笑)素麺のツルツルした喉越しと塩気のある出汁が疲れた身体に染み渡ります。コーラも頂き、水を頭から浴びて、気合を入れ直す!そして出発です!残り39km。標高差グラフを見る限りでは前半より後半の方が走りやすそうなので、うまく走りきれれば、もしかするとぎりぎり9時間台でフィニッシュできるかもしれない!と考えていました。そのためにもロード区間や林道は積極的に走る必要があります。

エイドを出発すると同時にあるランナーがぴったりくっついてきます。同じことを考えているのでしょうか。キロ5を切るペースでもしっかりとついてきます。(ここで注釈ですが、このランナーのことをしっかりと覚えておいて下さい。)舗装路を1kmほど走りきると林道の登りへと変わりました。ここから標高差約200mを登って下る、いわゆる峠越えです。

水沢峠

おそらく自分にとってこの地名を当分忘れることはできないでしょう。なぜならここでリタイアを決断することになるからです。先ほど舗装路でぴったりついていたランナーは林道でペースを落としたのかついてきません。不思議なもので林道は淡々と走り続けることができます。標高を上げていくと林道が登山道へと変化しました。やはりペースダウン。しっかり登っているつもりでも徐々に先ほどのランナーとの差が詰められていくのを実感していました。

トップの尾根に出るとそこから一気に下ります。めちゃくちゃスピードは出さずにコケないよう用心深く下りました。そして林道の下りへと変化します。濡れた石がゴロゴロと転がっているような林道だったと思います。うん!いける!前半戦とは違って身体がしっかり動くし、このまま行けば落ちてきたランナーを捕まえながら走れるかもしれない!と淡い期待を抱いていた瞬間でした。

ズルっ

左足で着地した瞬間、濡れた石とシューズのソールが滑って後方に尻餅をつくような格好でコケました。

こんなとこでコケるなんて…

すぐに走り出すため起き上がろうと思い、地面についた右手を見た瞬間の衝撃は今でも忘れることができません。パソコンに向かってキーボードを叩いている今も、この瞬間を思い出すと心拍数が上がり物凄い不安感が襲ってきます。※少しグロテスクな話も出てくるので、苦手な方はこの先読まない方がよいでしょう。

手をついた周りの石に血が飛び散っています。右手を上げると手首付近からボトボトと溢れるように血が出てきまました。一瞬何が起こったのか分からず現実じゃないような気がしました。傷口を見ると、

て、手に穴があいてる…

大げさかもしれませんが傷口を見てすぐに思ったことです。別に本当に手に穴があいて向こう側が見えたわけじゃありません。手の平の親指の腹から手首にかけて斜めに8cmほど裂けて大きく口を開き、グロテスクな肉塊が中から顔をのぞかせ、その中から真っ赤な血液が溢れ出ていました。

え…
マジで・・・
失血死したくない!!

恥ずかしながらこんな風に思いました。パカッと開いた傷口が手首まで及んでいたので、この時は動脈が切れていたらどうしようという焦りしかありませんでした。今冷静に考えてみると、人間これくらいの出血では失血死なんてしないはずです。それに、もし動脈が切れていたならば噴水のように血が出ていたでしょう。しかし、この時は溢れ出る血の量を見て恥ずかしながらこのように思ったのです。

死にたくない…
頼む。止まってくれ…。

大きく口を開いた傷口を閉じるようにぐっと押さえながらその場でうずくまっていました。その時、すぐ後ろを走っていた先ほどのランナーが追いついてきました。「大丈夫ですか?!」手から血を流しながらうずくまっていたので異常を察知してくれたのでしょう。横に来て急いで救急セットを取り出し、応急処置を施してくれました。後にお名前が分かったので以降このランナーをKさんとお呼びします。

Kさんはとにかく終始冷静でした。こちらは溢れ出る血に気が動転していまいプチパニック状態です。顔面蒼白だったかもしれません。Kさんは傷口にガーゼを添えるよう手渡し、テーピング(非伸縮性のもの)を巻いて傷口を圧迫して止血するように指示してくれました。そして即座に大会本部に携帯電話で連絡を取ってくれました(運良く電波が通じた!)。その間に何人ものランナーに抜かれていきます。(心配して声をかけて下さる方やガーゼを置いていってくれる方もおられました。)しかし、Kさんは抜かれることなど気にも留めない様子で救護に徹してくれました。その時の正直な気持ちをここに告白します。

申し訳ない。
でも、そばにいてほしい…

なんとも情けない話ですが本当にこう思いました。いい齢こいた大人の男が情けないです。もちろん順位を下げてしまって申し訳ない気持ちもめちゃくちゃありました。しかしこの時は怪我したショックがあまりにも大きく精神的な支えを求めていたことを正直に告白します。(我ながら情けなくて弱い人間です。)

ある程度血が止まるとこちらも少しホッとしましたが、次はバイ菌が傷口から入らないかが心配になってきました。そのためには一刻も早く下山して傷口を水洗いして消毒する必要があります。運良く次のエイドまで1kmほど。歩いて下山を開始しました。その間にもたくさんのランナーに追い抜かれましたが、Kさんはやはり気にも留めない様子で一緒に横を歩いてくれました。そしてお互いの近況などのお話をして気分を落ち着けて頂けました。

集落まで降りてくると下から大会スタッフの方が走って登ってきました。Kさんが本部に連絡を取って頂き、一番近くにいる大会スタッフにその情報が伝わったのだと思います。傷口を洗い流すための水と消毒液を持って走ってきて下さりました。ここでKさんにお礼を申し上げ、お名前とゼッケン番号をお聞きしてお別れしました。

「りょうさんの分まで頑張って走ります!」

Kさんはこう言うと爽やかに走り去って行きました。ここからは大会スタッフの方や救護スタッフの方のお世話になって近くのエイド(入大門集落)まで自力で到着すると、車で大会会場まで戻りました。その間に傷口をしっかりと水で洗い流したのですが、その痛みたるや…。


10:05頃(06:05経過)
43km地点
入大門集落にて
リタイア



その後

エイドから大会会場まで救護スタッフの方に車で運んで頂くと、医師や看護師の方がいる救護室で簡単な診察を受けました。すぐに必要な処置をした方が良いとのことで、近くの大きな病院を紹介して頂き、すぐに病院へ移動しました(車で30分ほど)。

病院では傷口の洗浄と縫合(8針)、抗生物質の点滴をして頂きました。不幸中の幸いか、レントゲンを撮ると腱や骨にダメージは無かったので後遺症は無いとのこと。2週間後にあるおんたけ100マイルに出れるか心配だったので、医師の方に確認すると、「化膿しなかったら大丈夫ちゃう?」という何ともあっさりした回答(苦笑)。

※グロテスクなので閲覧注意です。

大会本部へ戻る15時頃まで一人の大会スタッフの方にずっと付き添って頂けました。実はこの方、美ヶ原のコースを担当されるすごい方で、色々と楽しい話をして頂けました。本当にその節はお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。そして、大会会場へ戻ってからはFeildsの代表の方や救護スタッフの方に状況を説明し、お礼を申し上げて帰路につきました。



【あとがき】

あの悪夢から10日が経ちました。傷口は化膿せず、また何かしらの感染症になることもなく、昨日(9日目)には無事抜糸をして現在に至ります。今も痛々しい傷跡が残ってはいるものの、あのパッカリと開き挫滅した傷口が元どおり綺麗にひっつくなんて人間の治癒能力に驚かされます。今週末にあるおんたけ100マイルは無事に走れそうなのでひと安心といったところでしょうか。

※プチ閲覧注意です

こうして現在があるのは全て、あのKさんのおかげと言っても過言ではないと思っています。迅速かつ冷静な応急処置と大会本部への連絡、そしてプチパニックになっていた自分の精神的な支えにもなって下さりました。Kさんもおそらくは自分と同じくレース後半を頑張って走ろうと意気込んでいた矢先の出来事だったと思います。にも関わらず、救護は後ろを走っていた自分の役目だと言わんばかりに遅れを気にすることもなく救護に徹して頂けたのは、トレイルランナー、いや人としての鑑かもしれません。

後日、KさんとはFBで繋がることができました。無事に完走されたと聞いて自分の事のように嬉しかったです。お礼を申し上げて、自分のせいで足を止めてしまったことを謝りました。しかしKさんはこのようにおっしゃりました。

「自分も様々な怪我で助けられた経験があるので、周りで怪我された方がいたら出来る限りの事をしようと思っていたので、当たり前の事をしただけです。だからネガティブに考えないで下さいね!」

そして、こうもおっしゃりました。

「レースやトレーニングの時などでもファーストエイドキットを持参し、万が一の時に対応できる準備をして欲しい事が周りのランナーに広がってくれれば嬉しいです!お互いに色んな面で成長して再開できる日を楽しみにしています!」






コメント

パル彦 さんのコメント…
Kさんの行動、読んでいて胸が熱くなりました。
なかなか出来ることじゃないですね。人としての鑑ですよ。
Ryo君もこれを機にまたまた成長して強くなったと思います。
また来年、美ヶ原で恩返しせんと駄目やね。
ところで高地トレーニングはどこ行くの?連れてって(笑)
Unknown さんの投稿…
初コメ( ´-` )

傷口見てゾワゾワゾワ~ってきたw
あと2、3日で抜糸のあとがカユカユってなりそーだね。

それにしても今回はブログは書かないと思ってたけどちゃんと振り返ってる!
エラいですな!!!
おんたけは大人の修学旅行みたいな感じで楽しんだらいいんでない?
もりソバ さんのコメント…
縫合2日目の映像…スマホを遠ざけて片目で見ました
痛々しい
自分が同じ現場に遭遇したら、どうしていたか?
と想像すると恥ずかしい答えしかでないすね~
 
色々考えるさせられました
オンタケ応援しています(^^)
Unknown さんの投稿…
このコメントは投稿者によって削除されました。
Unknown さんの投稿…
いつも更新を楽しみにしています(*^.^*)
毎日訪問させて頂いている者です。
先ほど手違いでコメントを消してしまいました(汗)
無事に抜糸できて本当によかったですね!
Kさんは人としての鑑ですね。
当たり前のことをする事って、いざとなると容易にはできないものです。
おんたけ、ひゃっほいして来て下さいね♪
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
パル彦さんいつもコメントありがとうございます!

そうですね。来年美ヶ原を完走して大会へ恩返しするとともに、自分がKさんのような立場に立った時に冷静迅速に対応することでトレイルランニング、そしてKさんに対して恩返ししたいと思います!

高地トレの合宿やりたいですね。でもその前におんたけの林道地獄を走破しましょう(笑)
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
フッキー初コメありがとう!
そして、いらっしゃ〜〜い(三枝師匠)

そうそう。今回の件はどう書くか結構悩んだ。悩みすぎて途中で放棄しようかと思ったこともあったけど、やっぱり最後まで書いて良かった。自分の中で気持ちも整理できたし♪

そうやな!おんたけは修学旅行感覚で気軽に走ってくるわ〜!!(気軽に走れる距離じゃないけど笑)

これからもよろしく〜
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
もりもりサラダさん、当ブログではもう「もりソバ」で定着しましたね(笑)
コメントありがとうございます!

もし縫合前の画像があったら、スマホを20mくらい離して見ないと嘔吐してしまうかもしれませんね(笑)お医者さんにまで「うわぁ」と引かれたぐらいですから。

今回はいつもとは違った視点でレースのことを考えさせられました。でもこれって自分が今まで気づかなかっただけで、誰にでもこういうシチュエーションって起こり得ることなのかもしれません。

おんたけはこの経験を糧にして結果を残せたらと思っています!
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
かおりさん、初コメントありがとうございます!
毎日訪問して頂いてるにも関わらず、更新をサボっていて申し訳有りません(汗)

おっしゃる通り、口で言ったり、頭で分かっていたりしても、いざその場面に直面した時に本当に行動できるのか。自分も考えさせられました。

おんたけは楽しんできます!辛くなる時も多々ありますが、「あの怪我に比べたらマシ!」と叫びながら走りきりたいと思いますので応援宜しくお願いします♪
ナビ横田 さんのコメント…
マジで!すごい体験してますね!
Kさんはすごい人ですね!僕もその状況に遭遇したら対応できているかわからないですわ
おんたけ頑張ってください!
僕は今週、水晶岳、黒部五郎岳、帰りに行けたら白山と高地トレーニングに行ってきますわ
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
ナビ横田さん、ありがとうございます!
おんたけマイル楽しかったですよ!ワラけるくらいの林道地獄でしたが(笑)また詳細はブログで更新しますね♪

北アルプスですか?!いいですね〜羨ましい!!また次回高地トレの際はお誘い下さいませませ〜!!
ナビ横田 さんのコメント…
了解です!八ヶ岳の端から端まで42km行きたいと思ってます(笑)
いつになるかわからないけど!