2023-24 STMダブル760K ②結果まとめ

単独24時間以上マラソン@大泉緑地 〜6人の使者とともに〜 後編

単独24時間以上マラソン@大泉緑地 〜6人の使者とともに〜 後編

前編からの続き。

《深夜の孤独と敗北》
シュピ殿とはダイトレを一緒に走る約束をしてお別れ。100kmを走破した充実感も束の間、予想以上に足の疲労感を感じる。おまけに気温もぐっと下がり始め、時折悪寒がはしる。そう言えば晩飯を食べていないな。今のところ、さっちーにもらったおにぎり2個と洋菓子、ミキティにもらったシュークリーム、そして用意していたパンを数個口に入れただけである。一度基地である駐車場へ戻り晩飯を食って大休憩をとることにしよう。


いつの間にか時刻は日付が変わって0時過ぎ。ついに1台となってしまった駐車場で一人お湯を沸かしてカップ焼きそば大盛りを一瞬で平らげる。うん、うまい。こってりしたソースの味が疲れた身体に染み渡る。満腹になると眠気が襲ってきた。ここは無理せずしっかり休息をとろう。アラームを2時にセットして車内で仮眠。しかし、興奮状態に加え足の疲労感のせいかなかなか眠れない。暑くないはずなのに突然息苦しくなり車の窓を開けて新鮮な空気を吸って身体を落ち着かせる。結局ほとんど休息をとれずに2時を迎える。2:15頃重い身体を引きずり出して再スタート。

街灯と月

深夜の公園は都会とは隔離された場所であるかのように感じる。まるで高い壁で覆われた中を走ってるかのようだ。思いのほか出だしは足も軽くキロ6分台で走れたが、2周ほど走ると一気に足が重くなり始める。休憩時間が長くなったり、無駄にトイレに行ったりしてしまい、ついには歩きも入ってしまう。20kmを走るのに3時間もかかってしまった。睡魔に襲われ始めたのは16時間が経過した午前5時頃。歩くにもスピードが極端に遅くなり始めたので30分だけと自分に言い聞かせて車内で寝袋をかぶって仮眠。やはり深夜になると極端に精神的に弱くなる。暗くなる=眠くなるという自然の摂理にどうしても勝てない。特に今回は一人なので競い合う相手もおらず、つい甘えてしまう。「まぁ仕方ないだろう。」「休憩してから頑張ればいいやん。」などのように。この大きな波を乗り越えるために24時間走に挑戦したはずが、結局完全に負けてしまったのだ。


《日曜日よりの使者》
120kmを走り終えた午前5時過ぎ、上記の通り30分だけ休息をとり午前6時前に再スタート。徐々に夜が明けてくる時間帯である。深夜とは外の空気が違うように感じる。日曜日の新しい空気と古い空気が徐々に入れ替わっているかのようだ。自分もこのまま敗北感を引きずって終わるわけにはいかない。歯を磨き、冷たい水で顔を洗い、気持ちを入れ替える。残り7時間。目標としていた180kmには届かないかもしれない。でもだからといって今までの航海が全て無駄になるわけではない。いけるところまで。今自分がいけるところまで。進み続ければ港に着く。そう言い聞かせて走り続ける。

ふと顔をあげると自転車のライトがこちらへと近づいてくる。『りょーくん?ん?この声は!ミフィオだ!!ほんまに走ってるんやぁ』なんだろう。この安心感は。言うならば・・・そう、まるでオカンだ!!

併走できるよう走る格好のミフィオ

昨日、ミフィオは鳥取マラソンの試走をするため鳥取まで日帰りで行ってきたらしい。ただの観光だけならまだ理解できるが、現地で40kmを試走しての日帰りである。しかも現地のうまいものも食ってきたらしくご満悦の様子。やはりやる事が常人では無い。そして「お腹減ってるやろ〜。これ食べる?」と自転車のかごから取り出したのがこれ。

サンドイッチと紫蘇おにぎりとスープ類

昨日はハードスケジュールでほとんど休んでいないにも関わらず朝の4時過ぎに起きてわざわざ以上のものを作ってきてくれた。もう一度言うがこの24時間走は大会でもなくただただ勝手に一人でやっているだけである。しかもミフィオにはその旨を一言も言っていない。どうやらパルさんからアフォな事をしてる奴が大泉緑地にいると聞いたようだ。それなのにこれだけの準備。頭が上がらない。


ミフィオと一緒に走りながら朝日を眺める。ここが大泉緑地とは思えないほど美しく雄大な朝日だった。不思議なことに深夜にあれほど弱り果てていた気持ちが嘘のように消えていく。空気はひんやりとして肌寒いが太陽の熱が内側から身体をあたためてくれる。以前に当ブログの「部屋の掃除」の中で、ナチュラルな状態に持っていけるランをしたいという旨を書いた。そこではうまく説明できなかったが、今の状態がまさにその状態である。

わかめスープが染み渡る

結局ここで言うまでもないほど美味なおにぎりとサンドイッチを食べながら、朝8時頃まで10km近く一緒に走ってくれた。昼からは大阪ハーフの応援に行くようだ。そうだ!今日は大阪国際女子マラソンや大阪ハーフがあり、今回の24時間走もその応援の意味も込めて走っていたのだが、そんなことはすっかり忘れていた。気づけば誰かのためというより、ここまできたらあきらめられない、ただそれだけで進んできたようなものである。まだ誰かのために走れるほどの力は無いということだろう。

ありがとうミフィオ


《24時間走とウルトラ》
ミフィオと別れた8時過ぎの時点で134kmほど。今の状態で180kmを目指すのは絶望的。目標を160kmに修正する。残り26kmを約4時間半ということになる。普通に考えれば行けないはずがない。それにウルトラならこの時点でもう少し距離を進めれていたであろうという自信がある。なぜだろう。そこには24時間走とウルトラには大きな違いがあるように感じる。二者は単純に同じ物差しで測れないのではないだろうか。ウルトラなら次の地点の目標がある。エイドがある。景色が変わる。制限時間がある。など、変化や目的がはっきりしている。24時間走は完全に己次第だ。気持ちが弱くなるとそれがスピードに如実に現れる。初めて24時間走を走った神戸24時間リレマラでも感じたことであるが、走力よりもメンタルの強さが非常に求められる。特に一人だとそれをより痛感した。しかし、それも単なる言い訳かもしれない。とにかく今は眠いのだ。



《川の流れのように》
そう。眠かった。徐々にランナーや家族連れが増えて公園内が賑わい始める。そんな中、超スローペースのジョギングで走り続ける。誰も公園内を20時間以上もの間、延々と走り続けているとは思ってもいないだろう。今この公園内においては自分は超初心者のジョガーなのだ。その人波に漂っていると猛烈な睡魔が襲い始める。とうとう歩きながら寝てしまいふらふらと蛇行を始めてしまう。朝の9時に公園内を蛇行しながら歩くのは一般客からしたら異常に思われても仕方が無い。ふと目をあげるとひだまりができた芝生が目に飛び込んでくる。あそこだ!腰をおろして、そのまま目をつぶる。・・・どれだけ時間が経ったのか分からない。慌てて時計をみると10分ほど眠っていたようだ。が止まってはダメだ。進まなければ。コースに戻り再びゆらゆらと人波に漂い始める。



《続 ロミオとジュリエット》
時刻は10時過ぎ。149kmを超えたあたりだっただろうか。気がつくと目の前に彼の姿が。あ、パルさん!顔を会わせるなり「公園内をただ散歩してるおっさんやん!」と的確なツッコミを頂戴する。昨晩シェイクスピアの某名作のごとく惜別を演じたことが記憶に蘇る。まさか本当にもう一度来てくれるとは!安堵感に包まれたのも束の間、パルさんはこれから始まる大阪国際女子マラソンの応援に行く予定とのこと。1周ほどを一緒に走ってもらえた。


別れ際に彼は言う。「何の意味もなく孤独に走り続ける阿呆のゴールを見届けたかった・・・」と。パルさん、大丈夫ですよ。こうして2回も来てくれただけで十分です。こんな事よりも必死で走ってるランナーの応援に行ってあげて下さい。



《フィナーレ》
誰かにゴールを見届けてもらいたいという気持ちがなかったといえば嘘になる。しかし仕方がない。あくまで一人で勝手にやっていることである。あとは24時間走りきって黙々と片付けをして帰るだけ。気持ちを切り替えてラストスパート。といってもジョグペースであるが。時刻は12:10。そろそろ大阪国際女子マラソンや大阪ハーフがスタートした頃だろう。彼らのようには走れなくとも、ここから先は歩かない。そう誓って進み続ける。もうすぐで160kmを越えようかという時、突然声をかけられた。「りょーくんかな?

ジェリーさん!

読者諸君。彼を覚えておられるだろうか。覚えておられる方がいれば相当なマニアである。彼は昨年2月の口熊野マラソンでお会いしたパルさんの熱狂的ブログファンの一人であ
り、ありがたい事に毎日欠かさず当ブログをチェックして頂いているそうで、こんな阿呆なゴールは見届けたい!とわざわざ応援に駆けつけてくれた。楽しいおしゃべりをしながら一緒に並走して頂き、ついに160kmを超える。このとき23時間40分が経過。すると、前方から見覚えのあるアノ人がこちらへ向かってくる。

パルさん!!あれ?大阪国際の応援は??!!なんと、一度は長居公園まで行ったものの、ゴールを見届けたいという思いに駆られ引き返してきてくれた。以下はパルさんのブログに書かれていた内容を抜粋したものである。

……それに引き換え、大泉緑地でたった一人で24時間走り続ける男。
 このまま行くと、誰も彼のゴールを見届けないことになるじゃないですか。
 孤独に走り続ける男の世間一般からしたら何の意味も持たないゴール。
 ある意味、その歴史的瞬間を見逃して良いのだろうか?
 大袈裟かもしれませんが(笑)、今の僕が見るべき価値があるのは大泉緑地で孤独に走っている底抜けの阿呆ではないかっ!!

ここからは男3人で走る。まさかこんな展開になるとは誰が予想したであろうか。24時間が経過しラスト一周を一緒にウイニングラン。最後はパルさんにフィナーレにふさわしい場所があるよとそこに連れて行ってもらう。大泉緑地のちょうど中央に位置する広場だ。24時間も大泉緑地を走りながらこんな場所があるとは知らなかった。視界が一気に開け、広い青空と緑の芝生のコントラストが眩しい。まさにフィナーレにふさわしい場所。そして・・・


24時間以上マラソン@大泉緑地
参加者1名
記録
24時間19分19秒 165.0km

パチパチパチパチ・・・。手を叩く音が聞こえる。ジェリーさんとパルさんが拍手をしてくれている。熱いものがこみ上げる。パルさんが『ほんとによくやったよ!君は偉大なる阿呆だ!』と声をかけてくれる。まさか自分が思いつきで勝手に始めただけのことにこうして拍手をしてくれる人がいる。まさか最後がこんな感動的なことになるなど思いもしなかった。思えば6人の方がこんな馬鹿げたことのためにわざわざ足を運んできてくれたのである。それもほんとにしているのか確かめないで。もうやめようかなと思った時もある。そんな時、わざわざ家から電車に乗って、駅から歩いてここまで応援に来てくれたのに、そんな簡単な理由で辞めるわけにはいかない!と、弱った気持ちを引き戻してもらえた。お礼は24時間走りきって返そう!その気持ちだけで続けることができた。拍手は鳴り続けている。




《その後》

優勝商品としてジェリーさんより
コカ・コーラが贈呈される

完走賞としてパルさんより王将にて
麻婆定食餃子付きを贈呈される

afoafo賞としてさっちーより
一足早いバレンタインチョコを贈呈される

【あとがき】

ここまで読んで頂きありがとうございました!まさか前編・後編に渡るほどこの24時間以上走について書く事になるとは思ってもいませんでした。長編になってしまったのには理由があります。それは、6名もの方がこんな事のために応援・見学に来て頂けたからに他なりません。彼らが現れなければおそらくこのブログも質素極まりないものになっていたでしょう(笑)。それもそのはず。内容は「走る」「食べる」「疲れた」「眠い」ただそれを繰り返しただけにちがいないからです。公園内をぐるぐる回るだけです。そこにはドラマチックな展開など多分無いですよね。そして、彼らが現れなければ本当に最後までやり遂げたかも不明。たしかに単独と名をうって始めた24時間以上走ですが、結局は応援・見学に来て頂けた方々に支えられ、それをバネに最後までやり通せたような気がします。この場をお借りして改めて感謝したいです。

また、目標は24時間で180kmを走破することでしたがそれには届きませんでした。反省点として夜中の過ごし方に問題があったと思います。100km到達が11時間30分で、そこまでは調子がよかったと言えます。しかしそれ以降距離が伸びず、120km到達が16時間20分なので、深夜の時間帯はおよそ5時間で20kmしか進んでいない事になります。理由は寒さで体が動かなくなってしまったことがあげられますね。変に休息をとるよりは、しっかりと着込んでジョグペースででも走る必要がありました。一度しんどくなっても乗り越えれば必ず復活することは、これまでに何度も経験してきたことなのに活かすことができなかったこと。ここが大きな反省点です。

さぁ、次は公園内ではなく旅ランで100マイルに近い距離を走ってみたいと考えています。自分の予想では24時間走に比べてもう少し早く行けるのでは?という目論見もありますが杞憂に終わりそう(笑)。それを確かめてみたいのですが、なかなか場所を選ぶのが難しいですね。みなさん超ロングを一人で走る場合はどういったところを走られているのでしょうか。今の所100マイルには届きませんが、淡路島一周(通称アワイチ)を考えています。およそ150kmですね。もし一緒に同行して頂けるか方がいれば心強いですが、結局これも一人になりそうな予感が(笑)

あれから5日が経ちましたが、不思議なことに、24時間走をまたやってみたいと思い始めてる自分がいます。やばい・・・病気です・・・

ありがとうございました!



コメント

パル彦 さんのコメント…
24時間以上走、お疲れ様でした。
やろうやろうと言いながら、なかなかやらないのが普通の人ですわ。それを実行に移し、ちゃんと遂行した貴方は偉大ですよ。麻婆豆腐定食なんか安いもんだわ。
ちなみにRyo君と同じようなことをやっている人は他にもいるねぇ。
ご参考までに……
http://rundrink.exblog.jp/10981725/
こういうのを読むと自分もやってみたいという気持ちが沸々とわいてくるねぇ。
ちなみにアワイチはオーシャン殿がビッグレース・おんたけに向けてやるつもりだそうです。
ひゃっほい太郎 さんの投稿…
パル彦さん、こんにち「は」!
リンク先見てみました。って、この方よく読んでみるとTJAR2012に出られてた方ですよね。途中で目が見えないとおっしゃってた方では?!調べてみると湯川さんという方ですね(間違っていたらすいません。)さすがTJARに出ているだけあって、この方24時間走めちゃくちゃすごい!200km以上走れるとか現時点で考えるとバケモン級です(汗)ぜひともパルさんもやってくださいよ。ひっそりと(笑)

オーシャン殿!ぜひご一緒したい(笑)しかし、速そうだなぁ。ついていけるか不安ですよ。レースもないので来週あたり決行しようかなぁなんて企んだりしてますが(笑)
パル彦 さんのコメント…
YES,タカスクリニック。
さすがどす。TJAR2012に参加されてた湯川ですわ。
バケモン級になると24時間走は200km近く走って当たり前になるんやねぇ。恐ろしい世界だわ。
僕は先週末、33km走っただけで死にそうになったので24時間走は無理と判断しました(笑)

来週アワイチ! 僕ぁ、駅伝ですがな。再来週に回して!(笑)
パル彦 さんのコメント…

湯川「さん」でした。知り合いでもないのに敬称略ってどんなけ偉そうやねん!!!