2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

第4回 OSJ KOUMI100 2017 〜レースレポート④〜

第4回 OSJ KOUMI100 2017 〜レースレポート④〜


〜結果報告〜
〜大会概要とまえがき〜
〜レースレポート①〜
〜レースレポート②〜
〜レースレポート③〜
からのつづきです


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"続ける"か"諦める"か

如何なることにおいてもその瀬戸際に立たされる瞬間があると思う。もちろん人生における選択を今から論じるつもりはない(それを語るにはあまりに未熟だし、そもそもどちらの選択肢をとるにせよそこには正しい答えなどないように思う)。ただ走ることにおいてはその答えは非常に明確だと思う。続ければその先に続く各々の物語が待っているだろうし、諦めればそこで舞台の幕は閉じられる。

少し大げさかもしれないが、まさに5周目の林道を登ってきた際の自分はその瀬戸際に立たされていたように思う。


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ふらふらになりながら本沢エイドへ到着すると、下山してくるランナーが次々とやってきていた。とにかく温かいものが欲しい。エイドの方に聞くと春雨スープがあるとのこと。鍋の蓋が開くと勢いよく湯気が立ち上がった。塩分の効いたスープが身体の奥深くに沁み渡る。焚き火があったのでパイプ椅子に座り火にあたらせて貰う。スタッフの方が薪を焚べてくれる。その度にパチパチと火力が増し暖かさが広がる。ここまでしても身体の芯は一向に暖まらない。どうやらリタイアのバスはここには停まっていないようだ。火にあたりながらエイドの方の話を聞いているとすでに100名近くリタイアしているらしい。自分もそこに加わるのか。ここから山へ行かなければならない。リタイアすることが正しいことなんじゃないかと真剣に考え始めていた。

エイドの方に熱々のココアを頂く(どうやらこれが最後だったようだ)。それを飲み干すとガタガタと震える足を鎮めるように下を向いてパイプ椅子に座りこみ続けていた。

すると...

「あれ?大丈夫っすか?」

顔を上げるとミスターOSJ(以降田辺さん)の姿があった。どうやら自分に追いついたこと、そしてこんなとこでヘバっている姿に驚いたようだ。「寒くて…眠くて…」そんな風に返事したと思う。田辺さんもここは辛い区間だったらしい。それでも諦めるなどという考えは頭にすらない様子で先へ進んでいった。


何してんだオレは…


情けなさが込み上げる。だからと言って立ち上がるわけでもなく目の前の火を眺めることしかできなかった。するとひとりのランナーがエイドにやってくるのが見えた。あ!見た顔だ!思わずパイプ椅子から立ち上がって駆け寄った。


丹羽さん!
もう5周目終わりでしょ?!
凄いじゃないっすか!


丹羽さんとはKOUMIやONTAKEでいつもお会いすることが多く(また順位も近いことが多いので)、勝手にライバル視している存在だ。今年は先行されているのは分かっていたがまさかこんなに速いとは。24時間台で4位入賞することになる。完敗だ。


丹羽さん「もうすぐ朝になるし日が出たら寒さはマシになると思うよ」


空に目をやるとうっすらと白みがかり始めているのが分かった。丹羽さんと別れるとまたパイプ椅子に座る。さっきまでとは何かが違うのを感じずにはいられなかった。もちろん微かだが身体の奥底にある熱源みたいなものに火が灯り始めているのを感じた。すると頭の中で色々なことが駆け巡った。

自分のために熱々のココアを入れてくれたエイドのおばちゃん
声をかけてくれた田辺さん
丹羽さんに会えたこと
3,4周目でサポートしてくれた野口さんやY子さん
共に戦っているランナーたち...

もしここで諦めれば全てが無駄になってしまう。よし!そう言って立ち上がると、エイドの方にお礼を言ってコース上に飛び出した。


今考えてみても何がこの時"続ける"という選択肢をとることになったのかは分からない。ただ一つ言えることはそれは自分の意志の強さとかそんなものではないということ。何かしらの外的要因がうまく作用して自分の身体の中にある何かに触れたのだ。もしかすると二つの道の瀬戸際に立たされた時、自分の力(頭で考えること)だけに頼るのではなく、周りの環境、空気、人に全てを委ねてみるとまた違った形の答えが見つかるのかもしれない。


ロードを下っていると不思議なことにさっきまでとは180度異なることばかり考えるようになった。それに睡魔はいない。もう甘えることなくしっかり進み続けよう。そうすれば絶対に完走できる。

稲子湯エイドでエイドの方に遅くなってしまったことを話すと「ここで待ってるから最後頑張って!」と励ましてもらった。

トレイルに入る手前で前から下ってくる方に「ブログの方ですよね?」と声をかけられる。よかった。あの時辞めなくて。声をかけられてそう思った。そして田辺さんに追いついた。

もう辺りはすっかり明るくなり、着ていたレインウエアを脱いだ。ここからは田辺さんと一緒に登る。依然にもOSJの大会で会ったことはあったがこうして話すのは初めてだ。OSJの大会に出られている方なら田辺さんのことをご存知の方は多いと思う。2016年のOSJトレイルシリーズで年間1位なっている凄い方だ。今思っても田辺さんにはだいぶ助けられたと思う。※フィニッシュ後も一緒に温泉に行ったりと充実した時間を過ごさせてもらった。ありがとうございました!

途中からは互いのペースで黙々と標高を稼いだ。朝の山道はとても美しく日常生活にはない自然が辺り一面に広がっている。しかしそれに反して自分の肉体は錆びつき一歩一歩進むたびに身体が悲鳴をあげているのが聞こえた。最後の登り。もう6回目はない。這うようにしてピークを目指し続けた。


7:28 (26:28経過)
149.7km地点
5周目ピークを通過

5回目となるピークを踏む。登りにかかった時間は5時間27分。途方もなく時間がかかってしまったものの悔やんだところでもうどうしようもない。田辺さんは先に着いてスタッフの方と話している。ピークでいつも見守ってくれたスタッフの方にお礼を言うと先行する形で下っていった。

足が残っているのか意外にもスムーズに下れることに驚いた。明るくなり走りやすいということもあってかなんだか楽しい。もう5回もここを走っているというのに。こんな感覚は過去3回のレースで初めてだった。激下りを終えると極上のトレイルを快走する。そしてトレイルを抜けると登りで追い抜かれたランナーに追いついた。


何度もお世話になった稲子湯エイドが近づいてきた


みんな大好き!
お味噌汁のお姉さん\(^^)/


ここまでくれば残す勝負所は本沢エイドまでの長いロードの登り。もう記録や順位は狙えないかもしれない。でも最後までちゃんと走って自分の走りを貫こう。5周目を走るランナーと話しながら少しずつエンジンをかけていった。思いのほか足が動く。3周目や4周目よりも全然動いていることが不思議だった。前を走るランナーを目指してぐんぐん坂を登っていく。追いついて話しかけたら、なんと林道で一緒に睡魔に襲われたOさんだった。どうやらトレイルで少しばかり寝たらしい。皆それぞれに物語があるものだ。時計を見ると28時間台でフィニッシュできるかもしれない。先を急いだ。

みんな明るい本沢エイド

カメラを向けると大笑い。ほんとにお世話になった場所。つい数時間前にはここでガタガタと震えてリタイアを真剣に考えていたのだから面白い。たった1日2日の間だけでもこれだけの変化があるのだから人生なんてどう転ぶかわからない。昨日まで当たり前だったものが今日は全く別のものに変わっているかもしれない。片意地張らずにもっと流れに身を任せてみてもいいかもしれんな〜

そんな風に考えながら林道をぶっ飛ばしていると...

織田さん「りょーさん!」

今から5周目に突入していく織田さんに奇跡的に遭遇。あと数100mズレていれば会わなかっただろう(登りと下りの林道はコースが異なる)。織田さんは福岡のランナーで昨年の奥四万十ウルトラトレイル、彩の国100マイルでお会いしている。自分同様、昨年のKOUMI100をリタイアしており今年はそのリベンジだった。「絶対完走ですよー!!」そうお互いにエール交換して別れた。※無事織田さんは完走。おめでとうございます!

織田さんのブログ


もう6周目はない。残っているパワーを絞り出すようにして林道を猛スピードで駆け下りていく。前のランナーに追いついたので声をかける。ラストです!がんば...


オッキーさんやないっすか!!


前半でお会いしたオッキーさんだった。様子を聞くと現在4周目で制限時間に間に合いそうになく完走はできないとのこと(当レースは途中関門は1箇所で4周目終了が28時間となっている)。オッキーさんも昨年のリベンジを誓っておられたのでとても残念だ。カメラマンランナーオッキーさんによるプチカメラ撮影会が始まる(笑)

photo by オッキーさん
写真ありがとうございました!

オッキーさんのブログ

信じられないほど元気だった。もう終わるからなのか。5周目をサボり過ぎたからなのか。今持てる力ギリギリで林道を駆け下りる。汗が吹き出る。ゼェゼェと呼吸が乱れそうになる。身体をイジメ倒してフィニッシュしたかった。

こんちわ〜

ロードに出ると地元のギャル(おばあちゃん)2人組にあいさつ。ヘッドライトを頭につけてる姿を見て「夜中もずっと走りよるらしいよ」とナイスリアクション。遠くにランナーが見える。必死に追いかけるがなかなか差はつまらない。沿道で声援を送ってくれる方にお礼を言っていると何度も見たゴールゲートが近づいてきた。


ここを曲がると...

もうすぐ...


そして...



FINISH!!


KOUMI100 2017
166.7km
28時間45分20秒
総合17位/280人
(完走率44.7%)





第4回 OSJ KOUMI100 2017
全6編









コメント

M下 さんのコメント…
小海、本当にお疲れさまでした。

2周目、颯爽と林道を走るRYOさんを実はしばらく追走したものの、「あ、この人全部走るつもりだ」と気づいて諦めたM下です。

わたしもスタート前からピンチの連続、最後の最後まで苦しめられたレースでした。
いまは、むしろ誰よりもKoumiを楽しめたと思っています。
100マイルの扉を開き、さらにその先へ。
病みつきになりそうですもう手遅れかも。

また、どこぞのながーいレースでお会いできれば幸いです。
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
M下さん!完走おめでとうございます!

確か最長が70kmでしたよね。それで100マイルに挑戦するのも凄いですが、KOUMIを完走できるなんてかなりの素質ありだと思いますよ!

あぁこれはかなり重症ですね(笑)どんどんハマっていくと思いますよ\(^^)/

とりあえずトルデジアンあたりでお会いするのを楽しみにしてます笑
匿名 さんのコメント…
ryoさん、過密スケジュールの中、完走おめでとうございます!私も勝手にライバル視させていただいておりました。にわです。瀬戸際で走るを選択されたのはさすがです!去年は4周目でリタイアを選択してしまいました。。今回はいつryoさんがおんたけの時ように颯爽と自分を抜いて行くのか、ドキドキしながら走っておりました。また、近々レースでお会いしましょう!ブログの更新楽しみにしております!
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
丹羽さんありがとうございます!そして4位入賞おめでとうございます!

本当は後半じわじわ迫る予定だったんですが全くといっていいほど届きませんでした(笑)おんたけはやっぱりまぐれです(^^; ちきしょ〜。次は頑張りますよ!!次会うときまでお互いパワーアップできるといいですね♪

ブログも読んで頂いて嬉しい限りです。今後とも宜しくお願いします♪( ´θ`)ノ