2023彩の国100マイル ②レースレポート

photo by Takumi Ishiyama

2023彩の国100マイル ②レースレポート





レースレポートといっても、個人の備忘録的な感じで淡々とまとめたものです。そんなのでもよければお時間あるときにでもどうぞ。
 

▶︎▶︎スタートまで

宿泊したのは鶴ヶ島ビジネスホテル。以前泊まったことのあるシティイン鶴ヶ島よりも古びたホテルだったが、素泊まり5000円以下、支配人?のおばちゃんも愛想良く、宿泊だけなら特に問題なく快適に過ごすことができた。何人かの選手の方もここに泊まられていたようだ。

3:30起床。朝飯は昨日スーパーで買った2割引の焼きそばと赤飯、カステラ。黙々と準備する。近くのコンビニまでわざわざホットコーシーを買いに行って正解。無事に大(特大)を投下することに成功する。


チェックアウトすると鶴ヶ島から始発で越生駅へ。電車内では異様な雰囲気を放つランナーたちの姿に圧倒される。6:00過ぎ、大会無料バスに乗車し、会場となるニューサンピアへ。



受付後は体育館内でゼッケンなど取り付け。ぶらぶらしていると超ウルトラ界のヤヴァい人たち、横田兄貴、クイーン、橘湾岸のもっちー、初めましての五十嵐さんに会える。すると「写真撮ってもらえませんか?」という方。なんと氷ノ山の記事の頃からブログ読んでますというヘビィ読者さん。ハット姿の江西さんと「完走したら収録しましょう」と約束。つい先日podcast収録したばかりのbellさん、そしてUCDさんとも嬉しい初対面。

ヤヴァい人たち

江西氏

bell氏、UCD氏


スタート15分くらい前に列に並ぶ。トップランナーの小原選手の姿。神宮で一緒だったタカケンさんに挨拶。Sogenさんとは初対面。思ってたよりデカい。うさかめくんとも久々の再会を果たせて固く握手。パラパラと小雨の降る中、リラックスした雰囲気でスタートを待つ。





▶︎▶︎North <54.8km D+3319m 06:46:53>

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ニューサンピア0.00:00:000:00:00

7:00スタート。サイラーを目指す約300名が勢いよく飛び出す。いや、この大会はそんなスタートダッシュをキメてくるランナーはいない。ニューサンピアの裏道を抜けるとロードに出る。bellさん、ICDさんと話しながらのんびり走っていると民家脇から山道へ入る。

淡々とリズミカルに登る。しばらくするといいペースで走る7名ほどの塊に追いつく。どうやら小柄なランナーが屈強なおっさんランナーを従えている不思議な光景だ。少しずつパスしながら前へ出る。

西方トレイン

しばらく西方トレインに乗せてもらう。だいぶ抑えめに走っているようだ。彼を抜くときに「ひゃっほいさん」と声をかけてもらえた。こんなオッサンを覚えてくれてるなんてありがたい。UTMF2019の時に彼と前後してから、どんどん力をつけている。結果的に24時間台で2位となる。サポート、ペーサーなしでこのタイムは本当に凄いと思う。

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刈場坂峠15.51:53:151:53:15

雨が止む予報だったが依然としてシトシトと降り続いている。それでもエイドにはたくさんの方がいて声援で出迎えてくれる。記録だけしてすぐに出発する。

昨年はここから堂平までの間でちょっとした悲劇があったが、今年はどうだろうか。走りながら一つ一つ点検していく。足は滑らかに回転し、呼吸もほとんど乱れていない。何より心が落ち着いている。いい感じだ。白石峠の木段は急ブレーキをかけて特に慎重に下る。へっぴり腰になり過ぎてズルっ。ドテっ。頭と足が逆になる。あぁかっこ悪い。

堂平への登りで上下黒のランナーが迫ってくる。あれ?そんな失速してる感じはないんやけどなぁ。と少し不安になるが気にしたところで仕方ない。長いレース。まだ始まってもないのだから。

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堂平キャンプ場23.02:51:250:58:10

水分を補給してトマトスパゲティを頂く。アチッ。熱々で舌がヒリヒリ。でも美味いもんは美味い。バナナも手に取ったかな。お礼を言ってすぐに出る。

上下黒のランナーは登りを淡々と走り続ける。やっぱすげぇ人が集まるんやなぁ。どんどん背中が離れていく。笠山から下り入ると彼に追いついて道を譲って頂く。なんだろう。今日は登りより下りの方が調子がいい。

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慈光寺34.44:17:221:25:57

金嶽から下ると慈光寺エイドだ。ライトチェック。おっと、忘れてた。事前に出してればこんなもたつかなかったな。「podcast聴いてます!」という女性の応援者に声をかけてもらう。どうやら4時間超のbellさん回を行きの車内で完聴してきたとのこと。思わぬ会話でこれまでの疲れが一気に吹き飛ぶ。


今年もイズさんに気づかず。写真まで撮って下さったのにご挨拶できなかったことを反省。確かエイドを出るときに上下黒ランナーがエイドに入ってきた。

快調に下るとロードに出る。しばらく走ると、新柵山への登りに入る。先ほどの慈光寺のエイド通過が4:17。完走した2019の通過タイムが4:15前後だと記憶していたのでいいペースで来れている。そんなことを考えながら羊羹をもぐもぐ。見覚えのある坂を登りきるとエイドに到着した。

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くぬぎ村41.55:12:240:55:02

「ハンガリー行こうよ!」声をかけられたので顔を上げる。あ、高津さんじゃないっすか。以前、個人的に6日間走をしたことがきっかけとなり、国際大会に誘って頂いた時の日本チームの偉いさんだ。ハンガリーで行われる国際大会にエントリーもして飛行機もおさえたけど、残念ながら新型コロナの影響で大会中止となってしまった。「行きたいっすけど今はそれどころじゃないっす笑」と返す。塩むすびを手にとって出発した。

ここまでくればノースは終わったようなもんやな。
6時間30分以内にはサンピア戻れるっしょ。

そんな具合に高を括っていた。若干足の重さが気になり始める。登りで歩くシーンが多くなってきたのもこの辺りから。とはいえ、下リや平坦は快調に走れる。これは今まであまり経験したことのない感覚だ。

そういや、こんなこともあった。下りを快走していると手の痺れが気になり始めた。シャリバテか?急いで羊羹を食べスニッカーズを半分ほど口の中に押し込む。やはりレースだと知らず知らずのうちに出力が上がっているらしい。早急の対処が効いたのかその後問題なく走ることができた。

こんな遠かったっけ。と思ってたら、実際は2019よりも4キロほど距離が伸びていたようだ。しかしこの時はそんなことはつゆ知らず。ガサガサっ。雨乞山手前で後ろを振り返ると下の方に2名の姿が見える。やはり追いつかれたか。まぁでも気にせずマイペースを維持する。ようやくロードに出るとサンピアが見えてきた。



▶︎▶︎South1 <53.9km D+3355m 09:13:08>

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ニューサンピア
in54.86:46:531:34:29
out6:53:540:07:01

たくさんの方に出迎えてもらえる。まだ1/3なのだが、まるでフィニッシュした時のような盛り上がり。体育館へ直行し、デポしていた荷物から食料を補充する。その間も横で話しかけてくれる方がいる。

「なんでも言ってくださいね!」
「これ食べますか?」

誰だろう。見覚えがあるような無いような。本当にありがたい話だが、すみませんサポートはダメなんすよぉ〜と丁重にお断りさせて頂いた。

エイドに行くとカレーそうめんが出てきた。ご飯がまだ炊けてないらしく急遽そーめんでアレンジしたらしい。めちゃくちゃうまい。トランジットタイムは7分。スムーズに動けたつもりでも意外とかかった印象。先ほど背後にいた西方くん、河内さんと一緒にSouth1へ向けて出発する形となった。

二人の後ろ姿を見ながらロードをてくてく走る。五大尊の登りからは歩きがメイン。彼らは登りでも淡々と走っている。これがトップランナーとの差か。でも焦らない。まだまだ先は長いのだ。あっという間に彼らの姿は見えなくなった。

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桂木観音62.47:50:570:57:03

エイドに着くと一人のランナーに追いついた。昨年覇者のY嶋さんだ。失礼ながらかなり辛そうな感じに見える。トップ選手でも苦戦するのが彩の国。おそるべし。フルーツポンチを頂くと果物の甘味と酸味で生き返る。うまぁぁぁ。トイレで水を浴びるとお礼を言って出発した。

一本杉峠までは我慢の区間だ。リズムよく登ることを意識し、足場の悪いところでは焦らない。昼を過ぎ、雨も上がったが曇っていている。それほど暑く感じないが、なぜか登りになると汗がダラダラと流れた。普段は8時間も経つと汗が逆に出なくなる。これだけ汗が出続けるのはしっかり身体の燃料を使えていると思うことにした。

一本杉峠を越えると楽になると思っていたら意外と激しい登りが待ち受けている。こんなとこあったっけ?とロストを不安に思うが矢印がちゃんとある。この頃には水をだいぶ消費していてフラスクに100mlほど。飲みたい衝動に駆られる(普段はまず感じない)がまだ登りがあるかもしれない。沢に降りたところで顔を洗う。その際にたまらず数口飲んでしまった。大丈夫。これは顔を洗ってるだけで飲んではいないのだよ。そう言い聞かせながら。

確かこの付近で初めて駅伝ランナーに抜かれたような。ありがたいことに自分のことを知っていたようで少し会話して元気を頂いた。

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kinoca73.59:34:171:43:20

水切れに悩まされたもののタイム的には順調に来れている。エイドは華やかで(女性の方が多かった?!)温かく迎えてもらえた。水を補給していると、

「ひゃっほいさん、お帰りなさい!」

と女性に声をかけて頂く。昨年DNFだったからかな?と思って聞くと、「(現世に)お帰りなさい」という意味合いだったらしい。どうやらnoteの異界巡礼走を読んでくださったようだ。あやこさんありがとうございます。



宣伝すんません...


スモークチキンとクリームチーズを挟んだシャレオツなパンを手にとってエイドを出た。ここから竹寺へは前半戦の山場。天覚山登りはひらすら歩く。やはり額から汗がダラダラ。水を吸わないと登りが頑張れない。先ほどの反省から多めに水を積んだが序盤から消費量が気になる。おそらくいつも走っているノリでNorth区間をほとんど水を飲まなかったせいだろう。干からびた身体が必死に水を求めていたのだと思う。

「っしゃー板前!」天覚山を登り終えると思わず声が出る。確かあとは下って登るだけ。そんな悠長に考えていたのも束の間。どんどん登りが続く。あれ?こんなコースやったっけ?矢印も無いのでロストが気になる。でも分岐なんてなかったはず。ギザギザ尾根を苦戦しているとようやく矢印発見。ノースではあれだけあった看板がサウスに入ると全然無い(笑)。大高山を越えて勢いよく下ろうとすると木の根が張り巡らされていて全然スピードが出ない。よちよち歩きで下る。

ロードに出るとまたトレイルに入る。あぁ喉が渇いた。確かこの区間に郵便局の水道があったはず。しかしそれがSouth1なのか2なのか記憶が曖昧。山を抜けるとロードに出る。あ!あった!

ガブガブガブガブ

欲のままに水をがぶ飲みしていると、突然家の窓がガラガラ、バーンと開いたかと思うと、そこからオッサンが顔をボーーンと出てきた。

「          」

え?何すか??

「          」

訛り?がひどくてうまく聞き取れない。とにかく水を使わせてもらっているお礼を言っておく。子の権現に上がるんですよ。これからたくさんランナーが来てここの水にお世話になると思いますよ。と大声で返答する。話が噛み合っているのか分からない。それにしてもビックリした。

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竹寺84.311:35:502:01:33


ヘロヘロ気味で竹寺エイドへ。温かい味噌汁とちょっとした会話でよみがえる。この時、疲労ですっかり忘れていたが、実はこの味噌汁を注いでくれた美人さんこそがポッキャスリスナーのまるさんだった。せっかくのチャンス(?)を....なにやってんだ...おれは...

子の権現へ向かうところでヘッドライトを点灯する。後ろを振り返るとライトがゆっくり迫ってくる。「頑張りましょう!駅伝っす!」そう言って颯爽と抜いていかれた。

「ハーブティ飲んでく?」

子の権現の茶屋を通りがかるとおばちゃんに呼び止められる。お茶だけ頂くのは申し訳ないのでおにぎり(150円)を1個買ってしばし談笑。「あら。もしかしてひゃっほいさん?」何と自分のことを覚えていてくれた。年に1度しか寄らないし、自己紹介をしたこともないので名前を覚えていてくれたのが純粋に嬉しかった。

西吾野へは慎重に下った記憶がある。足の疲れに加え、約半年ぶりのナイトトレイルだったので目や足が慣れるまではかなり気を使った。

ロードに出ると自販機で缶コーヒー(ホットがなかった)を買いカフェインを入れる。魔のトンネル手前で応援してくれる方々がいた。高山不動尊へは激しい急登だが、思ったよりも距離が短く感じた。

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高山不動尊94.813:37:392:01:49

ライトの明かりを察してエイドの方が遠くから応援してくれた。肉うどんを頂く。めちゃめちゃうまくて出汁をお代わりしたような。

経験上、ここからニューサンピアまではボーナスステージみたいなものなので気合いを入れ直してスタート。とにかく走れるところはしっかり走る作戦。関八州見晴台からの下りは若干ガスっていたのでヘッドライトを手で持ち下から照らす。そうすると陰影がハッキリするので路面状況が分かりやすい。

そういえばこの頃には喉の渇きもすっかりおさまっていた。蒸し暑さのピークを超えたのかもしれない。四寸道に入ればエイドまでもうすぐ。淡々と走ってエイドへの分岐にきたところで前からランナーの姿が。どうやらSouth1へ入っていく100Kランナーのようだ。声を掛け合ってエイドへ。

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桂木観音103.615:10:051:32:26

大勢の100Kランナーの中に混じるとたくさん声をかけてもらえた。その中にはSouth2に入ってから追いついて「あの時の!」となるランナーの方も。確か温かい豆乳スープを頂いたように思う。

ここからは例年とコースが異なっている。大高取山まで一気に登ってあとは下るだけ。難易度は下がっている。しかし事前にコースをきちんと把握してなかったので、大高取山からの下りでショートカットしてしまったのでは?!と焦るほどあっという間にロードに出たという印象だった。



▶︎▶︎South2 <54.2km D+3,393m 11:23:25>

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ニューサンピア
in108.716:00:010:49:56
out16:09:060:09:05

サンピアに戻ると昼間のような盛り上がりはなく閑散としていたように思う。もちろんエイドでは元気に声をかけてもらえた。体育館に入ってデポザックから食料を補給する。周りを見渡してもマイルランナーの気配はない。前とはかなり差がありそうだ。ヘッドライトの電池を交換する。確か出発しようとしたところで女性に話しかけられた。聞くとツイッターやポッドキャストをチェックして頂いているらしい。写真をお願いされたので一緒に撮った覚えがある。こんな小汚いおっさんに声をかけて頂けるなんてありがたい。

エイドでカレーを頂く。うーむ。うまいっ。もう一杯!最終周の証となる黄色いタスキをかけると、いよいよ3周目に突入する。

16時間ちょうどか。思いの外速いペースで来れているのが不思議だ。10時間台で走れば26時間台も見えるななどと取らぬ狸の皮算用をするのはあるあるだろう。足は確実に重くなっているが身体はそこまで疲弊していない。そして何より気持ちに余裕がある。

ロードの曲がり角でヘッドライトの明かりが見える。応援の方かなと近づいたらゼッケンをつけられていた。どうやら「もうリタイヤすることにして戻っています」とのこと。道わかりますか?と聞くと「スマホあるので大丈夫です」とのこと。お気をつけて!と行こうとしたところで「もしかしてひゃっほいさん?」と久々に友達と再会したみたいなテンションで言われた(笑)暗い中よく気づかれたなぁと感心。お会いしたことない方でも気さくに声をかけてもらえるのはめちゃ嬉しかった。

桂木観音への登りに入ると100Kランナーに追いついていく形になる。「ナイスラン」と声かけしながら進む。ほとんどの方に「マイルか!すごいな!」と言ってもらえる。だからサボれない(笑)

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桂木観音116.317:28:431:19:37

エイドの方にオススメされたカレーおにぎりを食べてみる。スパイスが効いていて思ったよりも本格的だった。唐辛子の辛さではなく何か別のスパイス的な辛さが口に広がる。この時間になると甘いものや塩気以外の味付けが心地よい。

さすがに一本杉峠への登り区間は苦戦した。ハッキリ言って100Kランナーの姿がなければもっと失速していたかもしれない。そして何度か身バレする。淡々と進めたのはサボれない一心だったように思う。確か鼻曲山付近の岩場だったかな。ひょいひょいっと忍びのごとく危険な岩場を下るランナーがいる。足場が良くなった所で先行させてもらうと声をかけてもらえた。なんとひえぽんさん。九州の有名な方。橘湾岸では何度も同じ大会に出ているがお会いしたのは初めて。レース後も少し話せたがやっぱり何かがおかしい(笑)こんなこと言うと怒られるかも...


kmspritlap
kinoca127.419:59:122:30:29

2回目のkinoca。ニクコさんに声かけてもらう。マイルDNFしたのでボラに転向されているそうだ。ありがたい。高照度でヘッドラを使用していたので地べたに座って電池交換。シチューだったかな。温かい食べ物が胃に流れていくのを感じる。おにぎりか何かを食べながら出発した。

いよいよ彩の国の核心部へ入る、竹寺までの区間はSouth1と異なり別ルートを辿る。きつい区間がさらにきつくなるという訳の分からないコース設定。目先の目標がないと足が止まるのでとりあえず2時間半というタイム設定で進むことにする。

天覚山へは100Kランナーと励ましあいながら必死に我慢。登りきるとコースが別れ、山頂から激下り。2019以来ここを通るのだが、あの時ほど道が荒れていなくて驚いた。確かに急斜面だが踏み跡がしっかりしているのであの時ほど苦戦しなかった。「試走した人が道をつくった」という江西さんの言葉が脳裏をよぎる。

登戸(のぼっと)の尾根に入る。無心でひたすら前進する。時刻は4時過ぎ。空はゆっくりと白み始め夜明けが近い。ガサガサっ。木の上から獣らしきものが降りる音がした。熊なのか。姿は見えない。静かに通り過ぎる。

登戸の標識にたどり着いた頃にはすっかり朝になっていた。よっしゃ。ここまでくればもうちょいやろ。そんな希望もすぐに打ち砕かれる。「あのピークを越えたら..」「いや、まだあんのかい」何度このやり取りを繰り返しただろうか。延々に続く偽ピークを進みながらこのコースを考えた人へ悪態から「マジでこの里山一帯を愛してるんやろなぁ」というリスペクトへと変わった。それぐらいきつかった。


kmspritlap
竹寺138.522:47:302:48:18

朝方の竹寺は夜通し進んできた100Kランナーの疲労感でどんよりとした空気になっていた。もちろん自分もその空気を作り上げる一因となっていた。なんとかしなくては。味噌汁を立て続けに2杯頂き、稲荷寿しを5個ほど胃に押し込む。ここで大きく失速しては頑張ってきた意味がない。

ちゃんと戻ってきましたよ!子の権現茶屋でおばちゃんに挨拶してしばし談笑。おにぎりを買ってハーブティを頂く。水や甘いもの塩気のもののちゃんぽんになっていたのでハーブティは口の中をリセットしてくれる。しかもそれほど癖もないので、手軽に買えるジャスミンティ的なものも今後のロングトレイルでは使えるかもしれない。

試走王ことヒロさんの状況を聞いてみると、「ちょっと待ってね。」と言ってノートをペラペラとめくる。「あった!12時頃(多分深夜0時)に通過してたよ!ちょっとキツそうだったかなぁ」とヒロさんへの愛を感じた(笑)

登りを苦戦した分、西吾野まで快走したかったが、どうも下りの足まで売り切れかかっているようだ。魔のトンネルの中で「初めて生ひゃっほいに会えた」と言ってくれる100Kの方と少し話した記憶がある。

フィニッシュタイムを気にしだしたのはこの頃。27時間を切るためには最悪でも25時間以内で高山不動へ行かなくては...


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高山不動尊149.025:02:232:14:53

25時間を少しオーバーしてエイド到着。肉うどんを補給しラストスパートに備える。残り2時間弱。無謀だが次のエイドまで1時間20分で行かなければ絶望的だ。早めにエイドを出る。

登りがパワー出ず関八州見晴台へ何とかたどり着いた感じ。動かない身体に鞭を打ちつつとにかく下る。下る。下る。四寸道へ入った頃には目標が絶望的になり平坦でも歩く状況になっていた。その時、後ろからランナーが来た。

「ひゃっほいさん!」

駅伝ランナーだった。その声かけで目が覚めたように彼の背中を追う。何やってんだ俺は。何位であろうが何時間であろうが最後までやりきれよ。結果なんて一時的なものに過ぎない。とにかく足掻けよ。それが彩の国やろ。


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桂木観音157.826:33:461:31:23

エイドではコーラだけ補給する。名物女将が場を盛り上げてくれた。いよいよ最後の区間。ルートは1周目で経験済みだ。駅伝ランナーと話しながら大高取山を目指すが全くついていけないので先行してもらう。あぁラストくらい彼に着いていくくらい死ぬ気で頑張れよと、今これを書きながら情けなくなる。

大高取山から下っていると、異様なオーラを放つ一人のランナーに追いつく。黒ゼッケン。マイルランナーだ。

「あれ?のび太氏さんやないっすか!」

「はっほいさん...」(辛うじて聞き取れた)

聞くと、関門時間には間に合わないが、最後まで諦めずに進んでいるとのこと。
※マイルはSouth1終了時に関門設定がある

自分も彩の国での敗北の味(それも何度も)を知っているだけに、のび太氏さんの死闘が想像できる。今こうして最後までいけているのは偶然に過ぎない。それは決して射幸的意味合いではない。そこには自身の力以上のものが左右している。のび太氏さんとクロスした瞬間に強く感じた。

下界は日差しが降り注ぎ気温が上昇している。最後まで重い足を動かし続ける。サンピアが見えてくるとたくさんの方に出迎えてもらえた。自然と笑みがこぼれる。やった。ようやく終わった。ありがとうございます。

kmspritlap
ニューサンピア162.927:23:260:49:40


photo by かう坊氏

27時間23分26秒
総合5
39歳以下年代別3位

完走率37.2%



<2023彩の国100マイル>




コメント

横田 さんのコメント…
彩の国お疲れさまでした!さすがの速さ!久々に会えて良かったわぁ
俺は今年膝の調子が悪く(膝が悪くなくても無理やけど)1周目で即死しましたわ
今年だけですでにDNF6回!もうダメだわ(笑)
また遊んでください~!秋は長崎行こうかと思ってる!


ひゃっほい太郎 さんの投稿…
DNF6回って、逆に言えば出てる大会数が半端ないってことでしょw
長崎行きたいですね!あそこも膝がっつりやられますよ。今年はまだ予定決まらず保留中ですわー。こちらこそ遊んでください!